怒り

怒り


「なんで寝ないのよ⁉︎」

血と銃弾と怒号が飛び交うマリンフォードで手に持ったベガパンク製の特殊拡声器越しに歌っていた七武海の一人ウタは焦っていた。

自分に向かっている阻止目標が自分の歌をものともせず立ち塞がってる自分に向かって突き進んでいるのだ。しかも相手は10年前に滅びたエレジアに自分を置き去りにしたシャンクスによって会えなくなったかつての幼馴染だという事実も彼女を動揺させていた。

エースを救うと言う強固な意志で突き進むルフィはこの戦いで覇気を発していた。それがただでさえ動揺により効力が落ちてる能力を阻害していることは実戦経験が他の七武海より劣るウタにはその場で理解できなかった(当然だ大抵は戦う前に歌によって決着がつくのがほとんどなのだから)。


なぜ進む⁉︎


なぜ止まらない⁉︎


なぜ勝てない⁉︎


183回勝負して一度も勝てなかったくせに⁉︎


護衛のアインがウタを守るために前に出るがルフィのパンチを受けて吹き飛ばされた。


「アイン⁉︎」


焦るあまり思考が混濁する中アインを倒しすぐ近くまできたルフィの顔を見て彼女は恐怖した。

「ヒッ⁉︎」

それは彼女が見たことない幼馴染の怒りの形相だった。そしてルフィは力を込めて拳を振り上げる。

私を殴るの?あいつが?ルフィが?嘘嘘嘘うそうそうそうそうそうそう…⁉︎

そして音速を超えて拳が突き出された。


「あ、あ…⁉︎」

その拳はウタの顔面ギリギリで止まっていた。ルフィはどうしても自分にかつて新時代の夢を与えてくれたウタを殴ることはできなかった。だが止まるわけにはいかず彼女の戦意をたたき折ったのだ。

涙目で戦意を無くしたウタはその場でへたり込む。その横をルフィは駆け抜けていった。


数秒後残ったウタに湧き上がった思考は…


純粋な怒りだった。


あいつ…あいつ…あいつ!


手加減した…!


手を抜いた…!


私を…見下した…!!


183連敗のくせに…!


私より2歳年下のくせに…!


私が…私があんたに夢を与えたのに…!!!


「チクショオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


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