忍び寄る者

忍び寄る者


 聞こえるのは木々のざわめきと虫の音だけ。

 静寂に包まれた村を、仄かな月明かりが優しく照らしている。

 数刻前まで飲めや歌えやの大宴会が催されていたのだが、夜が更けるにつれ一人また一人と脱落してしまい今では誰もが意識を手放し眠っている。

 時告げ鳥が鳴いて新たな一日の到来を知らせるまで動く者はないだろう。

 否、一人だけ動く者がいた。

 抜き足差し足。寝ている者を起こさない配慮のためか、はたまた別なる思惑があるのか極力物音を立てないようにその人影は移動していく。

 僅かな月明かりで生じる影に特徴的な形が写るその人物。

 この村に逗留している赤髪海賊団の大頭、赤髪のシャンクスの一人娘にして赤髪海賊団の音楽家であるウタその人である。

 彼女は並々ならぬ決意を抱いて、しかし他者に気取られ邪魔されぬよう気配を殺しあの場所へと進んでいく。

 その目的地とは――。


(いた! ルフィ~!!)

 彼女がこの村に来てからできた友人、ルフィの寝室である。

 目的地にたどり着くという最初の偉業を達成した喜びのあまり出そうになる声をなんとか飲み込み、心の中で喝采を上げる。

 ここからが本番、だからこそ油断はできないといった足取りでルフィの元へ向かう。

 起きているときのやんちゃっぷりが嘘のように静かな、年相応のあどけない顔で眠りこける友人の顔をしばし堪能する。

 満足がいったのか眠くなったのか、ウタはルフィにかけられたブランケットの中に潜り込む。

 なぜか、ルフィの足元から。

(うへへへへへお風呂以外でルフィのルフィにご対面できるチャンスなんてそうそうないからね こんなチャンス逃してたまるもんですか!)

 そう、このウタは同年代の、それも自分より年下で年端もいかぬ少年に並々ならぬ思いを抱えていたのだ。

(スゥ~~~~~~~~ハァ~~~~~~~~ああたまりませんなあこの匂い! ルフィったら私特効フェロモンでも生成してるのかしら? 罪な子ね!)

 愛しの少年の香りを堪能し、いよいよメインディッシュとばかりに彼のズボンを下着ごとズルッといく。

(何がとは言わないけどズル剥けじゃないのにズルッと! まだイってないけどズルッといく! おっほォこいつぁお宝だぁ~!!)

 眠りこけているルフィのソレは当然普段のサイズのままだ。

 早く早くと急く気持ちを、万が一にも起きてしまってはまずいと冷静な私が窘める。

 微かな、もどかしさすら感じそうな小さな小さな刺激を繰り返し繰り返し与えていく。ややあって、サイズこそ体躯と年相応ではあるが硬さと熱を帯びたソレをウタはまってましたと口に含む。

(んん~! 美味っしい~!! これよこれ、この瞬間を待っていたのよー!!)

 もごもご、レロレロ、カリ、ペロペロ。頬で、舌全体で、甘噛みで、舌先で 口内を駆使して堪能していく。

(ああ……口の中にルフィの味が広がって……まさにチン時代はこの味蕾ね! あら意外といいフレーズねこれ?)

 などと色々とハイになった頭でバカなことを考えるウタをよそにルフィのソレが大きく震えた後萎んでいく。

(ちっ、さすがにまだダメか)

 今日こそはもしかしたら、という濃い期待もあったのだがまだその時ではないと悟ったウタは後始末をし、ルフィの顔を覗き見る。

 あれだけやったのだから起きてもおかしくはないのだが、昼間の大冒険の疲労かあるいは宴ではしゃいだ影響か、ルフィは自分に降りかかったチン事など何も知らずに眠りこけている。

 起こさないように後始末をしっかりとした後、その無防備ながらも愛おしい顔を見つめたまま、ウタも眠りにつくのだった。

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