急げ急げまだ間に合うぞ

急げ急げまだ間に合うぞ


どうして下らない言い争いをしてしまったのか。どうしてスキー旅行について行かなかったのか。どうして昨日の夕食に好物を出さなかったのか。どうして「疲れているから」なんて下らない理由で、夜の誘いを断ってしまったのか。

『晴信がスキー中に怪我をして病院に運ばれた』と連絡を受けた瞬間から、僕の中身は不安と後悔で満たされている。

「…………僕の許可なく勝手に死ぬなよ」

酷く傲慢で、八つ当たりめいた独り言が口から零れ落ちた。鼻の奥が痛むのは寒さのせいだけじゃない筈だ。

『頼むから生きていてくれ』『もう一度話をさせてくれ』そう祈りながら車のエンジンをかける。少しでも早く、晴信の所へ行くために。


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