後には何も残らなかった

後には何も残らなかった



一般少年の視点で見るとある一家の悲劇

多分稀によくある事件

 

 

 

 

 

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家にはよく旅の人が来て色んな話を聞かせてくれた

欲しいものを強請ればそれは手に入った


この家の中で外に出ること以外の全ては俺の思い通りだった


「外に出てはいけないよ、外には恐ろしい魔物がいるからね」


それがどうして外に出てはいけないのかと理由を尋ねた俺への父母の返答だった

本当に魔物がいるのか、それともただの方便なのかは分からない


ただ、そう言った父母の顔が今までに見たことの無いほどに真剣な顔をしていたので少なくとも彼らはそれを信じていたのだろう

俺も態々両親と喧嘩してまで外に出たい訳ではなかったのでそれ以上のことを尋ねることはしなかった


それを今は後悔している


朝起きると何だかやけに肌寒くて、嫌な匂いが立ち込めていて、そうして……父と母が赤い水たまりの中で眠っていた

彼らは嫌に冷たくて何度声をかけても何度揺さぶっても起きてくれなかった


どうしよう、どうしよう、どうしたらいいんだろう

こんな時に何をすればいいのか、俺は何も知らないのだとその時初めて自覚した


そうだ、少しにこの家に来たカルデアという人たち

この辺りの調査をしているという彼らは今までの旅人よりもずっと強くて、ずっと色んなことを知っていた


あの人たちなら何とか出来るかもしれない、確か暫くは近くにいると言っていた

今ならまだ間に合うはずだと扉に手をかける


『外に出てはいけないよ、外には恐ろしい魔物がいるからね』


幼い頃から言い聞かせられた言葉が脳内で繰り返される

制止するように鳴り響くそれを無視して扉を開ける


少し離れた所から上がる煙を目印に歩を進める

雪、森、川、今まで話の中でしか見たことの無いものが次々に現れて少しばかり楽しくなった

こんな時に楽しむなんて、だから罰が当たったのかもしれない


もう少しで煙の出所に辿り着くという所で『白』に出会ってしまった

いや、出会ったというのは正しくない




正しくは─────見つかった、だ




ああ、これこそが外にいるという魔物に相違ない

へたりと座り込んで眼をそらせないままの俺を見て


その魔物はあはは、と無邪気な笑い声を上げた



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一般少年(今話の視点主)

武田の血を継いでいる

晴信似というこの特異点においての死亡フラグが乱立している

この後晴ノッブになる


両親

実は一般少年とは血がつながっていない

本当の両親から少年を託されて育てていた魔術師的な人々


魔物

はるのぶ、と鳴く


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