愛ある拳

愛ある拳


「ウタァーーーーーー!!!」

ルフィが呼び掛けるとそれまで苛烈な攻撃を行っていたトットムジカの攻撃が止む。

「止まった…」

「攻撃が止まった…」

「さあ、これからだ…」

信じられないといった様子で呟くコビーとヘルメッポ。ウタを一人にさせるなと発破を掛けたサンジはこれからのルフィのとる行動次第で戦局が大きく傾くことをひしひしと感じていた。

麦わらの一味、そして彼らに協力する他の海賊や海軍が固唾を飲んで見守る。

「ウタ…聞こえるか?返事はしなくてもいい。ただ聞いていてくれればいい…」

呟くように言うとルフィはウタに向かって静かに語りかける。

「ウタ、ゴードンのおっさんからエレジアの真実ってやつを聞いた…」

ルフィの言葉が聞こえているのかトットムジカの中に取り込まれたウタは涙を流した。それは幼馴染に一番知られたくない事実を知られてしまった故の涙なのか。

「全て自分が悪かったって言ってた。でもそれでおれはお前を嫌いになったり責めたりなんてしねェぞ!」

そうキッパリ宣言するルフィは話を続ける。

「なあ、せっかく12年ぶりに会えたのにおれ達全然わかり合えてねェ。こんなことでおれ達の新時代の誓いが終わっていい訳がねェ!」

新時代の誓い、それはルフィとウタが幼き日に交わした夢。

「覚えてるか?小さい頃フーシャ村の丘で新時代を作ろうって約束したのを。その後突然お前と別れることになって、おれは無我夢中で強くなろうとした。いつかまた会ったときに強くなったおれをお前にみてもらいたかったからだ!」

幼少の頃経験した幼馴染との辛い別れ。あの時はただ泣くことしかできなかった自分。強くなりたいと願ったあの頃をルフィは思い返す。

「おれはいろんな奴と戦って、海賊としてここまで登ってきたけど、それは海賊王になる夢の他にお前との誓いがあったからなんだ。あの頃はまだ決まってなかったおれの夢の果てをお前に聞いてほしい…お前と一緒に新時代を作りてェんだ!!」

自らの思いを伝え続けるルフィに周りの人物達は静観を貫く。

「おれ自分の気持ちにやっと気づいた。おれがお前のことどう思ってるか…おれは冒険の中でしか生きられない不器用な男だ。だから、こんな風にしか言えねェ…」

そこで一旦視線を落とし広げた掌を見つめる。

「おれは…お前が…お前が…」

しばらくうつ向いていたルフィだが意を決したように拳を握りしめ顔を上げた。

「お前が好きだァ!!!お前が欲しィーーーーー!!!!ウタァーーーーーーーーー!!!!!」

トットムジカの中にいるウタに向けてルフィは力の限り叫ぶ。

すると突然トットムジカが苦しみだした。

ルフィの魂の叫びに呼応するようにトットムジカの腹部が淡く光だし中からウタが飛び出してきた。彼の想いがウタに通じ魔王の呪縛から解き放ったのだ。

「ルフィーーーーーー!!!!」

「ウタァ!!!!」

ルフィはウタを受け止めるべく勢いよくその場からジャンプする。

「ルフィーーーーーー!!!!」

「ウタ!!」

すかさず彼女のことを抱き止め二人は抱擁を交わす。

「ルフィごめんなさい!でもわたしもう離れない…!」

「離さねェ!」

「「ずっと、ずっと一緒だ(よ)」」

せっかく取り込んだウタを奪われたトットムジカは怒りの咆哮を上げ再び襲いかからんとする。

「さあ、最後の仕上げだ!!」

「ええ!」

二人は手を繋ぎ攻撃の態勢に入る。想いが通じ会った今の二人に言葉はいらない。ルフィは自身の最高地点"ギア5"を発動させウタはウタウタの実の能力を使い彼の力を更にパワーアップさせる。

「"ゴムゴムの"ォ…」

「"LOVE"…」

「「"猿神銃"!!!!!」」

二人が拳を突き出すと凄まじい閃光を伴った衝撃波が放たれそのままトットムジカを直撃する。

「さあ…これが俺達の門出だ!」

ウタを抱き抱えたルフィは力強く宣言する。

「うん!!」

二人の愛の一撃はトットムジカにハート型の穴を穿ち魔王を爆発四散させた。

通常ウタウタの魔王は現実世界とウタワールドから同時攻撃しなければならない。なら何故二人の攻撃は魔王を粉砕することができたのか?

とある海軍の英雄はかつてこう語っていた。愛ある拳は防ぐ術なし!と…

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