待ち人
今日はきっと、コラさんが帰ってくる。
ずっと月夜が続くこの狩人の夢に、日にちという概念があるかは分からない。
それでも眠ったり起きたりはするんだから、おれはそれを一日とよんでいた。
あの日、工房が燃え上がったときには姉様の手を引いて外へと飛び出したけれど、あれから何日もたった今では平気で炎の中で眠ったりもしている。
夢の中の炎は、ちっとも熱くなんてなかったから。
繰り返し謝りながら燃える工房の外におれと姉様を待たせていたコラさんは、炎の中で談笑しているおれたちを見て腰をぬかさんばかりに驚いて、おれにも、姉様にも笑われていた。
夢は夢なのだから、普通を求めるほうが間違っているとおれは思う。
ほとんどの時間を夢の外での冒険に充てているコラさんには、痛みも苦しみもない夢の中はまだまだ奇妙に映るみたいだ。
そんなコラさんが、もうじききっと帰ってくる。
最近少し表情が豊かになった姉様は、そわそわと落ち着かないおれを微笑みながら見つめていた。
コラさんに、伝えたいことがたくさんあった。
だってもう、白い痣は消えたのだから。