少佐の形をしたナニカと本丸の一方通行な攻防

少佐の形をしたナニカと本丸の一方通行な攻防

少佐(中の人)


 ソレが本丸の門を潜った瞬間から本丸の誰もが気付き、そして即座に警戒体制に入った。


自分達とは違う神の赤子。

ソレは静かに滴る様に嵐の様に湿った音と共に現界した。


この時点で攻撃しなかったのは自分達とは異なる神に対する警戒か、神とはいえ赤子、穏便に運びたかったのか自分達でもわからない。


しかしソレの目的は本丸に入った時点で完了してしまっている事は百戦錬磨故のカンで感じていた。


軟体からヒトの形をとったソレはヒトの形をとってから何もその瞳に映していなかった。


目の前の自分達にも本丸にも自分達の何よりも大事な主人たちにも興味がなかった。


これでは逆にどう対応したものかーー?


敵意もない赤子に手をかけるか?

然りとて味方となりそうにもない。

ただそこに在るだけの神の赤子をどうするか…途方に暮れる他にできる事はなかった。




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『好きにすればいいだろう…』


目の前の惨状と共に少佐と呼ばれる青年は溜息をついた。

意図せず聞いてしまった。准尉の過去にまともに対応できていない隊員達にそんなになる程か?と考えてしまう。


准尉自身や周辺調査などは入隊する前に済ませてあるし、そこからどうなるか等准尉の問題であって自分達の問題ではないだろうに…研究結果だって珍しくもなかった。これだったらベガパンク辺りの実験台に紛れた方が実がある。


准尉自身もしばらくは動かすのは得策ではない。大尉達を潜入に行かせようとしたらロシナンテさんが怒るから行かせられない。

これでは今まで通り自分の仕事が変わらない事になるがため息一つついただけで悲壮も怒りもない。



大尉と言えば彼女の愛槍が妙な気配を察知して気紛れで分身とも呼べない小さいモノをつけて探らせたが、思った以上に事が大きい様だ。



だが、それだけだ。


彼女が本丸の門を潜った時にはもう本丸も政府もどう在るのかまでもソレは調べ終わってしまった。


感想は特にない。

元より気紛れ、それ以上に青年は興味がないのだ。


彼等の事も、

目の前の人間達も、

世界の事も

自身の事も


何一つ興味がない。


故に本丸に残っているソレももうどうでもいい。嬲るなり試すなり飼うなり片付けるなり辱めるなり無視するなり本丸の連中の好きにすれば良いのだ。




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