小さな小さな懇願
⚠結局エッチは無かった
⚠雰囲気優先
⚠誤字脱字
⚠多少の矛盾
⚠621♂
「621…すまないが道を開けてくれないか…」
狭い廊下で杖をつく初老の男性…ハンドラー・ウォルターの進行を621と呼ばれた青年が影を落としながら遮っている。
「621…」
はぁ…と深くため息を付きながらウォルターは先程のやり取りを思い出していた。
―
――
―――
「621、お前はここのところよくやっている。」
「正当な報酬はもちろんだがこの仕事が終われば何かしたいことや欲しいものはないか?」
「限度はあるができる限りサポートしよう」
単なるねぎらいのつもりだった。
もちろん星を焼くという後ろめたい気持ちからも少々…。
そしてこれからの未来を生きる621に将来へのモチベーションをウォルターは少しでも手助けしたいと思っていた。
しかし帰ってきた答えは自身の想像もしないものであった、
ウォルター、貴方が欲しい。
貴方の側にいたい。
少し面食らったウォルターは杖をギュッと握りしめ、感情を抑える。
「…それは無理だ621」
「お前はこれから先、様々な選択をしていく…」
「俺のような老いぼれに構う暇なんて無い」
「…仕事の時間だ621」
―――
――
―
そう言って無理やり話を切り上げた事を思い出し、ウォルターは頭を抱えた。
もしかしたら621はまだ納得していないのかもしれない、しかし計画がうまく行けば必然的に621はウォルターから解放され、再手術をして新しい普通の人生を歩むことになる。
そこに自身がいる必要がないとウォルターは深く理解している。
どうやって説得したものかと考えあぐねていると、621はひょいとウォルターを子供のように抱きかかえた。
「621…っ!」
自分より大きい青年に抱き抱えられウォルターは困惑するが、そんな様子を物ともせず621は大型犬のようにウォルターの顔に自らの頬を寄せ親愛の仕草を示す。
ウォルター、貴方が欲しい。
自分のこの先の人生に貴方がいて欲しい。
そう言って621はウォルターを抱きしめる力を強くして歩き出す、ウォルターはそこから抜け出そうともがき出すが、年若い621になすすべなく自室に運ばれる。
「621…俺に…構うな…俺は…お前の人生に…」
621の寝台に押し倒されながらウォルターは自問する。
そうだ、621の人生に自分がいて良いはずがない…金で騙すような形で星を焼かせる使命を託そうとしている人間が…数多の犠牲を築いだ自分が…誰かの側で終わるような人生など…。
押し倒したウォルターの胸に621が懇願するように縋り付き、指を絡める。
ウォルター、俺から離れないで。
どうか、最後まで一緒にいさせて…。
…ただそれだけでいいから。
切なげに見つめる621をウォルターは強く否定することができなかった。