小姫ドールと風変わりな外科医
彼の世界は今日も変わらない。
「おはよう、小姫。きみは今日も愛らしいな」
(おはよう、飛彩。飛彩も今日もカッコ良いよ)
朝に目が覚め、愛する人に口付けをする。
愛する人は彼に微笑みを返す。変わらない笑顔に安堵して彼は愛する人とともに職場へ赴く。
そして、仕事を終えた後は愛する人とともに家に帰り着く。
家の時計はいつからか止まっている。彼の時が5年前から止まったのと合わせるように。
「小姫、明日はどんな服が着たい?」
(そうだなぁ。…飛彩が前に頑張って作ってくれたエメラルドグリーンのワンピースが良いなあ)
「そうか。…なら、明日はそうしよう」
(ねえ、飛彩)
「なんだい、小姫」
(髪をといてほしいの)
「分かった」
静かに髪をとかす音が部屋に響く。ゆっくりと手慣れた手付きで髪をとかす彼は心の底から幸せを感じていた。
(飛彩)
「ん?」
(愛してる)
「俺も愛してるよ、小姫」
彼の閉じた世界は変わらないまま続いていく。