小説家は劇作家になり、脚本を書く
「……」カキカキ……
「……」チラッ(劇作家……脚本家として歩むことに決めたのですね。あのクリスマスからト書き等の戯曲の書き方を教えましたが、ここまで熱中するとは……)
「……どうしたんですか?」
「!……すいません。邪魔してしまいましたね」
「そういうこった!」
「大丈夫です。キリが良かったので。……ゴルコンダ先生、デカルコマニー先生。今まで秘密にしてましたけど、話すことが。実はあの後、あの劇団の方から脚本を依頼されまして……」
「えっ……本当ですか?!……ちょっと待ってください」
prrr……prrr……
《もしもし?どうしたんです?ゴルコンダ先生?》
《もしもし、チャペックについて話が……》
《ああ、もしかして、聞いたんですか?ええ、彼女に脚本依頼しましたよ?》
《本気ですか?彼女デビューしてないというか、作品一つ書いたことないんですよ?その……任せてよろしいんですか?》
《……先生、私は彼女に才能を見出したんです。劇を観ている目を見ましたか?あの目を見た瞬間、私は思いましたよ。『彼女なら任せても良い』って。それに……先生だって、彼女の事、気に入っているでしょ?》
《それは……そうですが……》
《……それに、彼女には言いましたけど、添削は任せましたよ、先生?》
《……やれやれ、劇を『書く』事から離れていたというのに、貴方も鬼ですね?》
《腕は鈍ってないんですから……とにかく、頼みましたよ、先生?》
ツーツー
「……何処まで進みましたか?チャペック?」
「……もう少しです……」
「…………………良し!添削お願いします!ゴルコンダ先生!」
「……確認したいことがあります、チャペック。この作品の『譲れない箇所』は何処ですか?」
「それは……ココと……………です」
「成る程、ソレをお忘れずに。後々、熱く語ってくださいね?」
「そういうこった!」
「?分かりました。覚えておきます」
ー添削後ー
「大体こんな所でしょう。見て頂けますか?」
「……成る程……ソコがそうなって……格段に良い作品になりました!ありがとうございます!」
「……さて、コレを提出する前にある方々の許可を頂きましょうか。シャーレへ参りましょう」
「そういうこったぁ!!」
「へっ!?いきなり行って大丈夫なんですか!?」
「917号……いえ、ヒルデガルト。手筈は?」
「大丈夫です!四人全員待機してます!堂々入室して大丈夫です!」
「917号!?何故!?」
「1920号。私が『ヒルデガルト』として活動出来るのは、その四人のおかげです。貴方が劇作家として活動する許可を、先生と2号から貰ってきてください!」
「……まぁ、面談予定日は917号が許可を取った今日であることに、元から変わりませんけどね」
「そういうこった!」
「……ふぅ……良し!行きます!」
ー一方、シャーレー
“いやー、ゴルコンダもアリスを保護するとは……”
「917号から話は聞きましたが、劇作家ですか……また、特殊ですね」
「アリス、早くお話したいです!」
「わ、私もです!」
「こんにちは!失礼します!」
“はい、どうぞ”
「皆さん、初めまして!私は1920号。もとい、これから『チャペック』として劇作家になる者です!よろしくお願いします!」
「初めまして。私が2号です。そして、右から1号、オリジナルです」
「初めまして!」
「は、初めまして」
“初めまして。シャーレの先生です。よろしくね”
「はい、よろしくお願いします!」
「早速ですが、1920号。貴方の経緯を話してください」
「分かりました。……元々、戦闘用として作られた私は自ら野良アリスとなりました。そして、生きるのに辛くなった時に、ゴルコンダ先生とデカルコマニー先生が現れて、私を保護しました。そこから、文の表現、劇、戯曲の作成を学んで、現在の私がいます」
「……ありがとうございます。保護者の……方々?はどういった経緯で?」
「我々の組織が彼女達を拾ってきてから変わった事がきっかけでしたね。917号を拾ってきたマエストロがいい例です。そこから好奇心に駆られ、偶然、1920号……『チャペック』を保護したんですよ」
「そういうこった!」
「……分かりました。ふむ、今回も問題はなさそうですね」
「アリスから質問です!917号の『ヒルデガルト』と同じく1920号の『チャペック』にも元ネタはあるんでしょうか!」
「ええ、ありますよ?カレル・チャペックという作家がいましてね……」
“もしかして、『RUR』?”
「……流石です。その戯曲が発表されたのは1920年でした。だから、私は彼女に『チャペック』という『テクスト』……ペンネームを与えたんです」
「そういうこったぁ!!」
「成る程、アリス、理解しました!」
「あの……出来れば1920号の作品読みたいです。大丈夫でしょうか?」
「!?……えっと……」チラッ
「……」コクッ
「……この作品を見せた人は、ゴルコンダ先生とデカルコマニー先生以外にいません。なので、最後の推敲だと思って、よろしくお願いします!」
ー読了後ー
「「「“……”」」」
「……あのー、皆さん?」
“……素晴らしいよ!”
「はい!アリス、感動です!」
「……アレ?涙が……」
「……素晴らしいの一言につきます。……1920号。これから、『チャペック』として、頑張りなさい」
「……!……うぅ……ありがとう……ございます……!」ポロポロ……
「……ありがとうございます」
「そういうこったぁ!!」
“……さぁ、行っておいで。その劇団へ”
「……本当に、本当に、ありがとうございました!」
その後、劇団へ脚本を見せに行き、担当者さんに、『譲れない箇所』を熱弁。すると……
「やっぱり、君を信じて良かった。家の団員も応じてくれると思うよ!」
そうして、開かれた私の劇作品は大成功。賛美の嵐となり、私はデビューしたのでした。