平子と藍染…宿命の再会!ゴールデン
【死神図鑑ゴールデン】「……………ニャァン?」
「ええ…そこは、『ニャンやと?』とツッコむところでしょう」
何故、ここで猫のような鳴き真似か。
先ほど唐突に犬の鳴き真似をした自分を棚に上げ、藍染は笑いを堪えきれずに吹き出してしまう。
平子はそんな藍染が気に入らなかったのか、唇を尖らせた。
「人の事雌猫呼ばわりしといて何やその言い種。惣右介お前、今日の晩飯猫鍋にしたろか」
平子は藍染を睨みつけながら呟く。
勿論、そんなことをする筈もないが。
しかし──。
藍染は困った表情を浮かべるだけで、慌てる素振りも見せない。
「あーっクッソ、顔がエエ奴は得やな。モテてモテて仕方ないもんな」
平子は身を乗り出し、藍染の頬を引っ張った。
そうされても尚、藍染は涼しい顔のままでいるので、平子はつまらなそうに手を離す。
藍染はつねられた頬を擦りながら、ため息をひとつ。
「……そういえば、タヌキの鳴き声って知っとるか?」
「聞いたことがありませんね」
「そやなァ……たぬー?」
「ぶふっ」
いきなり『たぬー』等と鳴き出した平子に、藍染は口元を手で隠し思いっきり吹いてしまった。
「その鳴き真似は違いますよ」
「やっぱり?」
平子はその言葉に首を傾げ、ほんの少し悩んだ末に鳴き声を変えた。
「ぽんぽこり〜ん」
「あはは……もう、お腹痛いです……」
藍染はクスクスと笑い続けているが、平子は自分の行動がそこまで面白いとは思わずに眉を顰める。
「もっと真面目にせぇや、お前の鳴き声考えたっとんのに」
「タヌキの鳴き声なんて真面目に考えた事、ありませんよ。そもそもタヌキだなんて隊長からしか言われませんし」
「ほれ、お前も何ぞ考えて言うてみィ」
藍染は肩を竦め、苦笑いを浮かべた。
「ニャアーン♪」
「やかましわ、それは猫や」
「働きたくないわァ惣右介やっといてェ」
「それ俺やんけ」
「違いますよインコです」
藍染は平子が先程挙げた鳴き声を真似し、おどけた様子で普段の平子のポーズを取ってみせる。そのふざけた姿に、今度は平子が吹き出した。
「お、じゃあインコの惣右介、俺の後に続いて話してみぃや、『すいませーん!』」
「話し掛けんといてェ」
「だから後に続けや…いや思ったより方言上手いなお前」
「伊達に何十年も隊長の副官ではありませんよ」
「タヌキの鳴き声も似合うって思わンか?」
「よく分かりません」
「何でそんなにタヌキ嫌がるねん。謎やわァコイツ」
結局平子が求める男の影が見えないまま、どうでもいい会話を続けること数分。こんな会話も二人にとっては心通わないただの世間話でしかない。
「休憩もこれ辺にして、書類に目ェ通さな……もう俺は今日動きたくあらへんわ。惣右介変わってくれや」
休憩は終わりのようだ。平子はやる気無さそうに机の書類に目を向ける。
「無理な事言わないでください、僕は隊長ほど権限は無いのですから」
藍染の返事を聞き、平子は眉間に皺を寄せる。
──コイツ、俺よりやる気あるのにヨォ此処で留まっとるな。見張るのには丁度エエけど。
藍染はニッコリと笑顔を浮かべた。
「『すいませーん』」