後編
後編
師匠はまずレンゲの腰に縄を回した。へそのあたりで結んだ縄を脚の間に通し白いスカートを巻きこみながら赤い尻尾の付け根ごと腰縄に縛り付ける。
脚の間に縄を通した時点でさすがにレンゲは反応を見せたが、締まる縄の感触に言葉を詰まらせ黙り込んだので師匠はその顔を気にしつつ手早く縛っていく。
転んだら少し危ないので座布団の上に座らせてからレンゲの細い足首を縛る。足首の間に閂を入れて膝を縛ろうと縄を持って行ったあたりでふと手を止めた。
「師匠?」
縄の先端を目で追っていたレンゲは師匠の顔をうかがうように視線を移す。師匠にちょっとしたいたずら心が働いたのだ。
”ちょっときつめの姿勢に挑戦したいんだけど大丈夫そう?”
「…アタシは大丈夫だよ。ここまで来たらやりたいようにやっても」
縄化粧の影響か少し扇情的な印象のレンゲから許可を取り、作中の縛りを再現することを師匠は決めた。
そのためにまずレンゲの持つ特徴的な赤い尻尾は太ももの間から前に出すことにした。開いた脚から出される尻尾は少し間抜けに見えるが必要なことだと割り切る。
レンゲをうつぶせにして足首の縄を背中の高い位置に組まれた手首の縄に通してからゆっくりと引き寄せた。
「う、これ、は確かに…んぅ、ふぅっ」
さすがはレンゲというべきかその体はかなり柔らかいようで、背中と足がくっつきそうなほど縄を引き絞ることができた。しかし座布団と接しているのは腹部のみという弓のように大きく反った体にはしっかりと負担があるようで、レンゲは荒めの息を吐き呼吸を整えようとしていた。
”ありがとうレンゲ。もう少しだけ我慢してね?”
余った縄を使って足の指をまとめるように縛り、そこから伸ばした縄を今度はまだ動かせる部位である手首から先、指先を絡ませるように縛り上げていく。
「うっ、ぁ…」
最後にレンゲの髪を結ぶ紐と足首を通した縄をつなげて今回の縛りは完成した。
”落ち着いて、ゆっくり息をして”
「ぅぁ…っはぁ…」
ゆっくりとレンゲに話しかけてから全体を眺めてみる。
足首とのつながりにより逆海老反りになった体は床との接地面は腹部と脚の間から垂れる赤い尻尾。
上半身に這いまわる縄は動きの一切を制限し、反った体制も相まって平らな体に起伏を作るほど食い込み、空気を取り入れようと上下するのが見てわかる。
背中でひとまとめにされた結び目たちは手指、足指をもまとめて拘束し、髪紐と結びつけたことから頭の動きすら制限していた。
(やばい、これほんとに、うごけないし…うごかない…)
そんな状態を自身の体で体感しているレンゲはあまりの拘束感と感じる刺激により逆に気分が高揚していた。呼吸をするたびにぎしりと縄が鳴り、吸い込む空気が変わったかのように思考が定まらなくなっていく。
顔は耳まで赤く、瞳の焦点はとろんと溶ける。空気を求めて開く口からはよだれが垂らされ床にシミを作った。
縄酔いと呼ばれるものをレンゲが体験する中、その姿を眺める師匠、いや役から離れた先生は一人冷静になり現実を見て反省していた。
”やりすぎた…”
その後レンゲの縄を解いてからいつもの調子に戻るまでそれなりの時間がかかった。