息子が人と成った
長期任務を終え、久々の休暇を貰えた。
これを利用して息子に会わない手はない。
大分時間が空いてしまったから、息子の顔を見るのが楽しみだ。
目的地はフーシャ村。
目を付けられないよう、二つ離れた島から月歩で飛んで来てるけど、のんびり船に乗りながら訪れるようにならないかしら。
「あ!母ちゃん!」
「こんにちはルフィ。元気にしてた?」
「おう!母ちゃんは休みか?」
「うん、久しぶりに…………あれ?その麦わら帽子……」
「あーこれはシャンクスから預かってる!いつか立派な海賊になって返しに行くんだ!」
「…………そう、やはり海軍にはなりませんか」
最近赤髪を見た時に被ってなかったのそういうことね。
「あ!それより母ちゃん見てくれよ!おれの体おもしれェことになったんだ!」
「体?」
成長期で何か変わったのかしら。親としては気になるとこ――
ビヨーン!
「ほら見てくれよ!おれの体ゴムみてェに伸びるんだよ!」
「!!?」
え…?待って…?ゴムになる体……?
息子の手が伸び……え?
「?母ちゃんどうし――」
「ルフィあなた…いつからそうなったの…!?」
「え?1年位前だっけ?」
「な、何か食べましたか…!?変な果実とか……」
「ん?あぁ食ったぞ。シャンクスたちが持ってたんだけどよ」
「……っ!!」
……間違いない。
CPから護送中の悪魔の実が赤髪海賊団に奪われたという知らせを聞いた。
食べると体がゴムになる悪魔の実。
その実の名は……
「ルフィ、その実についてシャンクスたちは何か言ってなかった!?」
「何かって?」
「例えば名前とか」
「名前?あぁ!”ゴムゴムの実”とか言ってたぞ」
「…………」
なんてこと……
歴史からその名を消すためにカムフラージュに用意した別名。
真の名前は”ヒトヒトの実幻獣種・モデル:太陽の神ニカ”
世界政府が800年もの間手中に収めれなかった悪魔の実。
それを現在、この子が口にしている…!
この実はこの子を選んだって言うの…?
齢7才だったこの子を……
ルフィ……
あなたは一体……
「母ちゃんどうした?すっげぇ変な顔してるぞ」
「……え?」
「あ!もしかしておれの体にそんなに驚いたか!?」
「……え、えぇ。久しぶりに会った息子の腕が急に伸びるんですもの……母さんびっくりしちゃった…」
「にしし!そっか!母ちゃんでもびっくりすることあんだな!」
「あ、あはは……」
なぜこの子があの実を口にできたのかはわからない。
恐らくあの場には赤髪海賊団もいたはず。
それなのにルフィは食べることができた。
事実、現に今もこうして体のあちこちを伸ばしている。
「で、でもルフィ。人様の物を勝手に食べるのは感心しませんね」
「うっ、ご、ごめんよ…」
謎は深まるばかり。
政府に報告する……?
いや、万が一それでこの子の安全に関わるようなことが起きたら……
「なぁ母ちゃん。せっかく来てくれたんだから一緒に遊ぼうぜ!」
「え……?う、うん…そうね」
そうだ。せっかくの休暇だ。今は少しでもこの子との時間を過ごしてあげよう。
海兵ではなく、母親として。
「ルフィ。私もあなたの体引っ張ってみていい?」
「おう!いいぞ!」
「じゃあ……」
わ…
ほんとに伸びる…
ちょっと楽しいかも……