恋愛SPⅢ:お正月はときにミンナを狂わせる
センパイとのクリスマスデートが終わって、頭の中が恥ずかしさと嬉しさでいっぱいの中気づいたら年が明け、新年になっていた。その間、お母様がなにか言ってた気がしていたのだが聞いてなかった。ただセンパイとそのお父様と会うぐらいは何か聞いてたような気がする。
私の両親とセンパイの両親は仲が悪い。正確にはお母様とセンパイのお父様の飛電其雄お父様が悪いだが。私のお母様は娘の私のことを大事にしてくれるのだが厳格な性格な上とある出来事から心配のあまり私のことを束縛してGPSで私がどこにいるのか確認したり私が配信した動画も無断で消したりと誰にも見られないように手元に置こうとしてくる。
一方の其雄お父様は穏やかな物腰でセンパイの行動は滅多なことじゃなければ基本的に自由を許してくれる。
何もかも真逆のためかお母様はセンパイのお父様のことはあまり好ましく思ってないらしく、お互い付き合うことになってお互い両親に挨拶することになった際の初めて会ったときはそれはもう初対面なのに怒鳴り散らした程だ。子供が大事じゃないのかとか、自由にさせてその責任を取れるなかととにかく子供について心配してるようなものだったが私から見たら心配してるのではなくただ支配したいだけなんだとしか思えなかった。
そんなお母様の怒号に其雄お父様は
『たしかに心配になることはあります。何かあったら怖い、もしかしたらずっといたほうがいいんじゃないかと考えたりしてます。ですが私は息子を、或人を私のわがままで自由を、夢を奪いたくありません』
『親なら心配することは当たり前です。しかし、だからと支配するのは違います、親なら我が子のやることを応援し、ときにサポートすること、そして時に子供が間違ってしまったら止める、それが子供の幸せを望む親の責任なのではないのでしょうか、少なくとも私はそう思います』
臆することなくお母様をまっすぐ見つめそう言ったのだ。その時のお母様は唖然としていた。おそらく今まで自分に向かって臆することなく自分の家族についての考えに反論してきた人がいなかったため驚いたのだろう。そのためか初対面以降、お母様はセンパイのお父様についてはあまり良い印象をしてない。最低限の会話はするがそれだけであり、基本的には睨んでることが多い。
流石にこれは酷いと思い会うたびに私が謝るのだが其雄お父様は
『気にしないでくれ、そもそも初対面なのに考えを否定した俺に責任だ』
と自分が悪いと言ってくる。そんなことはないと私が言おうとしたときに
『だが彼女の子供を大事にしたい気持ちもわかる、それほどまでに君のことが大事なんだろう。俺も同じだからな、同じ子を持つ親として彼女の気持ちはわかってるつもりだ。今はこうだがそのうちわかり合いたい、そのためにできることはやるつもりだよ』
彼はお母様の気持ちを理解しようとしていた。そしてそのうちわかり合いたいと…。私は彼には無理だと思っていた。いや彼というか他の人でも無理だろう。お母様は自分の考えが正しいと思っている。そんな彼女が他者の意見に話を聞くとは思えなかった。
しかし予想と反してお母様はセンパイのお父様と交流して少しずつ変わっていった。心配性なのは変わらないがそれでも私の自由にさせてくれるようになったのだ。とはいっても流石に何でもという訳にはいかない。遠出や泊まりは禁止したりなどはある。しかしそれでも前より自由になった。
後にお母様に聞いたら
『別に、ただ飛電其雄の息子が近くにいたら平気と思っただけよ』
とのことだった。なんだか釈然としないがそれでもお母様はある程度私の自由を許してくれた。その件で後日其雄お父様にお礼の挨拶をした
『気にしないでくれ、むしろこちらこそ悪かった、俺にはあれぐらいしかできなくて』
『いえそんな!少しでも自由なったのはあなたのおかげです!ありがとうございます!』
『そう言ってもらえると助かるな、君みたいな娘が或人の恋人になってくれて或人は幸せ者だよ、或人と付き合ってくれてありがとう』
『そ、そんな!わ、私も或人センパイと付き合えて幸せです…!』
『そういえば、結婚とかはどうするんだ?』
『け、結婚!?い、いやそんな、私まだ準備が』
『式はいつ挙げる?婚約は?どこを新婚旅行予定地にするんだ?お義父さん(予定)の俺に相談しなさい』
『いや勝手に進めないで!?』
…なかなかに息子のセンパイ思いの人だった。いやいい人なんだがそれはそれとして親ばかというかなんというか…。
そんなふうに思い出していた私だが今は制服に着替えてる。というのもセンパイとそのご家族が新年の挨拶のために私の家に来ることになっている。そのときにいくら知り合いだからと部屋着で迎えるとなると色々と失礼だとお母様からの言われせめてちゃんとした服装として制服に着替え出迎えることになる(正直言われなくても知り合いを部屋着で迎えたくないから着替えるが)。
だが今センパイと会うのはなかなかに気まずい。というのもクリスマスデートのときに私がキスしたことが未だに忘れられなかった。あのあとお互い恥ずかしくなってしまい無言のまま家に帰宅してしまったのだ。
「うう…、私がしたとはいえ会うの気まずいな…」
ピンポーン
しかしそんなことを思っていても時間はた待ってくれはずもなく気づいたらチャイムが鳴る。おそらくセンパイたちが来たのだろう。
「あ、ど、どうしよう!センパイたち来ちゃったかも!」
「オ嬢様、飛電一家ガゴ来訪シマシタ」
私があわあわと慌てていたがもう遅い。SPのジョンとベンから家に或人センパイたちが来たことを教えられる。
「え、あ、ど、どうしよう!私まだ心の準備が!?」
「オ嬢様、ソウ言ウト思イ、或人様ヲ連レテキマシタ」
「むぐー!?」
「いや何やってんの!?ちょ、センパイ大丈夫!?」
私がセンパイと会う準備ができてないとベンたちがいつの間にかセンパイを連れてきていた。……何故か縄でぐるぐる巻きにして口も縄で縛っていたが。
私は急いでセンパイをベンたちから解放させ縄も外した。
「ぶはっ!ひ、ひどい目にあった…」
「ご、ごめんね…まさか、ベンとジョンがこんなことするなんて…」
私は拉致してきたベンとジョンと代わりセンパイに謝罪した。まさか彼らがこんなことをするとは思いもしなかった。これは怒られると覚悟していた。しかしそんなことはなかった。
「ううん…、最初はビックリしたけどでもこうして祢音ちゃんに会えたからラッキーだからいいかな!」
「センパイ…」
そうセンパイは笑顔で言った。センパイはこういうところてお人好しだ。相手に悪意がなかったらたとえどんなことでも許してしまう。しかもそれをポジティブな方向にもっていくある意味お気楽だ。
でも、そんなセンパイだから、私は彼が好きだ。
「そっか…ありがと」
「ううん、こちらこそ、あんなことしてくれたのに会ってくれて、ありが、と…」
そう言ってセンパイの顔が赤くなってきている。あのこととはおそらくクリスマスデートの件だろう。どうやらセンパイはあのときのことを気にしていたらしく言ってる最中に顔を赤くして恥ずかしくなっていた…。
「あ、その…ごめん!わ、私、あれ…!」
「い、いや!あの、ビックリしたというか、嬉しかったというか、その…祢音ちゃんって大胆なんだね…」
「え、そ、そんな!あ、あれは…センパイにだけだよ…、あんなことするの…」
「え…、そ、そっか…あ、ありがとう」
「う、うん…」
…そう言ってお互い恥ずかしくなってまた黙ってしまう…。というよりなんだかセンパイもあれから気にしてくれてたたんだ…。そう思うとちょっと嬉しい気持ちになる。
「そ、そういえばさ…、ここしばらく電話とかできなかったけど元気だった…?」
「う、うん…、ご、ごめんねしばらく電話しなくて…」
「ううん!私もしなくてごめん…元気だったよ」
「そっか…ならよかった!」
「そっちもね!」
そんないつものようなやり取りしてると後ろからゴホンゴホンと二人の咳払いが聞こえる。そうだ、今後ろにはベンとジョンがいたんだった。
「オ嬢様、イチャイチャスルノモイイデスガソロソロ…」
「「い、イチャイチャなんてしたない!」」
「ハモリマシタネ」
この二人、いつもは私に振り回される側だがなんかこの場合に限っては私を振り回す側になるな…、なんて思いつつもそろそろお母様達に挨拶しにいかなければならないと思いセンパイと一緒にお母様達が待つ玄関まで移動することになるがベンたちからはそれを止められる。
「え、なんで?一応挨拶しに行かないと…」
「……見レバワカリマス」
「「?」」
センパイも疑問に思っているなか玄関を何故かバレないこっそり除く。するとそこには…
「何言ってるのかしら?飛電或人は鞍馬に婿入りしてこっちで暮らすのよ」
「おかしなこと言いますね、祢音ちゃんがこっちに嫁ぎにいき、幸せ新婚旅行する予定なのですが?」
「は?」
「あ?」
……お母様と其雄お父様が喧嘩していた…。しかも内容がどっちがこっちに来るかだ…。
「え、いや、あの二人はなんであんな喧嘩してるの…?」
センパイが戸惑いながらも気になって二人に聞く。それはそうだ、まさか親があんな喧嘩してると知ったら誰もが気になるだろう。
「実ハ…先程或人様ヲ運ブトキニ…」
ベンが言うには、センパイを運ぶときに先に其雄お父様を家に招き入れた際にたまたまお母様と会ってしまったらしいのだが…
『あなたは…、フン、新年あけましておめでとうございます』
『あけましておめでとうございます、ですがまさか挨拶してくれるんですね』
『勘違いしないで、こんな挨拶もできないとか鞍馬家の名に傷がつくからよ』
『そうですか』
と最初こそ仲が悪いながらも話してたそうなのだが…
『そういえば、この前子どもたちがクリスマスデートに行きましたね』
『そういえばそうね、その後祢音がまったく話聞いてくれないものだから困ったわ、一体誰のせいかしらね』
『それほどまでに楽しんでもらえたなら何よりです、或人も楽しかったそうですし、これは結婚してもお互い楽しく暮らせそうですね』
『は?結婚?』
『おや、しないのです?てっきりするものだと…』
『しないわよそんなの!?というか仮に結婚するとして飛電或人はこっちに来てもらいますからね!』
『おかしなこと言いますね、祢音ちゃんがこちらに嫁ぎ来るんですが?』
…これが喧嘩の原因らしい。その後にお互いバチバチに睨み合いをずっとしてるとのこと。
「いやなんか勝手に俺たち結婚することになってるんだけど!?せめて俺たちの意見聞いて!?あと喧嘩の原因父さんじゃん!」
話を聞いていたセンパイがツッコむが今回はそうなため何も言えなかった…。
で、でも結婚かぁ…、そう思うとちょっと嬉しくなる自分がいたが話がややこしくなりそうだから黙っとくことにする。
「デスノデ、コノママイテモオ二人ガイテモ仕方ナイト思イ、今日ダケハコッソリ逃ガソウト…」
「ベン、ジョン…、いいの?」
二人の意見に私は思わず聞いてしまう。ベンとジョンはたしかに私の聞いてくれるが基本的にはお母様の命令で動く。それなのに今回やることはお母様に背くことになる、それに私は心配なのだ。けどその心配は無用だったらしい。
「ハイ、正直アノ喧嘩ハ子供ガイル場デヤッテイイモノジャナイノデ…」
「ああ…」
「アト旦那様カラモ許可頂イテオリマス」
「お父様から!?」
驚いた。まさかお父様から直々に家から出ていいと許可が降りるとは。
私の父は一言で言えば放任主義だ。良くも悪くも。私がどんなことしようが、どんな目に会おうが基本的には放置している。そんなお父様からまさか直々に許可が降りるとは。
「但シ、条件付キダソウデス」
「条件付き?」
「そうだ」
「「うわ!?いつの間に!?」」
さっきまでいなかったのに気づいたら後ろにいたお父様に私とセンパイはビックリする。いや本当にいつ来たのだろうか…?
「私が出す条件をクリアしたら家から出ていい」
「ええ…、ま、まぁいいやそれでお父様、その条件とは?」
「フッ…、飛電或人くん」
「は、はい…」
「君が考えた新年一発ギャグ見せてくれ、それで通そう」
「いやなんで!?」
センパイが思わずツッコむ。いや本当になんでなんだ…。
そんな私達の疑問を気にせずお父様はグイグイ或人センパイに近づきギャグを見せてくれとお願いしてくる。
「いいから早くギャグ見せてくれ」
「わ、わかりました!だがらそんな近づかないで!圧が強いから!」
ということで私達は玄関から少し離れた部屋でセンパイのギャグを披露することになった。しかしセンパイは緊張してるのかすごくガタガタと震えている。それが心配で私はセンパイに声をかける。
「せ、センパイ大丈夫?嫌ならやめてもいいよ…?」
「な、何、だ、大丈夫だよ?お、俺のギャグで祢音ちゃんのお父さん笑わせてみせるからね!」
そう言っていたがなんかさらに心配になってきた…。というよりお父様はなんでそんなにセンパイのギャグ見たいんだろ…。
そんな疑問をよそにセンパイがギャグを披露する。
「そ、それでは…んん、今年は餅のように粘り強く!いやモチーと伸びがあるとしたイヤー!はい!アルトじゃーないと!」
「……」
……きっと今のは今年と英語のイヤーをかけ合わせ、かつ餅と擬音語のモチーをかけ合わせたギャグなんだろう…。けどお父様、なんかすごい真顔なんだけど…。あ、或人センパイもなんか怯えてる…。
「……ベン、ジョン、或人くんにお年玉、倍プッシュだ!」
「は、はい!?」
「お、お父様!?いきなり何言ってんの!?」
真顔のお父様がいきなり倍プッシュだのなんか言ってなセンパイにお年玉をあげようとしていた。お父様がお年玉そのものをあげるのも驚きなのだが。一体どうしたのだろう?
「いや、ちょ!俺こんなにいらないというか、トランク一括で渡さないで!?」
「なるほど、キャリーケースじゃないと満足しないのか…いいだろ、キャリーケースあるだけ持ってそれにお金を詰めよう」
「いや違いますよ!というかホント辞めて!?」
「お父様ほんとどうしたんですか!?ちょっと怖いですよ!」
流石に私もお父様を止める。というかいつものキャラと違って若干引いている。一体どうしたのだろうか?
「決まっているだろ祢音、彼のギャグはそれほどまでに価値があるんだ!倍プッシュしなければ勿体ないだろ!」
「いやお父様、センパイのギャグ好きだったの!?」
「まじで!?ありがとうございます!けどそれはそれとして受け取れませんよ!」
まさかお父様がセンパイのギャグ好きだったとは…。普段の物静かな性格からは想像できないぐらい熱くなってる。でもそれはそれとしてかなり怖い。なんかセンパイもお父様が怖すぎてちょっと泣きそうになっている。しょうがないがここは…
「ベン、ジョン!私とセンパイ連れて逃げて!」
「「ハイ!オ嬢様!」」
ベンとジョンにお願いしてここから逃げよう。いつもはお母様の言う事聞くことが多い二人だけどここぞというときは私の言う事を聞いてくれてありがたい。まぁ流石の二人もあれは怖いから…。
「な、待て!?せめてお年玉を受け取ってくれー!」
「すみませんがそれはまた後日!というかまた担がられるの俺!?」
そして私達は二人に担がられて家から逃げ出した(玄関先だとまだ二人が喧嘩していたが見なかったことにする)。
そして無事に逃げ出し今は家から離れた街にいる。
「ごめんねセンパイ…、まさかお父様があんなことするとは思わなくて…」
「祢音ちゃんも知らなかったんなら仕方ないよ、それにあれは誰でも驚くよ…」
「ありがとう…、でもこれからどうする?今は帰れないし…」
そう、家から逃げた以上帰れないし、かと言ってこれから何するかの予定もない。困っていた私だがセンパイからある提案をされる。
「そうだ!じゃあ大天空寺に行かない?グループトーク見たら今俺のクラスメイト達が集まってるとか言ってたし祢音ちゃんと同じクラスの大二くんもいるって言ってたしどうかな?」
「大天空寺か…」
大天空寺はセンパイと同じクラスの天空寺タケルセンパイという方の実家のお寺で偶にセンパイが遊びに行っている。
予定もないないし、それでいいかと思っていたが少し不安になることもある。
「でも行って大丈夫?今の時期初詣とかで忙しいし…」
そう、お正月ということもありこの時期は屋台やおみくじなど色々とあるため神社やお寺は忙しい。それは大天空寺も例外ではないはずだ。そんな中で遊びに行っていいものだろうか…。
「一応、この学校の人たちが屋台とかお手伝いしてるらしいし、最悪俺も手伝いに入れば大丈夫かなと思ったけどだめかな…?」
「センパイ…、それはちょっと考え甘いんじゃ…」
「やっぱりそうなのかなぁ…」
センパイはお人好しだがちょっと考えが甘いところがある。そもそもセンパイは少しドジなところあるからうまく行かない気がする。
「まったく…、わかった、その時は私も手伝うよ」
「え、いや、でも…俺が勝手に…」
「センパイドジだからお手伝い失敗するかもでしょ?」
「うっ…、その可能性は否定ができない…」
「だからさ…、私が支える」
「え?」
「私がセンパイのことサポートするから、だから頑張ろうよ」。
センパイはたしかに考えとか甘い。けど、それでも笑顔になるならと誰かのために一生懸命だ。それで時々大変な目に会うけどそれでも誰かを笑顔にしたい気持ちは本物だ。そんな誰のためにも無茶をしてしまうセンパイだから、私は彼のことが好きになった。…時々やばいときもあるから流石にやめてほしいこともあるが。
「祢音ちゃん…、うん、ありがとう」
そう言うセンパイの顔は嬉しそうな顔になってくる。やっぱりセンパイは笑顔が似合うな。
「…二人ニイチャイチャシテナイデ行カナイカ聞イタラマズイカナ?」
「ソシタラマタ「イチャイチャシテナイ!」ト返サエルゾ」
…なんか二人がまた後ろで言ってるが聞こえなかったふりをする。
そうして私達は大天空寺に向けて歩き出した。本当は車で向かった方がいいのかもしれないがセンパイとの時間を大事にしたくて私のわがままで歩いて行くことになった。
「そういえばセンパイのお母様は?私のお母様の話しぶりから来ない感じあったけど」
「ああ、母さんは急な仕事入っちゃって、一応後日また会いに行くそうだけど母さんも来てがってたなぁ…、祢音ちゃんと会うの楽しみにしてたし」
「そっか、私もセンパイのお母様と会って話してみたいなぁ」
「母さんが聞いたら喜ぶよ、私も会いたい!って」
「ふふ、その時は楽しみにしてるね!」
そんな雑談をしながらついに大天空寺に着いた。大天空寺は大きなお寺だが初詣だからかやはり人が多い。
「うわぁ当たり前だけど混んでるね」
「そうだね、入るまで時間かかりそう」
なんてのんきに会話していたがそのときにある人に声をかけられる。
「おい!或人!」
「うん?その声って…せ、戦兎!?」
声をかけたのはセンパイと同じクラスの桐生戦兎センパイだ。戦兎センパイは学校の中でも特に頭がいい…のだが自分の頭によほどの自信があるのかよく自分のことを「て~んさい科学者」と自称したり科学関係になるとよく暴走するなどマッドサイエンティストみたいな性格の持ち主だ(一応彼の名誉のために弁護すると彼は科学は平和のためにあるという信念や困った人がいたら助ける優しい性格でもある)
「あのどうかしたんですか?」
私は気になって戦兎センパイに聞いてみた。すると…
「どうかもなにかもあるか!俺、去年も彼女できなかった!」
「うん」
「万丈、カズミン、幻さんは彼女いる!」
「うん」
「はい」
「だから八つ当たりしてやる!」
「「いやなんで!?」」
私とセンパイがツッコむ。いや本当になんでだ…。私達がわけがわからずに困惑していると戦兎センパイの隣に眼鏡をかけた男の人が来る。
「申し訳ない、いきなりこんな目に合わせて」
「い、いえ…ところであなたは…?」
「私は内海成彰、桐生戦兎とは知り合いだ」
「はぁ…あのなんで戦兎センパイはどうしたんだですか?」
私は内海センパイに気になることを聞いた。誰かに聞かないとわからないぐらい戦兎センパイはよく分からなかったのだ。
「ああ、実は…」
内海センパイ曰く、クリスマスは3年2組の万丈龍我センパイ、そして他のクラスの猿渡一海センパイと氷室幻徳センパイと内海センパイで過ごしたそうなのだが、戦兎センパイと内海センパイ以外彼女持ちだったために万丈センパイたちはその彼女さんたちも呼んで過ごしたらしい。
彼女がいない戦兎センパイはその光景に耐えられずダウンし、そして悲しみの中、たまたま暇だった内海センパイが慰めるためにと大天空寺に遊びに来たのだがそこで私達と出会い、先のクリスマスの件を思い出しこうなったらしい。
「いやそれ八つ当たりじゃん!俺達関係なくない!?」
ここまでの説明聞いてセンパイがツッコむ。うん、何も関係ない上に八つ当たり理由がたまたま見かけたとはいい迷惑だ。
「うるさいよ!大体或祢って非公式中の非公式CPでしょうが!俺なんてこのスレが立てられて2スレ目なのに未だにオリジナルCPすらないのに!俺にも戦万以外のCPがあってもいいはずだよ!?」
「いや何言ってんの!?」
なんだかわけがわからないことを戦兎センパイが言い始めそろそろどうしようかと思ってたときにベンとジョンからあることを提案される。
「ナラココハオ正月ラシク、羽根ツキデ勝負シマセンカ?」
「「「「羽根つきで?」」」」
「ハイ、体ヲ動カセテストレス解消ニナリマスシ、何ヨリ勝負トシテハウッテツケカト」
そうかな?と私は思ったが…
「なるほど…あんた達てんっさいだな!」
「まぁ、穏便に済めば俺もいいからその案乗った!」
「穏便かどうかはわからないが私もその案に賛成だ」
なんだかみんなやる気満々らしい。まぁみんなが楽しんでるならいいやと私も参加しようとするがジョンから止められる。
「どうしたのジョン?私も参加したいんだけど…」
「ハイ、オ嬢様ニモ参加シテモライマスガ、ソノ前ニ…」
「?」