徒花(後編)

徒花(後編)


 ぎし、ぎしっ。ぱん、ぱんっ。ぴちゃ、ぴちゃ。

 リズムよくベッドが軋む音がする。それに合わせて、何かを打ちつける音と水音が部屋に木霊した。

 「んっ、む♡ふぅ、あふっ♡」

 ベッドには脚をアルベルの腰に絡め、唇を奪われ、蕩けた顔を晒すフェリジットの姿があった。


 まけてない、まだっ、まけてにゃい……っ♡


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 数分前。

 デスピアンへ堕とさない約束の下、フェリジットに下された条件は、女性の捕虜としては当然のものだった。

 「……最低ね、ゲス野郎……!」

 「そう言わないでほしいな、これを終えればそっちにも得だろう?」

 『これから行う性行為でフェリジットが絶頂しなければ、仲間の元へ帰す』。アルベルはフェリジットにもメリットがある取引をしていた。

 それを守るとは言っていないのだが。


 「抵抗したらどうなるかは……」

 「くっ……んっ……わかって、るわよ……っ」

 仮面をチラつかせながらアルベルの手がフェリジットのズボンへと入れられていき、下着へ潜り込むと彼女の秘部へ触れる。きめ細かく手入れされた細長い指が、ゆっくりと膣へ侵入していく。

 「はっ……一丁前に、手入れしてんじゃない……ぁっ♡」

 「女性の扱いは丁寧にしないといけないだろう?」

 膣へ指を出し入れしていると、皮肉交じりで言おうとした言葉が漏れ出た甘い声でかき消される。湿り気を帯びてきたのを感触で察すると、アルベルは自身のコートの前を大胆に開き、ズボンをずり下ろす。


 「はっ……?」

 呆気にとられた声を出すフェリジット。その原因は彼女の眼前に差し出されたアルベルの逸物にあった。

 まず、長い。こんなものを入れたらあっという間に奥に届いて子宮が丸ごと押し上げられるだろう。

 次に、太い。男性器などほとんど見たことのないフェリジットだったが、明らかに彼女の想定するような生易しいものを超えていた。

 何より、獣人である彼女の鼻が言っていた。これは何人もの女性を雌に変えてきたモノだと。幾人もの雌の匂いを纏いながらそそり勃つソレに、フェリジットの体は反応してしまっていたのだ。

 「これからコレを入れてやるよ……準備は良いみたいだな?」

 「ち、ちがっ……」

 ズボンと下着を脱がし、フェリジットの脚が開かれる。反応してしまった秘部からトロリと愛液が垂れているのを見ると、アルベルはいやらしく笑みを浮かべて指摘した。

 「違わないだろう?もしかして早く欲しいんじゃないか?」

 「っ……バカに、するんじゃ……!」

 からかうアルベルに口答えしようとしたフェリジット。

 だがその時、アルベルは彼女の唇を奪った。一瞬反応が遅れたが、何をされたか理解した時にはもう口を離されていた。

 「ククッ、悪かったよ。コレで手打ちにしてほしい」

 「……この、クズッ……!」

 「おや、もしかして口付けもしたこと無かったのか?」

 取っておくつもりも無かったが、こんな奴に捧げるつもりも無かった。怒りの瞳を向けるフェリジットだが、そんなことは気にせずにアルベルは秘部の入口へと逸物を充てがう。

 「まあその程度の事、気に病む必要なんて無い。もうどうでも良くなるんだから」

 「ま、待ちなさっ───」

 「そぉ、れ」


 ぐちゅんっ───と突っ込まれる音がした。その一瞬後に、目を回しそうな快楽がフェリジットへ迸った。

 「あ゛ッ──────!?♡」

 小さく仰け反りながら、下から押し上げられた空気と一緒に、快感を外に出そうと声が出る。しかし、顎を指で引かれると同時に彼女の口はアルベルの口に塞がれてしまう。

 「んむぅっ♡」

 快楽で痺れるように猫のような耳と尻尾がピンと張る。ぬるりとアルベルの舌が口内へ侵入し、彼女の舌と無理矢理絡み合わせられる。

 舌が舌を舐める度に、腰をより深く落としていく度に、ぐちゃぐちゃとした快楽がフェリジットの脳へ迫ってくる。

 「はっ、んん♡んぷ、ちゅ……っ♡」

 

 いや、いやぁ……♡嫌なのに、駄目なのに……っ♡


 未知の快楽に、ねっとりとしたキスが合わさる。まだ挿入されているだけなのに、フェリジットは限界に近付いていく。駄目だと制御しようとしても、体は正直に反応し──────

 「んっ───うぅぅっ♡♡」

 びくびくっ、と痙攣しながらあっさり彼女の体は屈してしまった。

 それを確認すると、アルベルは口を離す。舌の先端からは互いを繋げる唾液の糸を引いていた。

 「あれあれ?おかしいな……もしかして、もうイッ───」

 「イッて、ないっ……アンタみたいなっ、デカいだけのヘタクソに負けるわけないでしょっ……♡」

 「……へぇ?」

 危なかった。即座に否定しなければ、きっと今頃デスピアンに変えられていただろうという危機感が、フェリジットの口から嘘を言わせた。

 だが……それは逆効果だったかもしれない。

 彼の嗜虐心を、刺激する事になったのだから。


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 ───そして、冒頭を経て現在に至る。

 「はっ、ふあ♡んぅ、は……ぁ♡」

 フェリジットの愛液に濡れた逸物を、フェリジットの唾液に濡れた舌を、アルベルは動かしていく。

 フェリジットも精神は負けじと耐えているが、先程から何度も絶頂を迎えている。その度にアルベルが尋ねるが、嘘を突き通していた。

 「はぁ、ん♡あ、あッ……♡♡」

 「……あれ〜?またビクビクしたし、もしかして───」

 「イッてにゃい、イッてにゃいぃ……♡」

 「ふ~~ん……?」

 舌を好きなように弄ばれ続け、既に呂律も回らなくなっている程に快楽へ堕ちている。それを当然見抜いているが、あえて彼女の嘘を信じるフリをしてアルベルは腰を突き動かす。

 「あっ♡あァん、いや、っあ♡」

 「ククク……イヤ、なんだ?」

 「やあぁ……っ♡」

 子供のように首を横に振るフェリジットを見ると、アルベルは途端に腰を速く動かしていく。

 「アッ♡♡やめへっ♡はげし、ぃ♡」

 だらしなく舌を出して、ヘッヘッと獣のように荒く呼吸するフェリジット。アルベルも限界が近いのか、膣内で逸物が膨れていくのが体感でフェリジットに伝わる。

 「そろそろ、出すぞ……っ」

 「はっ、あ♡やら、やめぇ……っ♡」

 口では嫌がっているが、膣はキュウキュウと締め付けている。期待するように。もう既に体はほぼ堕ちていた。ただ、彼女の心やプライドが堕ちるにはあと一押し足りない。

 「あっ、あ♡イッ──────え……?♡」

 ピタリと、アルベルの腰の動きが止まる。

 ……もう少しだったのに。

 蒸気していた頭がゆっくりとクールダウンしていき、最初に思ってしまったのはそれだった。

 「……ここまでだ」

 「はっ……?」

 ニヤリと、悪意を煮詰めたような表情で笑うアルベル。『ここまで』という言葉に込められた意味を、数巡してフェリジットは察する。

 『今のままではここまで。もっと先へ行きたいなら───』

 はぁはぁと息を切らしながら、フェリジットの脳内で色々な顔が浮かんでいく。妹のキット、頼れるルガル、可愛らしいエクレシア、強いアルバス。

 そして───密かに想いを寄せていた、シュライグ。

 全員、大切な仲間達だ。必ず帰ると、そう誓った筈なのに……今は。

 「どうする、フェリジット?」

 アルベルの声がする。彼の望む解答が、既に頭に浮かんでいた。でも、これを言ってしまえば終わりだ。鉄獣戦線としての誇りも、女としての人生も全て彼に捧げることになってしまう。

 フェリジットが選ぶのは、当然──────


 「フェリジット」

 「あっ」


 ───どちゅっ♡

 思考が引き戻される。アルベルが名前を一声呼んだだけなのに。痺れを切らして腰を一度突き上げただけなのに。酷く蠱惑的で、魅力的で。  

 この瞬間、フェリジットの答えは決まった。


 

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 「………ください……」

 「聴こえないなあ?何が欲しいって?」

 ぬるる……と腰を引いて逸物を抜き出そうとするアルベル。引き止めるようにフェリジットは顔を上げる。その表情は、快楽の涙を溢れさせて雄に懇願する為の顔だった。


 「仲間にでも、なんでもなるからあっ♡おちんちん、アルベルのおっきいおちんちんっ♡あたしにくださいっ♡♡」


 ───シュライグ、みんな。ごめんね……♡


 「んっむぅ……♡」

 その言葉を聞くと、アルベルは再びキスをし貪るようにフェリジットと舌を絡め合う。

 そして亀頭の辺りまで出かかっていた逸物を、にゅるんっと滑り込ませるようにフェリジットの腟内へ突き刺した。

 「んんんんっっ♡♡」

 いつの間にか不可視の枷も外されていた彼女は、手足を交差しアルベルの体へ絡めて抱き締める。自ら舌を絡ませ、腰を揺らす。その顔は至上の喜びを得た雌そのものだった。

 ぱん、ぱんっ♡じゅる、じゅちゅっ♡と何度も何度も激しく腰を打ち付け、唾液を交換し合う音が響く。昇ってくる多幸感にフェリジットの膣は更にアルベルの逸物を刺激し、そして──────


 ……あぁ、イく♡イッちゃう♡こんなにきもちいいの、がまんできないぃ♡♡


 ───びゅるるるっ!どぷっ、どぷぷ…っ!


 「んっうぅぅううぅっ♡♡♡」

 

 ぎゅうう、と強く抱き締め合いながらアルベルの逸物から精液が子宮へ放たれる。炎のような熱さは火傷しそうな程の快楽をフェリジットに刻み込む。

 「ふー……♡ふー……♡んっ、ぉ……♡♡」

 股と口で繋がり合って、お互いに熱い鼻息を吹く。にゅるにゅると密着した唇の間では舌が絡み合い続けている。

 びゅぐびゅぐと吐き出され続ける精液の感覚の余韻を感じながら、フェリジットの瞳から一筋の涙が垂れる。後悔か、快楽か。或いはそのどちらもを含んでいる涙だった。


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 「……ぷはっ。どうだった、フェリジット?お望み通りになった気分は?」

 ようやく射精が終わったのか、唇を離すアルベル。一方のフェリジットは、既に息も絶え絶えな状態で糸の切れた人形のようにぐったりとベッドに身を預けていた。

 「はあっ……はあっ……♡」

 「じゃあ、約束通りオレのものになってもらおうか?」

 アルベルは逸物を抜きながら仮面を取り出す。近づけられていく仮面を見ても、フェリジットは抵抗することはなかった。

 「──────あ゛っあぁああぁぁ!?」

 仮面を被せられた瞬間、フェリジットの体を赤黒い稲妻が走る。ビクビクと何度も痙攣し、詰められた精液を漏らしながら彼女の体が、心が作り変えられていく。


 ───あたしの、体も心も……『アルベルだけ』のものになってく……っ♡♡♡


 ………その後、誕生した1人のデスピアンは元の原型を保っていた。しかし、色はアルベルの色に塗りつぶされたように赤と黒を基調としたものへと変わっている。

 それに先程の性交で無事に卵子へ命中され、成長がデスピア化により促進されたのか、妊婦として大きく腹が膨らんでいた。

 「わお、流石はスナイパー。危険日でも一発で必中させちゃうんだ」

 パチパチとアルベルは拍手を送る。冗談交じりで言っているが、新たなデスピアンの誕生も祝していた。

 そしてゆっくりと目を開いたフェリジット。彼女はアルベルを見ると───

 「アルベル……♡見て、こんなにすぐ大きくなったの……♡この子が産まれたら、すぐまたあたしを孕ませて……ね、アルベル♡」

 ゴロゴロと喉を鳴らしてアルベルへ擦り寄る。彼女はもう以前のフェリジットではない。そして、二度と以前のフェリジットに戻ることは無い。

 『徒花のフェリジット』は『アルベルの最初の番』として生まれ変わってしまったのだから。

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