影の領域
カワキが空座町の影に拡げた空間
6割ほど拡げた段階で隠し切れなくなって「おい、あれは何だ? 何をしている?」という目で見られ始めたので、自分で陛下やハッシュヴァルトに報告して事後承諾を得た。
「死神に勘付かれたらどうするつもりだ。もっと慎重に行動しろ、お前の身の安全にも関わることなのだぞ」
「よい、ハッシュヴァルト。予想はできていた事だ。短期間といえどカワキにとって領土を拡げるには十分な期間だったろう」
「しかし、陛下……。我々の目が届かないところにカワキを置くのは……」
「……そうだな。では、あちらも整備しておけ。現世に避難先があるというのは悪くないだろう」
というような経緯でプチ帝国と言えるほど整備された。
元は緊急避難先として整備された為、城や城下町、太陽の門、研究施設や牢獄などの主要な設備は整っている。
しかし、終戦後の残党達は「あそこは殿下がいるから嫌だ」という理由で、誰も寄り付かない。
側近の人もハッシュヴァルトから「あそこか……。行っても構わないが、おすすめはしない」とやんわり止められた。
なお、入るためにカワキの許可は特に必要ない模様。なので、誰も来ないのは普通にカワキが怖がられているだけである。
侵攻前の団員達からは、多少の疑念や不安を抱かれるも概ね好意的な反応だった
「陛下の命令とはいえ、この短期間で6割も制圧するなんて仕事熱心な事だ」
「殿下が拡げた領域だろ? あの人の部屋と同じで罠だらけなんじゃねえの……?」
「まあ、領土は大きい方が良いよね」
現世組は「たまにカワキが出入りしてるの見かけるから、多分この町の影にも空間があるんだろうな」という事は気付いているが、規模や詳細は知らない。
井上が3年目、一護が4年目、チャドは6年目に内部を知る事になる。石田はカワキから酒を取り上げるため、10年目にしてやっと気づいた。
内部を見せてもらった時には、あまりにも見えざる帝国に酷似していたため、
「カワキちゃん、故郷が恋しいんだ……」
「あそこは彼女が育って、ずっと暮らしてきた場所だったからね……」
「あんな奴でもカワキにとっては父親……だったもんな」
「失った故郷を思い出しているのか……」
などとホームシックの心配をされた。
完結後、死神達は隊長格や四十六室などの限られた隊士達はカワキの影の領域の事を知らされている。
内部を知る者たちは「空座町の守りが固くなるのは良い事だ」と思いつつも、「俺達がカワキから故郷を奪ってしまったんだよな……避けられない事だったとはいえ故郷が恋しいだろう……」とこれまたカワキのホームシックを心配している。
同時に、四十六室や一部の隊士は「あまりに規模が大きすぎる」と危険視している。
特に、四十六室は「まさか現世の影の領域を足掛かりにまた侵攻するつもりではあるまいな?」と危惧していた。
だが、四十六室でも「裁判に呼んで詳しい話を聞こう」派閥と「下手に刺激するべきではない」派閥があり、最終的には後者が勝利したため、これといった追及はない。
カワキ本人は疑いをかけられた事について
「侵攻する気があったら露見するような事はしない」
「藍染の時のように、死体にならずに君達が生きたまま話せていること自体が、私の答えだ」
と思っている。
死神達がカワキの影の領域について知る事になったのは、マユリ様率いる技術開発局による調査と劇場版での事件があったためである。