うたかたの?

うたかたの?


「晴信、好きです。抱いてください」

衝撃的なセリフと共に、長尾景虎が俺の胸に身を寄せる。

それは柔らかくて温かくて、毘沙門天の化身など呼ばれていても、人の身と何ら違いはなかった。

「本気か」

耳元に口を寄せ、囁く。

景虎は、くすぐったそうに身をよじった。

「冗談で言うもんですか。ねぇ、晴信。ダメですか?」

上目遣いに見上げてくる眼は、「女」の媚びはない。あくまでいつもの景虎だった。これは、本気だ。

応答の代わりに、瞼へ口付けを落とし、抱き上げる。軽いその身体は、簡単に持ち上がって、ベッドに転がされた。

「泣くなよ」

「晴信が優しくしてくれればいいんですよ。女たらしのあなたと違って、こちとら未通娘なんですから、手加減してくださいね?」

「分かってる」

そう言ったものの、すでに猛りはじめている逸物を考えれば、実行可能かは未知数だ。それでも。

「優しくする」

そう言って口付ければ、景虎は、今まで見たことのない顔で、微笑んだ。

「私、キスも初めてです」

「だろうな」

「晴信は手慣れてますね」

「そりゃそうだろ」

俺の愛を乞う女は、それこそ掃いて捨てるほどいた。だが、景虎は、そういう凡百の女とは違う。

「安心しろ。ちゃんとヨクしてやる」

先程より深く口付けて、その間に景虎の胸のファスナーを下ろす。

「ん……っ」

景虎が、鼻にかかったような声を上げた。

ぷるんっとまろびでた乳房は、大きさこそないが、その形の美しさと肌の白さは眼を見張るものだった。桜色の乳首も小さく可憐で、思わず口に含みたくなるが、我慢する。

ゆっくり、ゆっくりだ。

時間をかけて全身を愛撫して、男を知らない肌を俺に染め上げてやらなくてはならない。

俺もシャツを脱ぐ。

裸の胸をぴたりと合わせて華奢な身体をすっぽり抱き込んで、ねっとり口付ける。

「ん、ふっ」

「声、我慢するな。聞かせろ」

「恥ずかしいですもん」

「これからもっと恥ずかしいことするんだぞ?」

「……そうでした」

景虎は、ふっと息を吐くと、俺の背中に腕を回してきた。

「好きですよ、晴信。愛してます」

「俺もだ……愛してるよ、景虎」

言葉を交わしながらキスを繰り返すうちに、景虎の緊張がほぐれていくのが分かる。俺は唇を滑らせて首筋へ吸い付き、痕を残した。白い肌に赤い花が咲く。

「あ……」

小さく声を上げる景虎に構わず、鎖骨へも痕をつける。

「晴信の赤ですね」

「おまえの処女地を耕すのは俺だと分かりやすいだろ」

「私が晴信に征服されちゃうんです?」

「そうだ。おまえはもう、俺のものだ」

「ふふ。ここなら、そんなことがあってもいいですね」

景虎の腕が、ぎゅっとしがみついてくる。俺はそれに応えてやりながら、乳房に触れた。ちょうど俺の手に合うそれは俺の手の中で自在に形を変える。乳首は淡い桜色で、まだ誰にも触れられていない証のように感じられた。指先で弾くと、景虎がぴくんと震える。

「やんっ」

可愛らしい反応に気を良くして何度も繰り返すうち、次第に芯を持ち始めたようだ。ぷっくり立ち上がったそれを口に含み、軽く歯を立てる。

「にゃうっ!?」

ビクンッと身体を震わせる景虎。だが、嫌がっているわけではない。舌で転がせば、ぴくぴくと全身で感じている。イイ反応だ。

「晴信……なんか、変です」

「どこがどう変なんだ?」

「お腹の奥がきゅうってなって……切ない感じがします」

それは女として身体が目覚めつつある証だ。俺はさらに愛撫を続けた。乳房を揉みしだき、乳首を強く吸う。もう片方は指で摘まんで引っ張り上げると、景虎は切なげに声を上げた。

「ああっ!だめっ!」

構わず攻め続けるうちに、景虎の声に甘さが増してくるのが分かる。乳首はすっかり硬くなり、ピンと張り詰めていた。

「晴信……晴信……」

俺の名を呼びながら、景虎がもじもじと太ももを擦り合わせている。感じている証拠だ。

「どうした?」

「あの……私、変です。腹の奥が熱くて……むず痒いっていうか……」

もじもじと太ももをすり合わせる景虎。俺は思わず笑みをもらす。

「やっぱり私、おかしいんですか?」

「いいや、可愛いよ」

言えば真っ赤になる。ああ、本当に可愛らしい。

「だが、ソコはまだ後でな」

代わりに太腿を撫で上げて、腹に口付ける。ここにもしっかりキスマークは残しておく。

「や、くすぐったぃ……」

「我慢しろ」

腰骨に歯を立て、太腿の内側に強く吸い付く。白い肌に赤い花が咲く様はなんとも淫靡だ。

膝の裏を撫でて、太腿を舐めて、肝心なところ以外を可愛がれば、無意識にか腰をくねらせる。

ホットパンツの部分が色を変えているから、触ればもうぐちゃぐちゃだろう。

まだまだ。自分から触ってほしいとねだるまで、焦らしてやる。

ぐいっと足を曲げ、足指を口に含む。「やぁっ!?」

驚いた声を上げるが、嫌がってはいない。俺は構わず指の間も丹念に舐めていく。蒸れた匂いが鼻をくすぐるが、不快なものではない。むしろ興奮する。

「晴信……汚いですよぅ……」

泣きそうな声で訴える景虎だが、本気で嫌がっているなら蹴っ飛ばすはずなので、無視する。

一本一本丁寧にしゃぶってやれば、その度にぴくんっと反応するのが可愛らしい。

もう片方の手で太腿の皮膚の薄いところを刺激すれば、こちらはこちらで感じるらしい。

「晴信……晴信……」

俺の名を呼びながら、景虎は腰を浮かせて快楽から逃れようとするが、俺はそれを許さない。しっかりと押さえつけたまま愛撫を続けると、やがて景虎の腰が小刻みに震え始めた。絶頂が近いのだろう。

だが、まだイカせてやらない。

太腿から手を離すと、ほっとしたような残念そうな顔をするのがたまらない。

「どこか触ってほしいところはあるか?」

優しく、優しく、問いかける。

答えなくてはいけないと思わせるように。

景虎は、困ったように目を泳がせた。

「ほら、言ってみろ」

「あの……えっと……」

もじもじと内股を擦り合わせる景虎。俺は辛抱強く待つ。やがて、蚊の鳴くような声で呟いた。

「その……あそこが……」

「あそこじゃ分からんな」

わざと意地悪く言ってやる。景虎は耳まで真っ赤にして俯いてしまった。それでも俺が動かないでいると、観念したのか小さな声で言う。

「……お股です」

ああ、たまらない。

俺は思わず笑みを浮かべた。恥じらいながらも求めてくる姿は実にそそるものがある。今すぐ脱がせて突っ込みたいが、我慢だ我慢。

ホットパンツのファスナーを下ろし、中に手を差し込む。

「晴信……んっ」

下着の上からでも分かるほど湿った感触があった。布越しに割れ目をなぞると、景虎が息を詰まらせる。構わず何度も往復させているうちに、どんどんぬるぬるが出てくるのが分かった。

「にゃうっ♡ 晴信っ!ダメですぅ」

顔を真っ赤にして叫ぶ景虎だったが、身体は正直だ。俺の手の動きにしっかり反応している。

「景虎」

耳元で名前を呼んで、キスをすれば、さらにじゅんっと濡れそぼつ。

「晴信……なんか、変です」

「どこが?」

「……お股の奥が切ないんです。何か欲しくてたまらないんです」

今にも泣き出しそうな顔で訴えてくる景虎に、俺は優しく微笑みかける。

「大丈夫だ。気持ちよくなってる証拠だ。これからもっと気持ちよくしてやるからな」

俺はホットパンツごと下着を剥ぎ取り、直接そこに触れた。

熱くぬめった粘膜に指を這わせれば、景虎は足をピンと張り詰めさせて、切羽詰まったように鳴く。

「にゃ、やぁん♡♡♡晴信、これすごいぃ♡♡♡」

「気持ちいいか?」

「はいぃ♡♡♡ あたまのなかぽわぽわしてぇ……きもちいいれすぅ♡♡♡」

呂律が回っていない。それほど感じているならば、遠慮はいらないだろう。

「行くぞ」

俺は、自身の先端をあてがいぐちゅぐちゅのソコを貫くーー

***

「晴信っ!!」

ばーんとドアを押し開ける音と、いつもの通りの景虎の声で俺は目を覚ました。


は?夢?

仁王立ちの景虎は、いつもの服をちゃんと着ている。脱がせてないし、蕩けてない。

「……はあ?」

夢。つまり夢。邪念。妄想。欲望。

俺もちゃんと下をはいているし、どう考えても完全無欠に夢だった。

「嘘だろ」

頭を抱える。

俺が、よりによって景虎に劣情を抱くとか、信じたくない。嘘だろう。嘘だと言ってくれ。

しかし、これだけはしっかり夢のまま、ガチガチにいきり勃ったマラは無視しようとしてもできない存在感だった。

「く、誰か殺してくれ。なんなら切腹するから介錯してくれ」

「いいですよ!シミュレーターに行きましょう!」

にこにこと肯定する景虎に更に頭を抱える。

「嫌だ」

というか無理だ。

一度欲を吐き出さなくては何もできない。

「そんな我儘言わずに行きますよ」

つかつかと景虎が寄ってきて、俺の腹の上にダイブした。

「やめろ!」

切実に叫んだが、通じない。

朝から何の地獄だ、これは。

生々しい女の匂いから柔らかい肌から、主張の激しい欲望に気付かれないよう逃げるという最高難易度のミッションが今、開始された。


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