届かない思い

届かない思い

鳥籠


アリスは荒野の中を走っていた。ベアトリーチェの命令でアリウス生との模擬戦を行っていたからだ。いや、模擬戦というには戦力差は大きく離れていた。一回の戦闘でアリスは1人で10人を超えるグループと戦わされていた。それを1日で何度も繰り返される。アンドロイドであるアリスは体力も傷もすぐに癒えるが心はそうでもない。繰り返される戦闘で生じる痛みはアリスの心を弱らせる。これは『訓練』ではなくベアトリーチェの命令に従わないアリスへの『罰』だった

今回の戦闘で数の暴力による銃弾を身体中に浴びたアリスは距離をとっていた。撃たれた箇所が痛む。傷は治っても痛みは記憶として残る

(それでも、アリスは負けません。ベアトリーチェの命令に従いません!)

そんな覚悟を持つ彼女の目の前に手榴弾が投げ込まれる

(しまっ——)

爆発の直前、何者かに服を引っ張られる。そして爆発した

「当たったか?」

「…いや、いない。あっちに逃げたか?」

様子を確認しにきたアリウス生達の声が離れていく。アリスは潜めていた息を吐く。助けてくれた相手にお礼を言おうと見ると…モモイだった

「モモイ!」

アリスの顔がパアッと明るくなる。しかし、モモイの方は怒っていた

「私、あなたに大人しくしててと言ったじゃん!どうしてマダムに逆らうような事をしてるの!?」

怒られたアリスは泣きそうになる。そんなアリスを見てモモイはため息を吐いた

「ハァ、もういいよ。今回のでマダムに逆らうのはやめた方がいいってわかったでしょ。私も助けるのは今回だけだから」

「アリスはベアトリーチェの命令には従いませ「やめなよ"AL-1S“……ッ?!」

AL-1S、そう呼ばれたアリスはショックを受けるが、モモイは構わず続ける

「別世界から来てても関係ないよ。ここのあなたはAL-1Sなんだから。…サオリさんの事知ってるでしょ。例え命令に従ってても行動に不備があったら罰を受けるんだよ。このままアリスが命令に逆らって罰を受け続ける姿はこれ以上見たくない。逆らう事に意味なんてないんだよ。…全ては虚しいのだから」

そう言って、モモイはこちらを見ずに去っていく。全ては虚しい。そんな言葉をモモイが言う事が悲しくて、アリスは涙が止まらなかった

「例えそうだとしても…それでもアリスはモモイに笑って欲しいんです」

アリスは居なくなった背中に向けて言う。彼女の言葉はモモイには届かない。しかし、アリスの言葉を静かに聞いていた者が2人いた




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