導入編

導入編


♡ここから始まるエロが読みたい導入だけ。エロ無し。フリー素材




「あ、そうだ。君、クビな」


 まるで"足りない備品があったのを思い出した"みたいな語調で放たれた解雇通知に、思わずは? と間抜けな声が洩れた。

 何かの書類に視線を落とし、切れ長の目をこちらに向けもせず「もうこなくていいぞ」と社長は続ける。


「えっ……あの、今、なんと……」


 何かの間違いだと思いたくて縋るように聞き返す。社長はやはりこちらを見もせずにめんどくさそうに答えた。


「クビだと言ったんだよ。だからもうこなくていい」


 形の良い薄い唇から放たれた先程と変わらぬ解雇通知。思わず目眩を感じて足元がフラつく。

 次いで脳内を埋め尽くしたのは何故、どうしてという疑問。

 昨日まで一切そういった素振りを見せなかったのに、どうして今日になって突然。


「な……何故ですか……」


 震える声で疑問を口にすると、社長はやっとダルそうにこちらを見た。

 なんでまだいるの? とでも言いたげな視線だった。社長からすれば用事はとっくに済んでいて、俺は二つ返事で社長室を後にすべきなのだろう。


「だって君、業績も持ってくる企画もパッとしないだろ。全体的につまんないんだよな」


 社長が何よりも"面白さ"を重視することはこの高杉重工では周知の事実だった。

 だってそっちの方が面白いから、と滅茶苦茶するのは当たり前。しかし突飛な発想と社長の才能がうまい具合に作用し結果的に良い方向へ向かうこともある。だからこの会社はここまで成り上がってきた。

 そんな破天荒な社長の無茶振りに今まで付き合ってきたし、可能な限り応えようと努力してきたつもりだった。

 それなのに。


「そんな……理由で……?」

「いやいや、面白おかしくやってこそだろ。やっぱつまらない奴だな君は」


 長く伸ばされた紅梅の髪から覗く瞳は冷たい。

 何か言おうと口をはくはくさせて、けれど俯くしかなかった。何を言ってももう無駄だ。社長は目の前の"元社員"からはすっかり興味を失ったようで、再び書類に目を通している。

 震える唇でやっと「今までお世話になりました」と告げて踵を返した。

 返事は返ってこなかった。

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