幼妻√コビーに狂わされる始まり

幼妻√コビーに狂わされる始まり



ここは酒場なのだから、周りがガヤガヤとうるさいのは当たり前の話だ。なのにそれにすら苛ついて、はあ、と大きなため息を吐いて酒を煽る。

ここ最近何をやっても上手くいかない。海賊相手に遅れは取るわ、書類仕事は溜め込んで締切を過ぎるわ、上司である中将には叱られてばかり。おれは昔っから腕っ節には自信があって、それでいて他の仕事より給料が良いから、なんて理由で、片田舎の海軍の支部で一般兵なんてやっている。そんな短絡的な理由でしか海兵をしていないから、他のご立派な理由を掲げている奴等を見ていると自分が如何に浅い人間なのかを分からされて嫌になってしまう。そんな悪い考えばっかり浮かぶくらい、今のおれは参っていた。はああ、とまた溜息を吐く。もっと強い酒でも飲まなきゃやってられないと注文しようとすると。


「そんなに溜息吐いてると幸せが逃げちゃいますよ」


隣の席から、そんな声がした。女の様にも男の様にも聞こえる声。おれは隣を見た。そこには一人の子どもがいた。桃色の髪は腰に付くくらいまで長く艶々に手入れされていて、上等なレースが使われているとパッと見で分かるふわふわのドレスみたいな淡い色のワンピースを着ている。何処かのお姫様みたいだからこそ、額のばつ印の傷に余計に目が行った。……いつの間におれの隣に来ていたんだ? いや、それより。

「あー……こんな時間にこんな所で何してるんだお嬢ちゃん」

どう見ても未成年のその子どもに問いかける。子どもはこてんと首を傾げて上目遣いにおれを見た。首を傾げた拍子に、甘い匂いがした。

「だめですか?」

「そりゃあな」

「でも僕、こういう酒場に来るの好きなんですもん。いろんなお話が聞けて楽しいから。ねえ、お兄さんもお話してくださいよ」

「お話ねえ。聞いてて楽しいもんじゃねえぜ? 今出来る話なんてただの愚痴だしな」

「良いですよ? 愚痴だってなんだって。僕、お兄さんのお話聞きたいです」

ふわ、という擬音が聞こえて来そうな笑顔。普通なら怪しいし、美人局とかそういうのだと思う。けどその時は酒が入っていた事もあって、おれはその子どもに愚痴を吐き出していた。しかも、最初は小さいものだったのに、その子どもは聞き上手で、気付けばそうじゃない愚痴も吐き出してしまっていた。機密情報とかは漏らしてないけど、初対面のこんな子どもに言うにはおかしい様な愚痴だ。子どもはおれを見て笑いかけて来る。

「お兄さん、海兵さんなんですね。すごいなあ」

「凄いも何も。おれは給料良いからってだけでなった奴だぜ? 他の立派な奴に比べりゃ全然だよ」

「でも、それでも海賊の人と戦ったりしてるんですよね? すごいですよ。市民の人を守って、充分立派です。お兄さんに感謝してる人、いっぱい居ると思うのに」

「そうかねえ」

「そうですよ。少なくとも僕はお兄さんは凄くって、立派な人だって思います」

「……」

そう言う子どもに、嘘をついている様子は無かった。口先だけって感じもしなかった。本当におれをそう思ってくれているみたいだった。そんな風に言われるのはいつぶりだろうか。子どもは真っ白な手をおれの頭に伸ばして「お兄さんはすごいですよ」と撫でて来る。

「ねえ、お兄さん。また何かあったら、僕にお話してください」

「またって」

「お兄さんのお話聞くの、楽しかったので。僕、ここで待ってますから」

そう言って笑う子どもに。

おれはこの一回だけで、心を奪われていた。


おれは毎晩その酒場に通った。コビーと名乗った子どもはいつも同じ場所にいて、おれの話や愚痴を聞いてくれた。職場であったくだらない話には花が咲いたみたいに笑ってくれて、おれが愚痴を吐き出せば頭を撫でてくれる、甘い匂いのするお姫様。普段何をしているのか分からない様な相手なのに、おれはコビーに惹かれ続けて行った。


──その日は、今までで一番最悪の日だった。おれのせいで作戦が失敗して、上司が怪我を負ったのだ。後々別の部隊が捕まえてくれたらしいし、俺と同じ部隊のやつらも、上司も。おれを責めようとはしなかった。気にするなって笑っていた。それが一番辛かった。詰られた方がずっと良かったのに。おれは沈んだ気持ちのまま、いつもみたいにあの酒場へ向かった。すると、入り口でばったりと、コビーと出会った。

「お兄さん! 偶然ですね」

「あ、ああ」

「……なんて。実は、お兄さんとばったり会えるかなーって、ちょっとだけ周りをうろうろしてたんです。そしたら本当に会えたから」

えへへ、と笑うコビーは、おれが浮かない顔をしている事に気付いたのだろう、首を傾げておれの顔を覗き込んで、おれの頬を包んだ。

「お兄さん、大丈夫ですか? すごく落ち込んでるみたいですけど……」

「……ああ、大丈夫だよ」

「……大丈夫じゃない人って、絶対そう言うんですよ。何か、ありました?」

「……何も無いんだ、本当に。単におれのせいで、ってだけの話さ」

「……」

コビーは心配そうな顔でおれをじっと見つめている。そして背伸びをして、おれの唇に、……え?

「え、な……?」

おれは一瞬何をされたのか理解出来なかった。おれの理解が正しければ、おれは……キスを、されていた。

「ね、お兄さん。僕が、慰めてあげましょうか。いつも、お兄さんにはいろんなお話聞かせてもらってますから。その、お礼に」

コビーは目を細めて笑う。いつも通りの優しい顔と、声と、甘い匂いに、思考が全部埋め尽くされていく。おれはコビーの誘いに、頷いていた。

適当な宿屋に入ったおれはベッドに押し倒された。コビーはおれの腰に跨って、おれを見下ろしている。

「お兄さんのしたいようにしてくれて良いですよ。優しくしたって良いし、酷くしたって良い。いっぱい中に出してくれたっていいんです」

「な、中って」

「僕、妊娠しませんから」

と。コビーがドレスの様なワンピースの裾を捲り上げる。下着を身に付けていないそこには、おれにも付いている男根があった。男だったのか、と、驚く。驚きはしたが……ただ、それだけだった。今更性別なんてどうだって良かったのだ。おれはコビーをベッドに押し倒した。ベッドに広がる桃色の髪。コビーは「お兄さん」とおれに腕を広げてくれる。おれは誘われるままに、コビーの身体を貪った。




(ここからズブズブコビーの身体にはまっていく海兵くん)


(本人も知らない内に情報とか話しちゃうし物資とかも望まれるまま流しちゃう)


(ちなみに海兵くんがコビーの身体に手を出すきっかけになった作戦の失敗は、コビーがその時の海賊に手を貸してたからだったりするぞ!)

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