【微閲覧注意】 欲深き人の心と降る雪は
20時を回ったころ。コンコン、コンとノックの音。
「どなたでしょうか?」
優しく落ち着いた声が扉の中から問いかける。
「……園崎レンです。私の個人的な懺悔を……聞いては頂けませんか」
少女というには僅かばかりに低い声で応えるのは園崎レン。伸ばした紫の髪が美しい。今は寝巻に身を包んだ、シスターフッドの白一点だ。
部屋の主、シスターフッドの長である少女、歌住サクラコは静かに扉を開くとレンを迎え入れた。
この部屋は懺悔室でも告解室でもなく、そもそもシスターフッドの施設でもない。サクラコの私室である。
「ご自由におかけになってください」
「はい」
一見畏まりながらも、二人は寝巻であり、さらにサクラコが紅茶を淹れ、ミルクを小さじ1杯半加えてティーカップをレンの前に置く様子は2人が親しい仲であることを意味していた。
「……何時も美味しいです」
「いえ」
ミルクティーを一口飲んでレンは小さく笑い、サクラコもまた微笑む。
そして、レンがミルクティーを飲み終わるまで静かな時間は続いた。
空になったティーカップがソーサーに置かれ、カチャリと音を立てる。
「貴方は……どのような罪を犯したのですか?」
サクラコが問う。
「私は……家族にふしだらな感情を抱いてしまいました……」
ああ!なんと悍ましいことか!
「私は………それを断ち切ることが出来ずに……」
「またこの場を訪れました……」
ああ、なんと哀しいことか。
「……分かりました。」
サクラコはゆっくりと立ち上がり、そしてベッドの傍に歩くと腰掛ける。
「どうぞ、こちらに」
サクラコがぽん、ぽん。とレンが自分の右隣に座るよう促すと、レンは逡巡しながらもその通りに座る。
「……よく、罪を告白してくださいました」
サクラコのしなやかな指がレンを撫でる。
「ん、っ……」
「貴方は十分すぎるほど悔いています。十分すぎるほど己を律しています」
指と布の擦れる音。震えるレンの吐息。
「どうか、レンに祝福があらんことを……」
「っ……!」
果たして罪を犯しているのは誰なのだろうか。