恋する玉兎は切なくて、伊織を想うとすぐえっちしちゃうの
伊織殿とまぐわった夜を思い出す。
脳を焼くような熱。無我夢中に求め合ったあの時間。
……いや、求め合ったなど烏滸がましい。私だけが伊織殿に縋り付いたのかもしれない。
光を求めて火に身体を焦がす宵の蛾のように……。献身で身を焦がす玉兎ではない。ただただ本能のままに火に身を投じる蛾だ。
浅ましさに吐き気がする。
だが、熱を止められはしない。
由井正雪、名はいくら冷たくても、一皮剥けば本能の権化だ。
「伊織殿……」
布団に包まって、股間に手を伸ばす。
あの夜が忘れられないのだ。
あの夜の熱に未だ私は焦がれている。
あの夜が一夜の幻でも構わない。伊織殿とあの瞬間だけは通じ合ったのだと思い上がりたい。
お腹の奥にチリチリと火がついたように熱い。
下着の上から筋をなぞる。
最初こそ、恐る恐る。だが、すぐにもの足らなくなって、下着をズラした。直接股間に触れる。期待からビクビクと震えているようだ。
くちゅりと音がする。
恥丘を指で押し開く。とろりと愛液が流れていく。
指を突き入れ、あの夜を思い出す。
「あ、あぅ、……っ。い、伊織ど、の……!」
口の端から零れていくのは熱に浮かされた女——私の声。
指先がぐちゃぐちゃと膣中を掻き乱す。
指だけでは物足らない。
もっと奥まで——!
指だけでは細すぎる。
もっと太いのを——!
「いお、りどの……っ! 伊織どのぉ……!!」
満たされない飢え。私だけじゃ、飢えを満たせない。
片手じゃ足らなくて、両手で自身を慰める。女陰の上にある核を指先で摘む。
ビビッと雷撃のような刺激が走る。
「もっと、もっと……」
それでも足らない。
腰がビクビクと跳ねてしまう。ポタポタと落ちる愛液が布団を汚していく。
髪を振り乱しながら、息を掻き乱す。
「あ、ぁ……、いおりっ……!伊織殿っ……!」
あの夜が——、
あの熱が——、
あの光が——、
忘れられない。
伊織殿の顔を思い出す。私だけを求めてくれたあの時。
キュッと核を強く摘む。
瞬間、浅い絶頂迎える。
ピチャピチャと愛液が飛び散る。
私は息を荒げながら、濡れた手を眼前に晒した。
糸を引く指と指の間。
浅ましい女の欲の証。
「もう一度だけ……」
できるのならば、卑しいと罵られても、あの夜の熱を——、伊織殿の温もりを味わいたい。