復興の日々
アビドスが陸八魔アルのものとなってから一か月が過ぎた。
とはいえ、元々彼女は、別に拠点を持っているし、便利屋としての活動をすることもあったアビドス領内にとどまり続けるということはない。
それを残念に思うものも少なくないが、領内には笑顔があふれていた。
彼女らは進んで彼女に隷属しているものではあるが、その多くがはぐれ者であった。
ある者は、学園に属していながら、部活にもなじめず、かといって、帰宅するだけの青春を良しとしなかったもの。
ある者は、権力闘争に負け、後ろ指で暮らすしかなかったもの。
ある者に至ってはそもそも学園に入ることすらできなかったものである。
すねに傷がある。とまではいかなくとも、なんとなく居場所のなかった者たち。
それが、彼女に抱かれたというただ一つのパーソナリティは、それだけで彼女たちを繋ぐ働きをしていた。
砂漠の進行は止まっていないものの、既に校内には研究資材がミレニアムの方から運び込まれていた。
ゲヘナ、トリニティと比べ少ないものの、ミレニアムにもすでに、彼女に抱かれた少女たちがいる。
現在は、より専門的に深く研究を始めたが、流石に解明はすぐに、とはいかないだろう。
今取り組まれているのは、街の復興の方だ。
なにせ、アビドスからは多くの企業が撤退した。
残っているのも、生徒僅か五人という惨状であったのだから当然だ。
だが、現在は、既に数百人規模のコミュニティとして機能し始めている。
故に、今のハーレム街に誘引したいところだが、難しい。
勿論、数百人のコミュニティというのは間違いなく大きい規模となる。
しかし、今のこの環境が陸八魔アルというたった一人の個人によって起きている特需といっていい。
だが、経済活動とはその日、その日だけを見て行うものではない。
大型の店舗を誘致するにはある程度の実績がいる。
……とはいえ、そんなことに頭を悩ませるのは現在アビドスに存在している生徒会の役割である。
幸い、近頃は学生が集まったこともあり、アビドスへの補助も再開した。
資金の運用に関しては、先生と、彼女を交えて話すことになるだろうが、このコミュニティの普通の学生たちには関係のない話だ。
昨日は、新しい小さな店がオープンした。
一昨日は、アビドスに記念すべき新たな部活動が活動を開始した。
その前日は、隣の誰かが、アル様に抱かれていた。
そんなうわさ話が、駆け巡る、普通の学生生活。
彼女たちは、この復興を始めるアビドスによって、それまで得られなかった新しい「青春の記憶(ブルーアーカイブ)」を過ごすのであった。