年下の男の子 2

年下の男の子 2

※部分 妄想NTRあるので注意

 翌日の昼休み、藍染は食堂を突き進むと目当ての男がいた。愛川羅武だ。

「お疲れ様です、相席しても?愛川隊長」

「よう、惣右介くんか。シンジはひよ里と飯喰ってんのか?」

「ええ、そうみたいですね。ところで聞きたいことがあるのですが」

「なんだ?」

「この前の虚討伐で…」

 藍染は淡々と用件を述べていく。

 お互い真面目に意見を交わしているように見えたが、実は上の空だった。ラブは藍染の話など半分も頭に入ってこない。

(宴会でシンジがゲロった部下って…いやまさか違うよな……)

 藍染は端正な顔立ちをしており、それに加えて恵まれた体躯に才能も豊か。

 平子の今までの男達とはタイプが違う。

 酒が入っていたし話の内容もよく覚えていないが、シンジは部下と寝た事を後悔していた。

 部下の男は余り上手くないのか、それとも…とラブが考えているうちに話は終わってしまったので、お互い適当な理由をつけその場を去った。

 こうして藍染による平子の元恋人探しが始まったのだが、これがなかなか難航を極めた。

 まず、平子と仲の良いひよ里やリサ、白が口を割らない事、その次にプライドの高い藍染は仕事以外、しかも上司の下世話な話題を自分から振ることが出来ない。

 結局その後も平子の元恋人の情報を集めて見たが、これといった情報は得られないまま時は過ぎていった。


「いや、ホンマもう勘弁してくれ」

 平子は珍しく困っていた。

 いつも通り執務室で仕事をしており、報告書に目を通してサインをしていたところ、何を言う訳でもなく、ただじっとこちらを見つめてくる藍染に居心地の悪さを感じ、平子はちらりと視線を上げた。目が合うと藍染は無言のまま立ち上がり、平子のすぐ側まで歩み寄る。

「惣右介、俺今日呑みやから」

「知っています」

「せやったらええねん」

 ペンを置いた平子の手に、藍染の手が添えられる。平子は手を引こうとしたが許されなかった。

「業務を早めに終わらせないといけませんね…どなたとですか?」

「喜助とサシや。最近仲良うてな」

「……」

 藍染は目を細めた。

 浦原と平子は良く言えば隊長同士として打ち解け合っている。悪く言うなら馴れ合いすぎだ。男と女が二人きりで呑みに行くとなると、色々と想像してしまうではないか。

「あまり遅くならないようにしてください。隊長は酔っても自覚がないんですから」

「はいはい、わかっとるわ」

 注意を適当に受け流す平子の様子を見て、藍染は少し苛立った。

「本当にわかっていますか?いいですね?何かあったら天挺空羅を使って」

ここで先の言葉である。

「お前は俺の何やねん、惣右介」

 平子はまだ何か言いたげな藍染を置いてさっさと書類仕事を始めてしまった。藍染は手を離し小さくため息をつく。

(何を言っているんだ私は……)

 藍染は自分の席に戻り業務に集中しようと試みるが、上手く行かなかった。

 この日、藍染は珍しく定時で仕事を切り上げいつもより早く隊舎を出、研究場へと向かう。

(私には使命がある。平子真子に心を乱されている場合ではない)

 だが研究に没頭しても浦原喜助が脳裏にちらついて集中できない。

 気がつくと平子が飲みに行くと言っていた時刻から大分時間は経っていた。

 平子は帰ってきているだろうか。

 ふと、平子が浦原を誘い身体を重ねるところを想像した。

※ ※  ※   ※


 藍染は平子の部屋の戸にそっと手をかける。

 室内では平子と浦原が裸で抱き合っていた。

 二人は繋がったままの状態で平子は眠そうな表情を浮かべ、浦原の腕の中で身じろぎをし、浦原はこちらに背を向けた状態で動かない。

 藍染が浦原の背中に視線を向けると、肩甲骨辺りに赤い痕が見えた。きっとあれは平子がつけたものだ。

 藍染との夜はきつく布団を握りしめ、付けられたことのない平子からの所有痕。


※ ※  ※   ※

 全身の血が逆流するような感覚に襲われ眉間に深い皺を刻ませる。

「……くだらない」

 藍染は呟いて立ち上がった。

 隊首室の扉を開けるが平子の姿は無かった。

 まだ帰っていないのか、それとも。

 藍染は隊首室を出ると霊圧を探る。すると、平子の気配はすぐに見つかった。

 まだ二人で呑んでいるようだ。

 この姿のまま乱入すると浦原に警戒されるかもしれない。

「ー砕けろ 鏡花水月」

 


「平子サン。そろそろお開きにしましょう」

「なんや、もうちょっとええやん」

「ダメですよぉ、ボク明日も早いんデスから~」

「締め、締めに何か喰おうや」

 そんな会話をしながら浦原と平子は酒屋を出た。元々ザルな平子は酒に強い。それでも酒が入れば多少なりとも口が緩くなり、2人が思っていたよりも話は弾んでいた。

 平子の隣で千鳥足になっている浦原を見て、平子は苦笑する。

「しっかり歩かんかいっ」

 平子は浦原の腕を掴み、自分の肩へ回させた。そのまま引きずるように歩き出す。十二番隊の隊舎の方がここから近い。このまま連れていって、ひよ里の顔でも見て帰ろう。

 そう思った時だった。

 背後から伸びてきた手が腰を掴んで引き寄せ、平子の口から小さな悲鳴が漏れる。

 こんなことをするのは一人しかいない。振り返ると、そこには想像していた人間ではなく市丸ギンが立っていた。

 ギンは不満そうな表情を浮かべたまま平子を睨みつけている。

「コラァ!危ないやろっ!てギンやんけ。どないした?」

「楽しそうやね、平子隊長」

「お?なんや妬いとんか?もう少し大きぅなったら呑みに連れてったるからな?まァ楽しみにしとき」

「……そういう事やなくて」

「?」

「…エエですわ。浦原隊長もいい大人やし、平子隊長が送る必要ないでしょ。ボク腹減ってるから奢って下サイ平子隊長」

「ハアー?急に現れてしゃあない奴っちゃのう」

「…じゃ、ボクはこの辺で〜。市丸サン、平子隊長お返ししますね」

「またな喜助」

 平子は軽く手を振り、ギンを引き摺り始めた。

「何が喰いたいんやギン?まだまだ成長期やもんなァ」

「せやねぇ」

「俺のお薦めはな、焼き鳥屋やねんけどな」

「焼き鳥?なんや平子隊長にしては、意外と普通やね」

「ちゃいますーあそこの焼き鳥はめっさ美味いねんっ。一回食べとき。物足りんかったら他ン所連れてったるわ」

「ふうん…」

 市丸の姿をした藍染は、酔った平子に手を引かれ歩いている。

(平子真子は自分で任命した私よりも新入りの子どもを信頼しているのだな)

 藍染惣右介が往来で平子真子の手を握ったとして。例え酔っていても握り返されるとは思えない。私は一体何と戦っているのだろう。平子真子の元恋人を探し出してどうする。まるで子供の駄々ではないか。

 そんな思考が頭を支配する。

「ここやここや」

「エエ匂いする」

「早よ入って食うで」

 藍染は平子と共に店内に入り、適当な席に座った。

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