対峙 2

対峙 2


『奴に会いに行くらしいな』

「ええ、ひとまず完全に牽制を。今までは龍珠さんが睨みを効かせてくれたおかげで裏のルートは封じていました。今日は例の映画の公開日。社会的にカミキヒカルの抹殺が本来なら始まる日です」

電話の件を龍珠さんに連絡し、準備する。

特殊警棒、小型ボディカメラ、隠しイヤホン、盗聴器、スタンガン、GPS発信機etc…

風祭さん、龍珠さんの双方からいただいたものだ。職質食うと一発でアウトになりそうだが、小島先生にも話を通さないと。

『…だが、奴は恐らく乗り切る手札があるか、何かしらの手を打って出るだろうな。

そっちの電話盗聴していたが余裕綽々、という奴だ。

あと事務所を監視している衆が言うには対象はまだ中に居る。向かうなら早く向かって出迎えろ。既に店には組の奴らに行かせてる。気に食わんが、小島にも話は入れろ。最悪あいつが何かおまえに起きた時の証人になる』

警視総監の息子様だからな、と龍珠さんは笑う。立場的にとても仲が悪い。今回の協力も互いの共通の友人・知人が仲介を果たしてくれたおかげで成り立っている。

僕としてもその代償故か

協力条件として支給された通信インカム、外部連絡用携帯電話と僕の持ち物にはGPS、盗聴機が仕込まれている。安全確保…という建前だが此方が協力をお願いしている手前、先方を裏切ら無いための保険だそうだ。実際カミキの手のモノには一部暴力団が絡んでおり、それが龍珠さん側には不都合という点からの協力なので飲むしかない。

「ええ、念のため風祭さんにも連絡入れました。兄達とは打ち合わせ済ですが、家族と友人そちらの警護もお願いします」

『約束だからな。当然守るさ。顔馴染み達との面子もかかってるし…まあ気をつけろ。恐らくおまえの苦手な腹芸と挑発のオンパレードだ、手は絶対出すな。おまえが手を出したら全員が終わる。』

「ーーええ、承知しています。準備出来ました。向かいます。」

『まあ私は秀知院の仲間達守ってとんずらだがな。小島は知らんけど

さて、車のNo.は××ー○****だ。待機させている。乗って行け』

素晴らしいな。あと監視もされてるぞココ(フリルの部屋)

「分かりました」

電話を切り、後ろを振り返る。

あの会見後1日の大半をこの部屋で過ごしてきた。唇を重ねることから互いに身体を触れ合い、身体まで重ねてしまった。

色々と濃い日常を歩んできた部屋だ。

「行ってきます…」

戻って来るつもりだが、覚悟を決めて部屋を出て、近くにあった車に乗り込み約束の場所へ向かう。

所要時間は僅か15分少し。

長く感じる15分だった。

ーーーーーーーー

約束のスターバックスに入り、確認する。写真で見た男、カミキヒカル当人がまだ来ていないのは幸いだ。

『着いたな?窓際の席に座れ。おまえの位置は下座にもなる位置だ。奴を狙撃しやすく、おまえは撃たれにくい。おまえの付近に若い衆を置いている。緊張してるか?』

確かに緊張している。お姉ちゃんと兄さんの前世の雨宮医師を殺害させた黒幕だ。どうしても身構える。

『私の部下がいる。落ち着き、安心しろ。必ず守り抜いてやるし、その時は奴を仕留めてやる。』

「…仕留めたらダメでは?」

『おっと、そうだったか?物騒なことばかり考えているからかもな

…多少力抜けたか?』

「ええ。ありがとうございます」

『ならよかったがーー来たぞ。此方からの通信はしないが、きちんと聞いている。警護は任せておけ』

「はい。……こちらです、カミキさん」

インカムから龍珠さんが通信が切れる。

龍珠さんが言ったようにドアから男が入って来た。

「おや、約束の時間よりもかなり早いですね。1時間以上早く来るとは。女性とのデートで喜ばれるタイプですよ斎藤硝太くん」

白のファー付きジャンパー、括った髪の毛、アクア兄さんに似た顔つき。

…写真通りだ。

にこやかな笑みを浮かべながら全ての元凶は入って来た。


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