帰路
戦い終えて、朝が来た。空は水色、雲は真っ白。
「ようやく、終わったみたいだな……」
「そうだね、お兄様」
「ああ、ライスも助けてくれてありがとう……ぐっ」
「お兄様!」
疲労と傷から膝をつく飛羽真と、それを支えるライスシャワー。
そんな彼らに、やれやれといった様子で近づく男が一人――ユーリである。
「ボロボロじゃないか飛羽真。全く相変わらず無茶をする奴だ」
彼はそう言って、光剛剣最光を掲げる。
「光あれ!」
彼の声と共に、最光から飛羽真たちに光が浴びせられる。すると――
「……治っちゃった」
たちまちのうちに傷が回復したではないか。驚きを隠せないライスシャワー。
「魔弾戦士の方々」
そう言いながら剣二らへ近づいてきたのは、ソフィア――現闇黒剣月闇の所有者である。
禁書を抱え、彼女は告げる。
「この度はご協力ありがとうございました。さて……この禁書を収めれば、事件は終息です。その前に、何か伝えたいことがあればぜひ……」
その言葉に、魔弾戦士と魔弾龍たちは互いを見やる。
そう、この魔弾龍たちは禁書の中から漏れ出した存在――禁書の封印と共に消えてしまう定めなのだ。
「ザンリュウ……俺には今、家族がいる。子供もだ。お前にも見せてやりたい。だから……また会いに来てくれ」
「へへっ、お前が父親か……おう。俺だって見てみたいもんだぜ」
「ゴウリュウガン、今でも俺が愛するのはお前だけだ……」
「再び出会える確率……計算不能。だが私がまた会いたいと思う気持ちは……100%」
「いろいろ言いたいことはあるが……これだけ言わせてくれ。あの時言えなかった言葉を……」
ゲキリュウケンは一度黙ると、言葉を溜め――言った。
「また会おう。鳴神剣二。私のかけがえのない相棒よ」
「おう!必ずだぜ!」
魔弾龍たちは光となり、禁書の中へと消えてゆく。同時にライスシャワーの手元からも、蒼炎剣漆蒼も消滅。
それを見送った戦士たち。暫しの静寂が訪れ――彼らもまた帰路へとつき始めた。
「よしっ、今日も頑張るぞ……っ!」
そして数日後、トレセン学園寮。ライスシャワーはいつものように、トレーニングへと向かおうとしていた。
彼女は自身の机を見やり、ほほ笑む。
そこにはブルーローズペガサスワンダーライドブックと、絵筆が飾られていた――
とある場所。一人の男が、白いコートをなびかせ歩いていた。
「おい」
彼が身に着けた髑髏のような指輪が語り掛ける。
「なんだ」
「あいつに伝えておくことはあるか?」
「……ない。俺の思いは、十分に伝わっている」
「ふふ、お前さんらしい答えだ。なら、俺様から一言。……ゴンザもそろそろ年だ。早いとこ戻って来るんだな……鋼牙」
「ああ。必ず戻る。信じて待ってろ……ザルバ」
そう言いながら、彼は光の中へと消えていった――