序章
迫り来る脅威! ルキア捕縛を防げ②「ほら、だから言わんこっちゃねェ」
「げほっ! げほっ! …はぁっ!」
⦅石田くんはもう戦えそうにないな…⦆
刀を担ぎ、笑みを浮かべた恋次の前で、腹から血を流した石田が地に伏せている。カワキはその様子を横目に、一定の距離を空けて位置取った。
ルキアは冷や汗を流して、苦しむ石田の姿を見ていることしか出来なかった。
(…強い…! 此奴…また腕を上げている…! 止めることも…ここから動くことすらできなかった…!)
固い表情でそう思案するルキアの前で、恋次が石田に向かって一歩踏み出した。刀を高く掲げる。カワキに焦るそぶりは微塵もない。
「さて…そんじゃトドメといっとくか。死ぬ前によーく覚えとけよ」
「――――……!」
「阿散井恋次。てめーを殺した男の名だ」
振り上げた鋒が石田に向かって落とされたその時――コンクリートの地面に衝撃が走り、いくつもの瓦礫となってひび割れた。
「…な…!? …! …何だてめーは…!?」
「黒崎一護! テメーを倒す男だ!! よろしく!!」
⦅やはり来るか…。さて、仕事だ⦆
塀の上に飛び移った恋次。肩に大刀を担いだ一護。恋次が困惑した様子で質問を重ねた。
その様子を目だけで伺いながら、カワキは音もなく後ろ手でベルトに差したゼーレシュナイダーの穴に指をかける。
「……死覇装だと……? なんだテメーは…? 何番隊(どこ)の所属だ…!? 何なんだその……バカでけえ斬魄刀は…!?」
「なんだ、やっぱりでかいのかコレ」
石田を庇うように立ち、コンクリートに大きなひび割れを作った一護は、恋次を睨みつけた。
「…一護…! 莫迦者…何故来たのだ…!」
「! …そうか…読めたぜ。てめえが…ルキアから力を奪った人間かよ…!」
「だったらどうするってんだ?」
霊力と比例する斬魄刀の大きさに戦慄する恋次。しかし、ルキアの様子から一護の正体に勘付き、勢いよく飛びかかった。
「殺す!!」
「…黒崎…一護…」
少し離れた位置から戦いを眺める白哉。
静かに一護の名を口にする白哉の目の前で激しい打ち合いが交わされる。
「オラオラオラオラぁ!! どうしたどうしたぁ!? 何だてめぇ!? そのデケー刀は見かけだけかよ!? あァ!?」
「ベラベラうるせぇ奴だな…ッ! 舌噛むぞテメー!」
打ち合いは速度に勝る恋次が優勢を保ち進んだ。一護は強気な言動をしつつも、その速さについていくことができずに苦戦を強いられる。
背面に現れたカワキが背中に回した手を引き抜いた。恋次の背後で、青白い光が横薙ぎに一閃する。
「――! 銃だけじゃねえのかよ…!」
『あぁ、多少は剣術の心得もあってね。銃だけだと勘違いさせたかな』
不意を突いた一閃は、死覇装を裂くも肉を斬るまでには至らない。
⦅踏み込みが甘かったか…。対人戦は久しぶりで感覚がズレたままだな。早めに調整しないと……⦆
恋次の意識が逸れた隙を狙い、一護が大ぶりの一撃放つ。飛び退いて回避した恋次が一護の肩を背後から斬りつけた。
『あっ…』
感覚のズレを調整することに思考が向いた矢先、傷を負った一護を見てカワキがばつの悪そうな顔をした。血を流し、膝をつく一護に恋次が言葉をかける。
「……!」
「終わりだな。てめーは死んで、力はルキアへ還る。そしてルキアは尸魂界で死ぬんだ」
衝撃に瞠目する一護。恋次は勝ち誇った顔で口数を増やした。一護をニワカ死神と呼称し、自分には傷一つつけられないと馬鹿にする。
その顔を目掛けて、一護が怪我を押して刀を振り上げた。
「ハナシの邪魔したか? 悪いな、続き聞かせてくれよ。「キズ一つ」が…何だって?」
「…てめえ……!」
「…気を抜きすぎだ、恋次」
顎に小さな太刀傷を受けた恋次に白哉が苦言を呈する。白哉が口を開くと同時に、カワキが一護の前方へ移動した。
「…朽木隊長。何がスか!? こんな奴にはこんくらいで…」
「…その黒崎一護とかいう子供…。見た顔だと思ったら…33時間前に隠密機動から映像のみで報告が入っていた」
気色ばむ恋次に、白哉は冷静に話を続ける。
「大虚に太刀傷を負わせ虚圏に帰らせた…と…」
信じられない話だと大笑いする恋次。白哉は静かに恋次の名を呼び諫めた。それを聞かず、恋次は一護の斬魄刀を指差して尋ねる。
「オイてめえ! その斬魄刀なんて名だ!?」
「あ!? 名前!? 無えよそんなもん! …てか斬魄刀に名前なんかつけてんのかテメーは!?」
質問の意図が分からずに叫び返す一護に、確信した様子の恋次は刀に手をかけて刀身の姿を変えた。
「てめーの斬魄刀に名も訊けねえ!! そんなヤローがこのオレと対等に戦おうなんて…二千年早ぇェよ!!!」
⦅来る!⦆
「! 斬魄刀が…!?」
一護は姿を変えた斬魄刀に目を見開いた。斬魄刀の名を呼び猛々しい笑みを浮かべた恋次が斬りかかる。
「吼えろ蛇尾丸!! 前を見ろ! 目の前にあるのは…てめえの餌だ!!!」
「……!!」
その気迫に押され、受け身に回る一護。振り下ろされる蛇尾丸を受けようとするも、その目前で刀身が伸びる。その瞬間、目を見開いた一護の襟首が強く引かれ、間に割り込んだカワキの腕が大きく裂かれた。
***
カワキ…石田が来たので、とりあえず石田を繰り出してみて相手の手の内を探る最悪のポケモントレーナーみたいな事する。
ハッシュヴァルト仕込みの剣技が火を吹くぜ。死神代行篇まで剣は使ってなかった。
石田…ひたすら良い奴。この時はカワキにちょっと負い目がある(死神代行篇参照)ので、めっちゃ頑張ってくれたのかも。
原作通りに恋次にやられた。