「恋人たちの夜」
「ある、とりあ」
「んっ……シロウ……あっ♡」
この期に及んでも彼女の声は優しい。でも、それに加えて今は確かに、情欲に塗れた響きがしていた。
今は夜。寝所の布団の上。周りは月明かりが頼りになるくらいの明るさ。
そんな場所で、幼き士郎とアルトリア・ランサーはそこにいた。
今の2人はただの想い合う男女として。
つまり、そういうこと。
「アルトリアの、なか、すごい、あつくって…!それに、すごい、きもちよく、て…!」
「はぁっ、…ふ、ぁっ…シ、ロウっ♡……あなたも、とても、いい…ですよっ♡」
一糸まとわぬ2人。士郎が下に仰向けになったアルトリアを「組み敷く」というよりか、彼女が彼を受け止め「抱きすくめている」と言った方が正しい。
自分の蜜壺を、彼の屹立に貫かれながら。
アルトリアの上に寝そべるような体勢の士郎が腰を動かすたびに、ぐじゅぐじゅと濡れに濡れた彼女の秘所から水音が聞こえた。
そうして2人ともうわごとのように己の気持ちを耳元で囁き、相手を受け止める。
「んちゅっ♡んっ、んっ、れろっ…ぁ♡……ぷ、はっ♡……シロウもどんどん、うまくなって……もう、ただ私に、任せていればいい、のにっ」
「……はぁっ……そんなんじゃいやだ。アルトリアが良くても、俺は、良くない」
いかにそれまで経験が無い者同士であったとしても、アルトリアは士郎よりずっと、見た目以上に年上で。それなら自分がリードすべきだと彼女は思っていたし、実際にそうすることが多い。
その口を使って士郎に奉仕し、彼の精の迸りを全て嚥下して見せたこともあるし、自分から彼の挿入を受け入れる体勢で情けを乞うたこともある。
こんな子供相手に、いやそうでなくとも、騎士王としては考えられないような浅ましさ。
だけれど、彼女の小さき恋人は、彼女の痴態で満足はしなかった。
(もっともっと、アルトリアに、可愛い声を出させたい。この手で、気持ち良くなってもらいたい)
アルトリアのご奉仕は、それはそれは天国の悦びだけれども。士郎だって、立派な男の子なのだった。
──それに何より、これほどの金髪美女の、極上の女体を、それがどれほど恵まれたことかははっきり自覚しなくとも。彼は気がすむまで味わいたいと思っていたのかもしれない。
「っ!…あっ♡、シロウ、はやくなっ、んんっ♡……とつぜん、もうっ♡」
熱さと行為の影響で顔を紅潮させていたアルトリアの美しい顔が、士郎が前置き無しに注挿のペースを速めたことで蕩ける。
もうずっと彼の肉棒が収まっている彼女の秘所は洪水のようで、ピストンで肉のぶつかる音がするたび、蜜が溢れた。
「ごめん、アルトリア…!だすよっ……!………っ!!」
「どうか、シロウっ、そのままっ♡わたしのなかに、ぜんぶ……あ゛っ♡」
「……ぐっ!」
射精する瞬間、士郎はその小さき身体にため込んだ性の情動を一滴残らずアルトリアの奥まで放とうとするように、腰をできるかぎり彼女の腰に押し付け、全体重でのしかかり。
それを一回りも二回りも大きな身体で受け止める彼女は、脚を彼の腰に回し、両の腕では愛しさあふれるように士郎を抱きしめ──彼に熱烈なキスをした。
アルトリアの豊満さにこれ以上なく密着し、抱かれながらの膣内射精など、きっと士郎がこれまでの人生で得た最上の快悦だったろう。
「ぷはっ。……はあ……アルトリア……」
「……んっ♡………おつかれさま、です……シロウ」
長い長い口付けの後で二人は唇を離し…最後にもう一度、ちゅっと軽くキスをしてから言葉を交わす。
……これで終わり、ではない。吐精を終えて多少柔らかくなった士郎のそこは、変わらずアルトリアの中にある。くっついたまま、挿入したままで今しばらくのおしゃべりターン。
恋仲二人のイチャつくターンとも言う。
「アルトリア、その」
「いつもどおり、とても気持ち良くさせてもらいました。シロウ」
「そっか、良かった」
今だ繋がったままで少しほっとしたような雰囲気を思わず出した士郎だったが。
実際のところアルトリアに言わせれば、まだ少年の士郎に本気の嬌声を上げさせられている現状はかなりマズいものではあった。
(……わ、私にシロウ以前に女としての経験が無いとは言え…この歳の男の子に、こんなに気持ち良くさせてもらって、一体将来どうなってしまうのでしょう…。きっとシロウが特別なだけ、だと思うのですがっ。彼のアレが、抜き差しされるごとに何故あんなに私のいいところばっかり……!いくらなんでも相性が良すぎます!それに、それに……シロウと一つになったときの安らぎというか…魂から感じるアレは……。それにシロウもシロウです。今こんなにも私を佳くしてくれているというのに、成長したらどれほどの女泣かせに……!)
もちろんそんな、普段対外的な保護者で姉代わりを自負するアルトリアはそこまで突っ込んで言ったりしない。
今が恋人たちの一番素直にものが言える時間であったとしても、ここまで赤裸々にはなれない騎士王であった。
──ただし。
「ひぁっ♡……シロウ」
「ご、ごめん、つい」
何気なく士郎は目の前にあるアルトリアの大きな膨らみを揉み、彼女は思わず声を上げた。
「アルトリア、ここ、すごくかたくなってるよね」
「あ、あまり強くしないでください…」
はっきりと勃った乳首に、愛液がとめどなく滴る秘所。例えアルトリアが素直に言わなくとも、士郎に気持ち良くさせられているのだと身体は素直すぎるくらいに白状している。
なので彼女は将来における女殺し誕生の一抹の不安は棚に上げて、それだけは素直に毎回言ってしまう。
「シロウが、私のことをたくさん愛してくれるから。……だからいつも、こんな風になってしまうんです」
「それは…こっちも。アルトリアの身体、凄く気持ち良くて、いつも堪らなくなるんだ。わけがわからなくなっちゃうくらいに」
「日頃の食事も、こうして魔力供給も。いえ、パスはちゃんと繋がれてはいますが…ともかく、普段はこちらがもらいっぱなしなのですから……シロウがそれくらい、私との情交を楽しんでくれているならとても嬉しい」
「……アルトリア、魔力供給って言うけど、これは」
「わかっています。『そんなものとは関係なく』、ですね」
「そう。好きだから、こうしたいんだ」
むっとしたような顔をした士郎に、微笑んで返すアルトリア。そしてもう一度軽く二人で口付けする。
あくまで魔力供給というのが建前だ。ただし、それは騎士王に必要なものであって、彼に必要なものではない。だからあくまで、好き同士としての行為。好意のための行為という意味に拘る。
加えて、「騎士王」に必要はあっても…「アルトリア」にも必要ではなかった。だから彼女も、それでいい。
他愛もない時間。裸と裸で抱き合う、ただの2人になる時間。
剝き出しの魂の交流に、必要なだけの愛と淫靡さ。好き合う彼と彼女の平和で穏やかな夜にはふさわしいものであると言えるかもしれなかった。
そうして、最初の頃よりぎこちなさがだいぶ少なくなってきた睦み合いがしばらく続くと。
「……あ♡…シロウ、また大きく」
「ごめん、また、もう一回。……だめ?」
「だめじゃありません。ふふ」
一度精を放出して収まっていた士郎の昂りが、また戻ってきたらしい。アルトリアは自身の膣内にある彼のそこがまた固く、大きくなるのを感じた。
今もまだ、二人は抱き合ったままで。彼女を下にして彼が上に乗っている体勢のまま。
どうやらもう一回戦。あるいはもう何回戦となるらしい。
「……じゃあ、また。動くから」
「どうぞ、マスター。シロウの望むように。優しくでも、激しくでも」
「……好きだよ、アルトリア。……ちゅっ」
「…!」
私も、とはアルトリアは返さなかったけれど。
その軽い口付けに、驚いたあとの微笑みとしっかり彼の腰に愛情たっぷりに回した長い脚と。
彼の少し小さな両手をとって、恋人繋ぎをした彼女の手が全てを語っていた。
こうしてまた、想い合う二人の夜は過ぎゆく。
士郎が彼女を愛したいと思うだけ。その快と悦を得たいと思うだけ彼女に注ぎ込み、アルトリアは彼から与えられる精と快楽を、これまた優しさをもって受け入れる。
明日の朝、2人抱き合って目覚めるのは当分先。お互いに没頭する士郎少年とアルトリアだった。