巡る因果の終着点

巡る因果の終着点




 「…………アリスさんっっ!!」

『アリスキラー』と名乗るそれの鈎爪を受け止めたアリスさんの体中に、亀裂が走る。───それは、今まで奇跡を紡ぐように維持し続けてきた彼女の体が、遂に『限界』に来たことを表していた。

「……っぐ………ぁ………」

「!アリスさん!!」

彼女が力無く倒れ込むのを素早く抱え込み、相手から距離をとって、そのまま逃げる。機械達の乱戦の中を突っ切る。とにかく、逃げなければ。そう思いながら、振り返ると───

ヒュン、ヒュンヒュン。

「……!まずい……」

奴らは、私が進んだ道筋に沿って、ぴったりとこちらに付いてきていた。振り切るどころか、距離が徐々に縮まってくる。

唐突に訪れてしまった彼女の『終わり』と、這い寄る二つの死の影。


 ───どうする。早くアリスさんを何とかしないと。私のせいで、彼女が。

「………ぶ、……だよ……」

いや、それどころじゃない。奴らが迫ってきている。このままじゃ壊される。……どうすれば───

「だいじょうぶ、だよ……ミク……ちゃん……」

抱きかかえている腕の中から、声がして。その瞬間。……瞬間、だけだが。思考と視界がクリアになった。

───そして、周囲の争っている機械の中に、閃光弾を携帯している個体がいることに気が付いた。

作動するかは分からないが……賭けるしかない。

「……アリスさん、目を瞑って!」

そうして、そのまま突っ込んで閃光弾を奪い取り、すぐ後ろにいる奴らの顔の真正面に掲げる。

───戦場に、一筋の閃光が走った。



 すぐさまに機械の群れに紛れ、更に距離をとる。

……そこで、運が良いのか、悪いのかは分からないが。身を隠せそうな洞窟を見つけた。すぐに忍び込んで、彼女の体をそっと寝かせる。

あくまで一時的な状況だ。再び奴らが私たちを補足するのも、時間の問題だろう。

────だが、そんなことより……


 「………アリス、さん………」

彼女の体に入ったヒビが、より深く、広くなっている。……もう、体をまともに動かすことさえできないようだ。……『直せない』。今まで傷一つつかなかったぶん、このまま彼女の体は機械の破片すら残らず粉々になる。そう悟ってしまった。

───今までの思い出が。あなたと出会ったあの日が。差し伸べてくれたあの手が。一緒に遊んだあの日々が。いつも見せてくれた笑顔が。彼女の体とともに、ぱきぱきと音を立ててひび割れていく。

なのに、アリスさんはいつものように笑って言った。


「えへへ……ごめん。ミスっちゃった、ね……」

「……っ。違います。私の、せいです……」

全力を尽くそうと決めたのに。一緒に出ようと約束したのに。私はできなかった。

私があなたの体のことに、早く気付けなかったから。私が大清掃を早めたから。私が守れなかったから。……私が、間違えたから。

 

「ごめんなさい……ごめん、なさい……」

彼女に、謝ることしかできなかった。目元の洗浄ノズルが作動して止まらず、溢れ出てくる。彼女が、辛うじて動く手で、私の頬を撫でる。


 「……違うよ。だれも、なにも、間違ってなんか、ないよ。……ただ、私はこうなるって、決まってただけ。もちろん、諦めるつもりは、無かったけど……」

そんなこと言わないで。私はあなたを───

「───前に、言ったよね。私はひとつも後悔してない、って。今だってそうだよ。一緒に出るために、いっぱい楽しく準備して、頑張って。

ううん。それだけじゃない。色んな経験を、ミクちゃんとたくさんできた。もともと『偽物』として生まれた私が───『本物』のあなたに会えて。一緒に生きてきて。そして守れて、死ぬんだったら、きっとそれ以上に素敵なことなんて、ないよ。私は幸せに生きることができた。それは、ぜったいミクちゃんのおかげ」

───ああ。『その顔』だ。いつもあなたは、その顔をして……

「───だから、私のことは、置いていって。きっとあなただけなら、逃げ切れる。私の分まで……笑って、生きて、ね?」

「…………!!」


 その寂しそうな笑顔を見て。やっと、私は伝えたい言葉を見つけて───いや。見つけていた言葉を、言う覚悟ができた。あなたにずっと伝えたかった想い。あまりにも遅いかもしれないけれど───

「……ミク、ちゃん?それって……」

アリスさんが、私の頭の『少し上』を見上げる。……だけど、もうそんなことを気にしていられない。溢れ出る感情が抑えられなかった。

「ウソ、つかないでください」

「……っ」

「後悔してないって言うけれど。素敵なことって言うけれど。死にたくなんか、ないんですよね?」

「……でも、私は、あなたを……守りたくて───」

「なんでいつもそうなんですか!私を自己犠牲で守ろうとするんですか!私だってあなたを守りたい!あなたとずっと一緒にいたい!」

「……でも、あなたは『本物』だから……!」

「『本物』も『偽物』もありません!」

彼女の体を優しく抱きしめて、大声で想いをぶつける。一番伝えたかった、この想いを。


 「あなたはいつだって私の手を引いてくれて。いつも笑いかけてくれて。いつも隣に居てくれて。あなたがいたから、私は生きていられた。あなたがいるから、生きたいと思った!この想いに、関係に、『偽物』なんてないんです!どれもこれも全部。私もアリスさんも!『本物』なんです!」

「……ミク、ちゃん」

 

「だから、これからもずっと一緒に居てください!置いていって、だなんて、言わないでください。……居なくならないでください。………じゃないと………いや、…ですよ………『アリスちゃん』…………」

そう感情を出しきって、彼女に泣き付く。それを聞いて、アリスちゃんは───


 

 「……ふふ、そっかぁ。私も『本物』、かぁ……」

何かを理解したような、安心したような穏やかな顔をして───僅かに動く手で抱き返してくれた。

「ありがとう、ミクちゃん。私、ウソついてた」

「……アリスちゃん……」

「このまま死んでも、ちっとも幸せじゃなかった。もっと、ミクちゃんと生きたかった、って、思ってた。

───でも、あなたも私とずっと一緒にいたいって、言ってくれて。あなたが『本物』だって認めてくれて。私、いま、とっても『幸せ』だよ」


 そう涙を浮かべながらも、笑顔を見せてくれるアリスちゃんの『頭の上』に、『神秘的な光を放つ輪』が浮かんできて……『浮き出た途端から、崩れ始めていた』。

「……アリスちゃん……それは……」

「……えへへ……『ミクちゃんにも』、できてるよ?」

彼女は変わらない笑顔で、私に言ってくれる。……でも、彼女のものが崩れ始めているということは……やはり、もう……


 そう考えていたとき。アリスちゃんは、覚悟を決めたような……でも、変わらず優しい表情のまま、私に話し始めた。

「……ねぇ、ミクちゃん」

「……なんですか、アリスちゃん」

「……実はね。一つだけ、あるの。私が居なくならずに済んで、ミクちゃんと一緒にいられる方法が。今まで成功例も、やろうとした人もいなかった、『最後の手段』だけど……今なら、うまく出来る気がするの」

……そこまで言えば、もう、お互いに悩む必要は無かった。

「……はい。お願いします。あなたと生きられるなら、何だってします。……それに、きっと上手くいくって『信じて』ますから」

「……うん。ありがとう!」

そう言って、互いに微笑む。


 「……それじゃあ、始めるね」

「……はい」

そう言って、アリスちゃんは辛うじて動く両腕を、私に伸ばしてきた。彼女がやりやすいよう、体を彼女に委ねる。片方の腕は、胸元のメインジェネレーターに目がけて。もう片方の腕は、頭のメインAIチップに目がけて。

「……ありがとう、ミクちゃん。それじゃあ───」

───『体、ちょっともらうね?』

───『……はい、いくらでもどうぞ。』



─────────────────────


───からん、からんと、音がする。

からん、からんと、木霊する。

贈り物が放つその音は。絆の証の、その音は。

途切れた因果を、また結び、

分かたれた心を、一つに結ぶ、

まさに『共鳴り』の、音と成る。

  【共鳴り】

 ── 結 ── ②


─────────────────────



 ───私は、淡い光の差し込むほら穴の中で、再起動された。

「……なんだか、懐かしい気分ですね」

「……お?良かった!上手くいったみたいだね!」

いつも通りの、明るい声。アリスちゃんが話しかけてくれた。……だが、肝心の姿が見えない。

「あー……体の方は、勢いよくバリバリーッ!っていっちゃって……ダメだったね」

周りには、私の所持物だけでなく、アリスちゃんの服と、持ち物と、武器の砲身が置かれていた。本人の姿だけがない。

───そして、それ以上に気になったのは。


 「……アリスちゃん、私の体から話してますよね?」

「お、気付いた?」

私の口が勝手に動いて、そこから彼女の声が出てくる。

「……『最後の手段』って……もしかしなくても、そういうことですか」

「……そういうことだね。ミクちゃんに私のデータを全部突っ込んじゃいました!」

相変わらずとんでもないことするな、この人。───でも、その割には……

「思考プロセスや身体動作にバグみたいなのは、無さそうですね」


 量産型アリスのスペックがどれだけ高かろうが、結局それを動かす機能は1人分だけ。これは生き物だってそうだろう。1人分の機能で、2人分の情報量を処理しきれるわけがない。

その結果、複数人の情報が1人分にまで省略、統合される。───その結果、複数人の意識が混ざった『1人』になる。あるいは、どちらか一方がもう一方を完全に『書き換えて』しまう。

実際、一つのアリスの機体に別のアリスのデータを入れられた結果、『そういった』結果を招いた、という事例も、データベースにも記録されている。

───だが、今の『私たち』は。


 「……完全に、独立して処理できてますね?」

2人分のデータを、私一つの体で制御しきれている。私が不思議に感じていると、アリスちゃんが話を始める。

「ふっふっふっ、私はかつて『完璧』と呼ばれたアリスちゃんだよ?やり方なんていくらでも思いつくのです!」

「……何をしたら、こんなことが?」

「んー……ざっくり説明するとねー……

複数の人格が処理しきれないのは、普通にデータを送ろうとしちゃうと、AIチップだけにしかデータを送り込めないから、AIプログラムそのものが処理落ちしちゃう、っていう側面が大きいんだ。

だから、メインジェネレーターを『補強』して、2人分のデータを扱えるようにして、全身がちゃんと情報を処理できるようにしたの!おまけにAIチップも『補強』したから、お互いの人格を独立して保存できるようになった、ってこと!」

「……なるほど?……肝心の『補強』はどうやったんですか?」

「……聞きたい?」

「聞きたい」

「そりゃあ、ミクちゃんのAIチップとジェネレーターに、私のAIチップだの感情プロセスを司るパーツだのをいくつか……カチャカチャッと組み込んで……」

「……どうやったら、瀕死の状態でそれができるんです?」

「……私のパーツ、取り外しが簡単で、一部が欠けててもある程度機能するらしくて……内部構造まで『完璧』だったんだよ。すごいでしょ?」

……すごいというか、ほぼ反則というか。裏社会の人々が正気を失って、彼女を求めて奪い合った理由が、なんとなく理解できてしまった。

「うーん…まあ、アリスちゃんだからできたことですね……言葉が出てこないぐらいには、すごいです」

「ふふーん、そうでしょそうでしょ!」

彼女は自信たっぷりに答えた。


 「……あ、でも、それだけじゃ危なかったかも…ほんとに私たちの体が無事だったのは、『この体』のおかげかもね?」

「……やっぱり、そうですか。気の所為じゃなかったんですね……」

───明らかに。私の体が、幼さのあった小柄なものから、14~15歳辺りの少女の体に『成長』していた。おそらく、扱えるデータの容量も増えているだろう。

「……完璧な機械は、機械の体を成長させることもできるんですか?いよいよ、宇宙の法則が危なくなってきますけど……」

「いやいや!流石にやってないし、できないよ!……たぶん、『これ』のおかげじゃないかなー、って思ってるんだけどね」

と言って、彼女は私たちの頭上を指差した。

「……やはり、これは……」

「……うん、『ヘイロー』ってやつだよね?」

頭上にそれぞれ別々に、2つの輪が柔らかな光を放っていた。……片方は、間違いなくアリスちゃんに宿りかけていたヘイローだ。……ということは、もう一つは……

「ミクちゃんのヘイローだ!」

「……2人分の人格が共存している、というのも、やはり間違いなさそうですね」

「……うん。私たち、どっちも『本物』だね!」

……とはいえ、ヘイローが後天的に、しかも2つ付与されるのは、本来ありえないこと。同じくヘイローを持った『お姉様』や『妹たち』もいることは知っているが……私たちの身に何が起きているのか、疑問を抑えられない気持ちでいっぱいだった。

───しかし、今は。

「……そろそろ、現状の整理をした方がいいですね」

「……あ、そうだったね!」


 「……確か、『アリスキラー』とかいうアリスに追われてたと思うんですけど……」

「えーっとね……あの後、ミクちゃんが機体に負担がかかりすぎたみたいで、強制スリープしちゃったの。でも私は起きてたから、全力で逃げてきたよ!だから、今も全然見つかる可能性はあるね!」

「……「ミクちゃんだけなら逃げ切れる」、っていうのは、てっきりおとりになる隙に逃げ切って、っていう意味で言ったと思ってたんですけど……一人で逃げられるものなんですね?」

「……まあ、データを入れ終わったら速攻で逃げてきたからね。私の体っていう足枷も無くなったし。さすがに戦いにはいかなかったよ?2対1だし、慣れてない体だから……」

「……うーん…いや、無事なのが一番です」

とりあえず、急を要する事態ではなさそうだ。


 「……これから、どうするの?」

「……どうする、とは?」

「いや、あまりにも色んなことがありすぎたから、ちょっと自信なくなっちゃって……」

「……いや、それが普通ですよ」

危機や奇跡が幾重にも重なった現状。私たちはそれに、あまりにもいいように振り回されすぎたが……

もう、『あなたは一緒に居てくれる』。喪うのを恐れる必要がない。

「……だから、やることは単純になりましたね」

「……うん!そうだよね!」

私たちが『大清掃』に立ち向かう、もう一つの目標。

「作戦続行です、アリスちゃん。絶対に、『この雪山から出ましょう』!」

「もちろん!今度こそ腕の見せどころだね!」


 未だ火花と銃声が止まず、機械音がひしめく雪原の中。私たちは、立ち塞がる敵対存在を蹴散らしつつ、戦場を駆け抜けていた。

左手に私の鉈を。右手にアリスちゃんの銃を持ち。間合いに入れば相手を殴り飛ばし、距離をとって隙を見せたときは、銃で相手を射抜く。……とはいっても、ほとんどはアリスちゃんが私の思考や行動に合わせて、体をうまく動かしてくれる。体の主導権がお互いにあるため、難しくなると思っていたが……既に彼女は私の体に慣れていた。

……それに、心当たりがありすぎて何の影響かは分からないが……まるで自分のことかのように、彼女の思考や行動が、私と重なるときがある。それらのおかげで、戦闘に不自由などころか───むしろ戦いやすくなっているのを感じた。

また、それに加えて───


 「……そこですね」

ぶんっ。……バゴォッ!グシャァ!!

牽制のつもりで振った鉈が。暴走した警護ロボットの体を、頑丈な盾ごと打ち砕いた。

「……………」

「……わーお。私も身にしみて感じてるけど、すごいパワーだよね?」

「……私も引いてます。早めに慣れないといつか大変なことしちゃいますね、これ……」

ヘイローがもたらした、前までとは文字通り次元の違う身体能力。私たちはそれに興奮……よりも、不安が勝った。当分の間は力加減を学ぶ必要がありそうだ。

「でも今なら、さっきの物騒な名前してた子たちもボコボコだよ!」

「……慢心はよくないですよ、その手のプロなのは間違いないんですから。会わずに逃げ切って、力尽きてもらうのが一番です」

「……うん。もしもの話だよ、大丈夫!」

……目を輝かせているのが見なくても分かる。強敵や困難に嬉々として突っ込むのも彼女らしいが……少なくとも今やるべきではない。我慢しておいてもらおう。

「……それよりも、まだまだ持久戦が続くと思います。行けそうですか?」

「もっちろん!元気いっぱいだし、ミクちゃんもいるからね!」


 ───そうして、幾度か、機械の群れとの狂宴を凌ぎ。『そのとき』が来た。……それも、驚くべき形で。


 「……まだ、こんな集団が残ってたなんて……」

「……せめて、ここで終わらせてあげましょう。この子たちのためにも」

私たちの目の前には、歪な武装をした、アリスの形をしていたと思われる機械の群れがいた。───しかし、その背後には、もう機械の群れは無く。ただ、スクラップの山があるだけだった。

「ついに打ち止め、ってやつかな?」

「……ええ。『アリスキラー』ほどの戦闘力はないでしょうが、この数の多さは脅威的です。最後に、もうひと踏ん張りといきましょう」

「あいよー!」

声にならない慟哭と共に襲ってくる相手に、戦闘の構えをとる。


 ───そのとき。

───タンッ、タンッ、タンッ。

「……!なに!?」

軽い銃声が、辺りに数回響いた。───いや、それより、驚くべきなのは───

「……え?」

タンッ、タンッ、タンッ、タンッ。

その射撃が、狙いすましたかのように。相手たちの頭や胸といった弱点を、次々と貫いていく。

私たちが状況を把握しきる前に、私以外の全ての機械が。形をなるべく残しつつ、しかし確実に仕留められていた。


 「……良かった、間に合った。大丈夫?ケガはしてない?」

後ろから、声が聞こえる。今の銃撃の主であり、私たちを助けてくれたのだと、直感的に理解する。振り向いて、『私たち』は答える。

「はい、ありがとうございます!おかげで助かりました!すごい腕前ですね、何かそういう───」

「アリスちゃん、急に一方的に話しかけるのは……」

「……あ、そうだね。ごめんなさい!」

「……私からもお礼を言わせてください。助けていただいて、ありがとうございます。」

そんな会話を一通り聞いた、声の主。白い髪と肌に、青い羽織を着こなした、左手で銃を抱える、ヘイローを持った女性は……

「……えっと……2人、いるの?………??」

と、完全に困惑してしまった。しまった、そりゃそうなる。アリスちゃん以外と会話することが全くないので、配慮ができなかった。

「……あ、えーっと……んーと…『私たち』、ちょっと訳アリで……」

アリスちゃんが何とか話そうとしたとき、彼女ははっと気付いて口を開いた。

「……あ、なんとなく分かったよ。あなたたち、『アリス』だよね?……なるほど、『アリス』と話をするのは初めてだけど……いつも見かけるのとは色々違うみたいだね……ヘイローも持ってるし」

と、彼女は私たちの頬をつんつんつついた。落ち着いた声で話しかけてくるが、行動の節々からマイペースさを感じる。とりあえず敵意はないと分かったので、私は提案した。

「……えっと…とりあえず、少しの間でいいので、お話しませんか?このままだとお互い、色々整理ができなさそうなので……」

「……あ、そうだね。ごめん」

そう言うと、彼女は改めて私たちの前に立った。

 

「自己紹介がまだだったね。私は、『御稜ナグサ』。百鬼夜行連合学院の、百花繚乱紛争調停委員会、委員長だよ」




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