寝惚けて甘えるママエース概念
トレエスに脳ミソ焼かれまん民夢を見た。
まだ結婚したばかりの頃の夢を。
まだ子供も産まれていなくて、二人だけでこの家に住んでいた頃の、甘い夢を。
そっと目を覚ます。
天井の前に、トレーナーさんの顔が見えた。
「あっ、ごめん。起こしちゃったか?」
やけに小声で、囁く様にトレーナーさんが言う。
「ん」
あたしはぼんやりとした頭で、トレーナーさんに手を伸ばす。
「エース?」
そのまま首に手を回す。
「ち、ちょっとここでは…」
そう言いながらもトレーナーさんはあたしの背中に手を回して、落ちないように、抱き寄せてくれる。
「んー」
あたしはそのまま、目を閉じてトレーナーさんに顔を寄せて──
「あー!ママがパパにあまえんぼしてるー!!」
突然の大声でフリーズする。
声のした方を振り向く。あたしの隣を。
娘がボサッとした頭と、よだれの垂れた後の残る顔でこっちを見ていた。
その顔を見た途端に、記憶が甦る。娘を寝かしつけようとして、その寝顔を見ていたら眠くなってきて・・・そのままあたしも昼寝してたのか。
意識が覚醒してくると、今度は自分の状況も理解できてしまう。
旦那の首に手を回し、付き合いたての頃みたいに、キスをせがんでいた自分を、それを娘に、真横で、見られていたことを。
熱い顔を、カクカクと上にいる旦那に向ける。
「えーっと、おはよう、エース?」
耳まで赤くした旦那が、そう言った。
「~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
そのまま気を失えたら、どんだけ楽だったか。
旦那は
「エース?おーい!エース!?」
って叫びながら脱力したあたしを揺さぶるし、
娘は
「あたしもあまえんぼするー!」
って旦那によじ登り始めた。
よし、決めた。二度寝しよう。
旦那に支えられた体に身を委ねて、このまま寝てしまえ。
「おーい、エース?首が痛いんですけど。」
知らん。あたしは寝てるんだ、我慢してくれ。
娘の声がする。
「ママねちゃったの?」
旦那の声がする。
「そうだね。ママ甘えん坊さんのまま寝ちゃったね。」
・・・あーあ。起きたら、全部なかったことになってないかな?
あり得ない願望に期待しながら、あたしはまた意識を手放した。
次にあたしが目を覚ましとき、旦那と娘が覆い被さる様に寝ていて、目を覚ました旦那は、あたしの背中で下敷きになっていた、痺れた手を娘につつかれておもちゃにされていた。
旦那は悶えながら、あたしに
「また、今度な?」
って囁いた。
あたしは黙って娘と一緒に、腕をつついた。