小夜丸とセアミンのファーストコンタクト的なの

小夜丸とセアミンのファーストコンタクト的なの


 ネオンカラーに彩られた夜の近未来都市。この街では今日も恒例の追跡劇が繰り広げられいた。

「待ちなさ~い!」

「やぁ~ん!追いかけてこないでよぉ~!」

 ビルの屋上を飛び回りながら逃げるI:Pマスカレーナ。それを追いかけるのは新米S-Forceの乱破小夜丸と相棒のドッグ・タッグだ。

「今日こそは絶対に捕まえますよ!覚悟しなさ~い!」

「嫌ぁ~!来ないでぇ~!」






「………………ってあれ?これもしかしてほんとにピンチな感じ?」

「フフフ……ようやく追い詰めましたよぉ……!」

 ドッグ・タッグとの高度な連携によりマスカレーナを袋小路まで追い詰めることに成功した小夜丸。まさかのピンチにマスカレーナも動揺の色を隠せない。

「うわーやられちゃったなー……じゃあ今日のところはここでお開きってことで……」

「いいえ、逃がしません!」

 ジリジリと詰め寄る小夜丸。マスカレーナはわざとらしいほどに目に涙を湛え訴えかけた。

「見逃してよ!アタシには病気の弟がいるのよ!」

「そ、そんなっ!?……ってもうその嘘には騙されません!」

「ちぇー、流石に三度目は無理かぁー……」

「さあ、神妙にお縄に……ってあれ?」

 足元にコツンと当たった何か。それはいつの間にかマスカレーナが放っていたネコマインで……

\\サン!ニャー!イチ!//

「しま……っ!?」

\\\ペカーーーン!!!///






「待ちなさ~い!」

「嫌ですよ~だ!ベ~ッ!」

 再び始まった追跡劇。本気度を上げたマスカレーナの背を追うのに必死な小夜丸だが、不意に彼女を追うのを止めた。

(あれは……ッ!)

「中断です!そこで待っててください!」

「は?いったい何言って……」

 踵を返すように方向転換し、全速力で東の方へ。そこにはここ一帯で一番高いビルがそびえ立っている。

(間違いありません!今、ビルの屋上から人が……!)

 小夜丸の視線の先にはビルの屋上から落下する着物姿の少女(?)の姿があった。

(間に合えーーーっ!)

 弾丸のような速度で一直線に駆ける小夜丸。必死に手を伸ばす彼女の視線と、落下する少女(?)の視線が交錯したその瞬間―――






 辺り一面に散乱するガラスの破片。鳴り響く警報器の音。小夜丸は落下途中の少女(?)を空中でキャッチし、ビルの中層部分にそのまま突っ込んだのだ。

「いたたたた……大丈夫ですか……?」

「……」

 小夜丸は自身の胸元に抱き抱えた少女(?)の安否を確認する。幸い怪我をした様子もなく、小夜丸は安堵の息を洩らした。

「よかったぁ……あ、私は大丈夫ですよ。なんてったって忍なので!」

「……」

「あれ?どうしたんですか?」

 少女(?)はおもむろに立ち上がり、自分達が突っ込んだ窓から外の世界を覗き込む。

「……高さ、足りない」

「高さって……も、もしかして自殺するつもりだったんですか!?い、いけません!そんなの絶対いけませんよ!!!」

 小夜丸は再び少女(?)に抱きつき、窓から引き離す。

「何か悩みがあったら私が聞きますから!」

「悩み……」

「そうです!私が悩みを聞いてあげます!忍なので!」

「…………」

「……?」

 お前が悩みの種だと言わんばかりにジト目で小夜丸を見つめる少女(?)。だが当の本人はその意図には全く気づく素振りも見せない。

「……あ」

「どうかしましたか?」

「何か、いる」

「え……?」

 少女(?)が指差した方を見ると、猫顔の簡易パラシュートでビルの間を降下するマスカレーナの姿。彼女は小夜丸を見ると笑顔で手を振り別れの挨拶を告げた。

「じゃあね~!小夜丸ちゃ~ん!」

「あああああっ!?待っててって言ったじゃないですかぁ~~~っ!」

 窓から身を乗り出す小夜丸をよそに、マスカレーナはパラシュートから手を離し地上でスタンバイさせていたバイクに跨がると、そのまま夜の街に消えた。

「ま、また逃げられた……うぅ……」

「……」

「でもまあ、貴方を助けられたからよかったです」


「…………邪魔だった」


 少し長い沈黙の後、少女(?)はそんな言葉を口にした。

「え?」

「楽しみ、だったのに……ここから、落ちて、踊るのが……」

 困惑する小夜丸をよそに、少女(?)は再び窓の方へと歩み出す。

「それを、チヨマルが、邪魔した」

「えっと……ご、ごめんなさい!よくわかりませんけど私が邪魔?しちゃったみたいで……」

「怒ってない。怒ってるけど……怒ってない。チヨマルは、当然のことを、したまで」

 窓際に立った少女(?)は……


「だから、一応、ありがとうって、言っておく」


 その言葉とともに外へと飛び降りた。

「ああっ!?」

 急いで窓際へと駆ける小夜丸。だがネオンカラーの巨大金魚に腰かけた少女(?)がフワリと窓の前に姿を現す。

「なっ!な、ななな何ですかその空飛ぶお魚は!?」

「ねぷた金魚。ぼくのペット」

「ね、ねぷた金魚!?ねぷた金魚って何なんですか!?」

「ねぷた金魚は……ねぷた金魚」

「ちょっと待ってください!」

 そのまま場を去ろうとする少女(?)を小夜丸は必死に呼び止める。

「そのっ!ねぷた金魚のことも気になりますけど、貴方のことを教えてください!」

 小夜丸は窓から身を乗り出し、離れゆく少女(?)にそう問いかけた。

「せめてお名前だけでも!!!」

 少女(?)は逡巡するように脚をパタパタさせた後、こう呟いた。


「……セアミン。それが、ぼくの名前」


「セアミンさん!覚えましたよ!あ!後言い忘れてましたけど!」

 背後にビルの警備員達が駆けつける中、小夜丸はセアミンに向かってこう叫ぶ。

「ビルから飛び降りるなんて危ないこと、もうしないでくださいね~~~っ!」

「……」










「……うるさい。もう、邪魔、しないで」

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