心の傷は簡単に癒えない

心の傷は簡単に癒えない


宿儺を何とか倒して伏黒も取り戻し、どういう訳か五条先生も復活してる





「悠仁!!!」

バン!と勢いよく開かれた扉

そこから入ってきたのは会いたいと焦がれていた人達だった

「悠仁!もう大丈夫だ!宿儺はもういない!」

「ちょう……!」

会いたいと願っていたはずだった

会えて嬉しいはずなのに

こちらに手を差し伸べる脹相にかつて宿儺にされた数々の暴挙を思い出してしまった

「ひっ!」

「悠仁?」

分かってる

脹相がそんなことするわけないって分かってる

けれど、今まで私を蹂躙しつくした男の人の手

『小娘』

「いや……っ!」

ああ……ダメだ

いつからこうなったんだろう

少し前の私なら今すぐ脹相に飛びついていたはずなのに

今では男の人というだけで、脳裏にアイツの声と邪悪な笑みを思い出してしまう

脹相は心配してくれてるのに私はいつもの癖で体を強ばらせて身を縮こませる

「虎杖……」

その顔を見た瞬間、今までされた全てのことがフラッシュバックした

頭では違うと、ちゃんと分かってるのに

とても、とても怖くて恐ろしくて体が震える

上手く息が出来なくなってヒューヒューと苦しくなった

「悠仁!!もう宿儺はいないんだ!だから大丈夫……!!」

目の前にいたのは一度宿儺に殺された五条先生の姿

何度も、何度も先生に助けを求めた

けれど先生も宿儺に殺され私は酷い罪悪感を覚えた

夢の中で先生が出てくる度にずっと謝り続けて、目が覚めると噎せ返るほど泣き喚いた

宿儺はそんな私をも愛おしいと抱きしめてきて気持ち悪かったのを覚えてる

「ごめんなさい……ごめんなさい……!」

頭を抱えて無様に泣きながらただただ謝ることしか出来ない

ああ……私ってこんなに弱かったけ

宿儺に攫われてから死にたいと思うことが山ほどあった

けれどそんなこと宿儺が許すはずもなくて

みんなが必死に戦っているのに私だけ……私だけ……!

「お前らちょっとどけ!!!!伏黒は虎杖に近づくな!」

「いえいり……せんせ」

「もう大丈夫だ虎杖。もう宿儺はいない。安心しろ」

そう言って優しく抱きしめてくれる家入先生の背にすっかり痩せ細って力の弱くなった腕を回し、私はただ泣き叫んだ

泣き疲れて気を失うように眠りにつく前に見たのは、深く傷ついたようなみんなの顔だった

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