彼方から届いた手紙
不思議トラップ(?)により「死んだ人に手紙を書かないと出られない部屋」に入れられた一味が書いた手紙が、あの世のみなさんに届いたようです
そんなふんわり雰囲気なお話ですが、よろしければどうぞ
「…ったく、本当にワルガキなんだから。でもまァ、アンタが笑えてるならそれに越したことはないよ」
楽しげな文がおどる手紙を見て、くわえタバコの女性は口角を上げた
「あの子ったら、またあの人に似てきたわね」
ウソのような本当の話がたくさんつまった手紙に、少し鼻の長い女性は微笑んだ
「あの子の美味しいご飯が毎日食べられるなんて、羨ましいわ」
普段の姿とは裏腹な少しぎこちない言葉遣いで綴られた手紙に、金髪の女性は目を細めた
「そうかそうか!いい仲間に出会えたな!!」
海に出て仲間と共にたくさんの事を経験した旨が書かれた手紙を手に、十字のような髪型の男はニッと笑った
「そう…もう、あなたは独りじゃないのね…!」
仲間達との日々が綴られた手紙に、白髪の女性とその同志達は涙を流して微笑んだ
「たっはっ!!! !!! !!!」
弟子の近況報告が認められた手紙を抱え、魚人の男は巨体を揺らして大笑いした
「野郎共~~~~~~~~~!歌うぞ~~~~~~~~~!!」
「オオオオオオオオオオォォォッ!!!」
ジョーク混じりな手紙を読み終えると、男達は楽器に持って立ち上がった
「あーあー、またいつものが始まったよ」
「ねェ、4人のはなんて書いてあったの?」
紫煙混じりのため息の隣で金髪の女性はすぐに近くに座るテンガロンハットの男とショートヘアの少女といっしょにいる男女に尋ねる
「おれ達のか?」
「私達のはこれ」
そう言って彼らが見せたのは、
「エースへ
おれは今日も元気だぞ
メラメラの実はサボが食ったぞ」
というお世辞にも綺麗とは言えない字で大きく書かれた手紙と、
「おれは世界一の大剣豪になる」
とだけしたためられた手紙だった
「ちょっと、すごいグチャグチャじゃない。しかもそっちは三人纏められてる上にたったの一行だし」
「フフッ。でも、どっちも素敵ね」
呆れ顔と笑顔が隣合う中、彼らもいっしょに笑う
「たしかにグチャグチャだな。でもまァ、アイツが生きてるってわかってよかったよ」
「たしかにすっごく短いけど、アイツが元気にやってるっていう何よりの証拠だから」
「ああ、「頼りねェのは元気な証拠」っつうからな。アイツが自分の決めた道を歩いて、ちゃんと生きてるなら問題ねェよ」
「それを言うなら「便りがないのは元気な証拠」よ」
「でも、うちのパパに書くならもっとちゃんとしたのを書いてほしいな」
少女の言葉に女性も「そうね」と笑ってタバコを咥え直した
遥かなどこか
空島よりも遠い場所で陽気な大合唱が響き渡る頃、地上を満点の星が照らしていた