年下のカレシ
原作無視してます
ペンギンとワイヤーが出てこない
ローとキッドが仲良し注意
それは、ハートの海賊団の幹部とキッド海賊団の幹部が一夜の過ちを犯し、ようやく朝日をみたワノ国が危うく30億vs30億の戦場になりかけてから、数ヶ月後のこと。
たまたま同じ島に上陸した2つの海賊団の船長たちは、情報交換も兼ねて島の酒場で飲んでいた。しかし、経路が違うとはいえワノ国から出発して同じ島に上陸した2人に長々と交換するほどの情報量の差はない。精々互いに掴んだ情報の裏付けをする程度で終わり、あとはだらだらと飲むだけの時間。となれば、行き着く話題はもう決まっているようなものだった。
「ところでユースタス屋。あの変態網タイツ野郎はどこだ」
「相変わらず過保護だな、テメェ。アイツならペンギン帽子連れて宿に行ったぞ」
「ハァアアア!?まだこの島に着いて1日目だぞ早すぎる!!あんの変態野郎ペンギンのことをどう思ってんだ!!!都合の良いオモチャかなんかだと思ってねェか!!?」
そう耳元で叫ぶ声に耳を塞ぎ顔をしかめたキッドは、オモチャ扱いだったらこっちも楽だった、と内心毒づくも、表には出さずに酒を煽る。まだギャーギャー言い募るトラファルガーの気持ちは全くわからないでもないが、これでもキッドは面倒臭さと共に、ほんの少しだけ、嬉しさを感じていたのだ。だってそうだろう。
「…仕方ねェだろ。いつもフラフラしてた弟分に本命が出来たんだからよォ」
ピタリ、五月蝿かった声が止まる。それに、ついに寝落ちたかと隣を見たキッドは、驚愕に顔を歪ませるトラファルガーと目があった。
「………?なんだよ」
見開かれた目でジッと見つめられ、思わず眉尻が上がる。わなわなと震える唇が一度引き締められ、それからまた開かれる。
「……おい、ユースタス屋。その弟分ってのはどういう意味だ?可愛がってる部下って意味だよな?」
ひくひくと唇を引き攣らせたトラファルガーはどこか必死で、弟分という言葉に考えていたことが口に出ていたのかと思いつつ、その必死さの意味がわからない。だから、どこか薄気味悪いものを感じながら、キッドは素直に答えた。
「いや、年下って意味だが?」
そして、酒を煽る。
「最初はキラーぐらいの年かと思ってたんだが、聞いたらおれの1つ下だって言うじゃねェか。まさかと思ったが、ヒートもそうだって言うからな。おれたち4人の中で一番デカいアイツが一番年下なんざ…ハハッ!笑っちまったぜ」
ぐいとジョッキの中の酒を飲み干し、べろりと唇を舐める。やけに隣が静かだな、と横目で見ると、呆然として機械みたいに固まったトラファルガーがぶつぶつと呟いていた。
「ユースタス屋の1つ下…?ユースタス屋は23で…1つ下ってことは22……?22、22……。……………ベポ?」
「……トラファルガー?」
流石に隣にぶつぶつと呟く男がいると気持ち悪い。情報の交換という目的は果たされたし、なにやら思考回路が死んでいるらしいトラファルガーに支払いを押し付けてここを出ていこうかと腰を上げるのと、隣から奇声が上がったのは同時だった。
「はっ?なん………オイ!!」
その大音量に思わず体を固くしている内にトラファルガーは店を出ていく。自動的に押し付けられた支払いにチッと舌を打ち、渋々カウンターに2人分の金貨を置いた。
「あの野郎…今度会ったら倍はむしりとってやる……!!」
そもそも次に会えるかわからない、という事実には蓋をして、酒場を後にする。
だから、キッドは知らない。
奇声を上げながらポーラータング号に帰ってきたキャプテンがモフモフのNo.2に抱きついていることを。そして同時刻。宿屋で一戦終えたペンギンがワイヤーから「なんだかんだ年上だよな、アンタ」と言われ年齢を聞き、覚えなくてもいい罪悪感を抱いてしまうことを。
キッドは、知らない。