悪夢
夢を見ていた。
かつての青空の下、どこかの島で仲間たちと宴をする夢だった。
ルフィもまた、そこで大量の骨付き肉を頬張りながら満面の笑みで楽しんでいる。
「酒だ!」
「肉だ!」
「飲み明かせェ~~~!!!」
いつまでも、こんな時が続くと思っていた。
「…はぁ」
楽しい時間は現実によって覚まされる。自室でうたた寝をしていたルフィは、いつもよりも機嫌が悪かった。
「なんでこうなんだよ」
独り呟いた、楽しかったあの頃はもう戻らない。26年経って分かったことだが、自分は海賊王になるのが全てではなかった。仲間たちと共に苦難を乗り越え、共に進んでいく。そんなことすら今はもうできない。できることならアッチが現実で、コッチの世界が長い夢であって欲しかった。しかし、いくら頬をつねろうと、顔を床に叩けようと覚めることはない。
彼は独り食堂で肉を頬張っていた。スターチスは寒い地域と化したので身体を冷やさないようにするために肉や脂肪の入ったミルクの生産に特化している。彼が食べている肉はかなりの高級品だが不機嫌そうに食べている。
(一人で食う肉がこんなに不味いだなんて俺は知らなかった)
これからも彼は仲間に会いたいという願望ゆえに楽しかったあの頃の「悪夢」を見るのだろう。