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「──闇水!!」
全身の血が逆流するかのような衝撃と共に四肢の自由が奪われる。不味い、と思ったその瞬間には晒した喉笛へ血濡れた指が食い込んでいた。
「ゼハハハハ!! 究極の悪魔の実の能力者もこうなっちゃ終ェだな、トラファルガー・ロー!」
「ぐッ……!」
頸動脈と気管をまとめて捻り潰され思考が鈍る。能力が使えない。背後に控える己の船員たちが「キャプテンを守れ!」と口々に叫び駆け出してくる。
しかしその鬨の声も瞬く間に悲鳴へと変わった。耳をつくのはふざけた笑い声。なんとか視線を動かせば、黒ひげの“幹部”たちが血の滴る得物を手に“狩り”を楽しんでいた。
「ウィ~ハッハッハッハ!!やっぱりこいつら、船長を除いて雑魚ばっかりだぜ!潰し甲斐もねェな!」
肉体が砕ける音。能力者たちに嬲り者にされる仲間たちは、それでも頑として「助けて」とは言わない。虐殺の光景の向こうでは、琴が爆ぜるような音を立てて瞬く間に海が凍っていく。まだ隠し玉があったのか。だが、あの氷結能力は。瞬時に思い当たった男の顔に、ローは戦慄する。
「海軍大将青キジ……それがなぜ、てめェなんかに……!」
「面白ェこともあるもんだろう? あの様子じゃ、海の中のてめェの船と仲間は氷漬けだな。ゼハハハハ!」
昼下がりの世界が白く染まり、波が、飛沫が凍り付いていく。腹の底に煮えたぎる怒りのままに目の前の巨漢を睨めば、黒ひげは血色の悪い唇から薄汚い歯を覗かせてにんまり笑う。
「さて……ロッキーポート事件でのよしみだ。“ロード歴史の本文”さえ渡してくれりゃあ命までは取らねェよ。仲間も解放してやる。悪ィ話じゃねェだろう?」
その言葉を聞いて、ローは心底呆れた。最初から生かすつもりなどないくせに中途半端な希望を与えようとしてくるのは、絶望した顔を見たいからだ。
ならば希望など持たないし、絶望もしてやらない。海に出た時からとっくに命は捨てている。下品な笑顔へ血の混ざった唾を吐き掛け中指立てて、ローは唇の端を上げた。
「……へへッ……じゃあ全部渡した後に殺されたら、こっちには何一つ得が無ェってことだな……!」
「ゼハハ!!交渉は決裂だ!最後のチャンスを手放したのはてめェだからなァ!」
短く笑った黒ひげの拳が鈍く光る。振り上げたそれが狙う先は、真っ直ぐにローの頭だ。万事休すか。せめて頭を砕かれる最期のその時まで、勝ち誇った下品なにやけ顔を睨み続けてやろう。そう誓って瞳に力を込めた──。
──その時だった。