復讐を誓った日

復讐を誓った日

【ここだけ冥王レイリーに子供がいたら】Byスレ主

※死ネタ&グロ&閲覧注意

初めて会う同族の叔父とイーサンのお話であり

《おわったひと》のイーサン視点です

※死ネタ注意

※グロ注意

※閲覧注意です








いつも母さんは、ある2人の事を話してくれていた。

1人目は、母さんを助けてくれたボクの父さん。

父さんは人間で、“冥王”って呼ばれるくらい凄く強い海賊で、それでいてとても優しい母さんの“生きる希望”だって。

2人目は、母さんの双子の弟でボクの叔父さん。

母さん以外は見た事のない母さんの同族で、ちょっと泣き虫で人一倍優しい、生き別れちゃった“双生の片割れ”。

母さんの話を聞く度に、その2人に会ってみたくなるけど…それを口にすると、母さんがちょっと悲しそうに瞳を揺らすから、言わないでいる。

でも…もし、会えたら嬉しいな、なんて思ってたんだ。





それは、とても良く晴れた蒼穹が広がる日の事だった。





その日は、母さんに頼まれて山の中で薬草を採取していた。

少し時期がズレているので探すのに苦労してると、風に混ざって薄っすらと血の匂いがするのに気がついた。

風の流れは家の方からで。

集めていた薬草をそのままに、急いで戻る。

いつもなら思わないのに山の中を走るのが煩わしくて、木々の隙間から空へと飛び立つ。

ほんの少しだけど随分と時間がかかった様に感じながら、ぽかりと木々が拓けた場所に降り立つ。

そこには、母さんに良く似ている黒翼の男性が立っていて。

赤い海に倒れ伏す、母さんが…

「…かあ、さん…?」

母さんの姿を目に映す。

いつもは綺麗な黒い翼は所々羽根が飛び散っていて、片翼がおかしな方に折れて力無く垂れている。

頭や顔は傷一つもついていないけれど…胸から下は何か硬い物で力任せに潰された様で、褐色の肌から複雑に折れて飛び出した白い骨が見えていて。

腹からは千切れてもおかしくない僅かに繋がっている長い腸が出ていて、他にも破裂した混ざってしまって何処の内臓か直ぐには分からない様な欠片が身体の外に飛び出して血の海に浮かび。

腰は骨が頑丈だからカタチが残っていたけれど、足はグチャグチャな肉塊になってしまっている。

駆け寄って血に塗れた母さんのまだ温かい身体を抱きかかえながら。

ボクの中の医師としての意識と知識が、たとえ純粋なルナーリア族であろうとも…もう助からないと判断を下していた。

「あれ…もしかしてルルワ姉さんの息子だよね?」

まるで久しぶりに会った知人に話しかける様に声をかけられた。

ドクリと心臓が脈打つ。

一度息を吸い、吐く。

それだけで、ボクの身体は普段通りに戻る。

ゆっくりと黒翼の男性に顔を向ける。

返り血を浴びているのに、柔らかく笑っている母さんそっくりな顔立ち。

肩までかかる位の白い髪に褐色の肌、母さんと同じ綺麗な灰色だったろう目は淀んだ曇り空みたいで。

医者としての意識と知識は、目の前にいる男は壊れてしまっているのだと警鐘を鳴らしている。

同族の男が手に持っているメイス型のモーニングスターと、一挙手一投足に意識を割いて。

「うん、そうだよ。キミは、母さんを姉って呼んでるから…カイン叔父さん、で良いのかな?」

相手が親しげに感じるような声音で話す事を、頭の片隅で考えながら、頷いた。

「やっぱり!ルルワ姉さんの息子だよね!うん、うん。俺はカイン、君の叔父だよ。ねぇねぇ、君の名前は?」

酷く楽しそうに、嬉しそうに、話す姿に…心底、嫌悪感が湧き出てくる。

それを飲み込みつつ、口を開く。

「ボクは、イーサンだよ。…ねぇ、カイン叔父さん…どうして、母さんを殺したの?」

きょとん。

そんな、何を聞かれているのか理解出来ない様な、考えていた事とは違う事を聞かれた様な顔で。

「え?だって、ティーチが殺して来いって言ってたから」

そう、言ってのけた。

それでも話の中に出てきた、母さんを殺すように言っただろう人の名前を呟く。

「…ティーチ」

「うん、マーシャル・D・ティーチ。俺を拾ってくれた、俺の恩人」

独り言に同族の男が…叔父である存在が頷く。

「……なら、カイン叔父さんはボクも殺す?」

母さんを殺したのなら、ボクの事も殺すのだろうかと問えば、ニッコリと笑う。

「殺さないよ?だって君の事は殺して来いって言われてないし」

簡単に…命じられていないからと、言われた。

「…そう、なんだ。そっか…」

母さんを殺した下手人は、ボクの叔父さん…いや、カイン。

命じた黒幕は…マーシャル・D・ティーチ。

「ティーチに言われた“オツカイ”も終わったし、俺は帰るね!じゃあね、イーサン」

ボクの名前を呼びながら手を振り、飛び去っていく黒い影を見つめる。

腕に抱きかかえた母さんの身体は、とうに冷たくなっていた。



必要な物だけ詰めた荷物を持ち、生まれてから17年を過ごした家を出る。

家の寝台の上には、綺麗に整えた母さんを寝かしていて。

「…行ってくるね、母さん」

込み上げてくるものを抑えつけ、目を瞑る。

目を開けるのと同時に、炎を灯す。

全力の炎で、家を燃やした。

遺骸が利用されない様に、決して灰すらも遺さない様に…全てを燃やし尽くす。

遠くの村にも見えるだろう程の勢いで炎が舞う。

「ボク……いえ、私はあなたが母で幸せでした。どうか、安らかに眠って下さい」

灰すら残らずに燃え尽きたのを確認して、黒い翼を広げる。

だいぶ時間がかかったので、村から人が上がって来たのか騒ぐ様な音が聞こえてくる。

「あなたは望まないかも知れませんが…私は必ず仇を殺して、復讐を果たしましょう」

空へと飛び立つ。


そう…私は必ず復讐を果たすと誓います。



それが叶うまで私は…



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