小さな事件と残された思い
『イチャイチャちゅっちゅしないと出られない部屋』
書いてあることは馬鹿みたいだったけど事実だった、扉もないし壁も本気で殴ったのにビクともしない……それを見たサオリの表情が引き攣って見えたのは気のせいだ、気のせいなの!
とにかくこうなった以上イチャイチャちゅっちゅするしかなさそうなんだけど……
「イチャイチャちゅっちゅ、とはなんだ?ちゅっちゅと言うからにはちゅーをするのか?」
これである、ああもうどんな教育してたのアリウスは!話してわかったけど戦闘以外知識幼女だよこの子!?私だってお世辞にも頭いいとは言えないって自覚してるけどこの子はそれ以前の問題だよ!!
「えっと、とりあえずキス、してみよっか」
「む、ちゅーのことはキスとも言うのか、なるほど…よしわかった、しよう」
そう言って近づいてくるサオリの顔、身長の関係であちらからされることになるんだけど…
ちゅっ
「これでいいのか?」
「余韻も何もない!」
もっとさあ、こう、あるでしょ!?ドキドキするような仕草とか、終わった後ももう少しロマンチックな言葉かけてくれるとかさぁ!
「…?キス、とはこういうものではないのか?親愛の証として口と口とを合わせるものだと思っていたのだが…」
そこまでわかっていてどうしてあんな色気もへったくれもないものになるのか、そうだねアリウスの教育のせいだね☆
じゃなくて!
「私の方からしてみるから、ちょっとそこ座ってみて?」
何故か、本当に何故か置いてあるベッドに座るよう促すと警戒する様子もなくあっさり座るサオリ、やっぱりこの子(ry
「それじゃ始めるよ、…サオリの目、強そうで綺麗だね」
「ミカ…?何を……んむっ」
唇同士を合わせるだけの子供のキス、それでもお互いの手と手を絡めてみるとそこから伝わる暖かさにふわふわとした気持ちよさが流れてくるようで……
「ん…ぷぁっ、どう、だったかな?」
「不思議だ…なんだか胸の奥がザワザワするような妙な感覚があって……」
困惑しつつも頬が微かに赤らんでいるのが見てとれて
「サオリ、可愛い☆」
思わずそんな言葉が出てしまっていた。
「か、かわ…っ!私はそんなんじゃない、アツコならともかく……」
「ううん、今の私にとって一番可愛いのはサオリ、貴女だよ」
そう言うとさらに顔を赤くしたサオリが口を開こうとして……
【ピーッ、ピーッ、イチャイチャちゅっちゅヲカクニン、ドアガヒラキマス】
そんな間抜けな電子音と共に外への出口が開かれた。
「えっと……出よっか?」
「ああ、そうしよう…なんだか疲れた」
「あは、それは私も☆」
結局、原因も理由もわからないこの小さな事件はあっさりと終わりを迎えた、ただ一つの置き土産を残して……
>その、ミカ
>またキス、してもらいたいんだが…
>無理にとは言わないが、あれ以来あの感覚が忘れられなくて…
<いいよ、日時指定して、また一緒にキス、しようね☆
私も彼女も、お互いがちょっと特別な存在になってしまったのだった。