【幻覚】お礼はティータイムで
※娘化幻覚注意
※レーベンちゃんのキャラは某幻覚スレに少しだけインスパイアされています
授業の終了を告げるチャイムが鳴る。待ちに待ったお昼休みだ。
いつもはのんびりと購買や食堂に向かうのだが、今日は日直が授業終了の挨拶を言い終わると同時に、財布を握り足早に教室を出た。
何故私がそんなに急いでいるのか。
そう、今日は『限定20食!プレミアムにんじんハンバーグ定食』の日だからだ。
こだわりのお肉を使ったジューシーなハンバーグ。常設メニューのにんじんハンバーグとは使っているお肉が違うらしい。
学園随一のグルメで知られるディープボンド先輩も「あの味が学園の食堂で食べられるなんて、すごいプボ」と絶賛していた。
メニューに乗るのは不定期で、1ヶ月に2〜3回程度。幻のメニューだ。
過去に何度か買いにいったのだが、すべからく全敗。食堂に到着する頃には完売してしまっていた。
過去の反省を活かして、今日は授業終了と共にすぐに食堂へ向かう作戦だ。教室から食堂までの最短距離もすでにシミュレーション済。
人の波をかき分けて、ロスタイムなく食堂に到着。授業が終わってから3分も経っていないので人の数はまばらだ。
しかし、プレミアムにんじんハンバーグの列はすでに結構な長さがあった。ギリ買えるかどうか微妙なところ…。とりあえず、列の最後尾に並ぶ。どうか残っていますように……。
列が進み、いよいよ私の番。会計のおばさんが、笑顔で私に告げた。
「あら、ラッキーね!プレミアムハンバーグ、あなたで最後の一食よ」
うそ!?わたしで最後?
…早めに行動した甲斐があったぁ〜。
と浮かれ気分で財布から千円札を取り出すと同時に、「ええっ…」と切ない声が真後ろから聞こえ、思わず振り返った。
「あ…」
「が〜ん…昨日から楽しみにしていたのに…間に、合わなかった…」
よく手入れされたストレートロングの黒髪。そして優しげな目元とブルーの耳カバーが目を引く。同期のオークスウマ娘、ユーバーレーベンだった。
お互いクラシックの冠を持ち、寮も同じなのだが、すれ違いのようにレースが被らないので、実はあまり話したことがない。
彼女も授業終了とともに急いで向かったのだろう。「終業ダッシュでも間に合わなかったか…」と明らかに落胆している姿を見て、「あ、あのさ!」と話しかけずにはいられなかった。
「エフ、本当によかったの?貴重なプレミアムハンバーグ、半分貰っちゃって」
「うん。どんな味か確かめてみたかっただけだし、気にしないで」
食堂のカウンター席に2人並ぶようにして腰掛け、プレミアムにんじんハンバーグをシェアした。食堂内にはかなりの生徒が集まってきている。
「一緒に食べる?」と提案されて遠慮がちなユーバーレーベンだったが、「次いつメニューに乗るか分からないし」という私の一言が後押しになったようで、私の隣の席に腰掛けた。
ハンバーグはこれはもう絶品だった。肉汁がたっぷりで、ホテルで食べられるような上品な味。初めは申し訳なさそうにしていたレーベンも、「す、すごい、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる…!」と目を輝かせていた。
念願のハンバーグ、ついに食べることができた。人助け?のような事もして気持ちがいい。
「…………」
「…………」
元々接点があまり無いからか、食べ終わってしまうと特に話題も無く、無言の時間が続く。
まぁ、実際のところそこまで気まずくはない。
元々自分もそこまで口数が多い方ではないし、レーベンの纏っている穏やかな空気が不思議と心を落ち着かせてくれる。お腹もいっぱいになり、なんだか眠くなってきた。
「…エフ、今日はハンバーグ分けてくれてありがと。この恩は一生忘れない」
「そんな、並んだのだって2人同時だったでしょ。たまたま私が前に並んじゃっただけで」
「前にいたのがエフでよかった。私、今日この日をすごい楽しみにしてたから」
「ふふ、私も一緒」
「今度、お茶会に招待するね。ソダシとエール、あとレイナスとか、みんなで美味しいお菓子を出し合う会。アカリの手作りのスイーツは絶品」
ティアラ路線の子たちの会かぁ。何故だか自分が混じってしまっては申し訳ない気持ちに駆られたが、折角誘ってくれたのだ。
「…私の友だちも呼んでもいい?」
「タイトルホルダーとか、キッドとか?あ、あとシャフは誘ったら外国のお菓子持ってきてくれる、絶対。人数多い方が賑やかだし楽しい。次のお茶会が楽しみだ。」
レーベンが柔らかく微笑む。
そういえば同期で集まって何かをしたことって無かったな。
早速タイトルホルダーに予定を聞いてみよう。
お茶会の楽しい光景に思いを馳せながら、私は同期たちに連絡を取るためにスマホを取り出した。