宝箱の中に入れる『愛』

宝箱の中に入れる『愛』


「今日は何から食うか?」


ローの前にズラリと花が5種類と宝石4種類が並べられる。

いつだったかクルーの遺品を破壊されるのが嫌で、必死に守ろうとした結果己の胃の中に収めようとして飲み込んですぐにドフラミンゴに見付かってしまったせいで始まった事があった


「そんなに腹ン中に物を入れてェなら、俺が入れてやる」


そうしてドフラミンゴはローを『宝箱』として扱うようになり、およそ食べ物ではない物を『愛』だと言って食べさせてくるようになった

ある時はドフラミンゴの羽織るファーコートの羽、ある時はドフラミンゴの髪の毛、ある時はドフラミンゴが能力で出した糸と、兎に角ドフラミンゴに関係している品物だった

しかしいつ頃からか花や宝石を食べさせられるようになった

目の前で光を反射する宝石に恐怖を覚えてローは息を飲む。宝石を飲んだ日には喉が傷つけられて暫く血の味がし続ける。せめて食べるなら花だけで頼みたいが、そんな物はドフラミンゴには関係ない


「おいロー、早く選べ」

「ッ!」


声をかけられてローは肩を跳ねさせた

どちらにしても最終的には全て食べさせられるのだから、せめて辛い物を先に終わらせてしまおうとローは震えながら並べられた宝石を指差した


「宝石、からで……」

「あァ分かった」


宝石を手に取るドフラミンゴに、ローは震えながら口を開いた。そんな口の中にドフラミンゴは楽しげに宝石を一つずつ入れてくる


「綺麗だろ?これはアンモライトって言ってな、遊色効果がある宝石だ」

「…ンッ、ング……ゲホッ」

「これはカイヤナイト、綺麗な青色だろ?『深い青色』って意味だ。お前に似合うと思って選んだんだ」

「ォゴ、うっ……っあ……」

「これはトルマリン、いろんな色があるんだがなァ、今回はピンクのを選んだんだ」

「ゴホッ!……うぶっ…ふ、うっ……」

「最後はスフェーンだ。ダイヤモンドよりもきらびやかに輝いて見えるだろ?分散度がダイヤモンドよりも高いんだと」

「ん…グッ、ゲホゲホッ!」


一つ一つ何の宝石なのかを言いながら口の中に入れては、ローは必死に飲み込んだ

宝石の角で喉が痛み、血の味がじわりと広がる

咳き込みながらも全て飲み込んでローは息を切らしながら残っている花を見る。宝石さえ食べ終えてしまえば残るは比較的食べやすい花だけだ

少し安心しているローに、ドフラミンゴは早く口を開けろと花を近付けてくる

花は食用に生産されている物で、元々は毒があるような物でも毒を取り除かれている特別製だからと安心して口を開けるロー


「チューベローズに、リンドウ、こいつは花じゃねェがアイビー、スイセン、それとバラだ」


花弁を千切ってローの口の中に入れてくる

特に黄色いスイセンと黒いバラは丁寧に入れてくる

全て食べ終えるとドフラミンゴはジッとローを見つめてくる。それを見てローは俯き、ギリリを歯を食いしばってから声を絞り出す


「きょ、うも……たくさん、あいしてくれて……ありが、とう……ドフィ……」


その言葉を紡がなければこの常人には到底理解出来ないドフラミンゴの寵愛は終わらない

だからどれだけ喉の奥が焼けるように痛くても、どれだけ屈辱でも、ローは必死に声を発する

ローの言葉を聞いて満足したらしいドフラミンゴは笑う


「フッフッフ、あァ、どういたしまして」


狂った愛情を押しつけられて、何とか飲み込んだローは、吐き出さないように必死に堪える


(……お前の『愛』は『愛』じゃない……)


心の中では唾を吐いて、ドフラミンゴを否定する


(ベポ、ペンギン、シャチ……)


次いで今はもう居ないクルー達の名前を呼んでいく

そうして最後


(コラさん……)


恩人の名前を呼ぶ


この感情は、ドフラミンゴが喉から手が出るほどに欲しているこの感情だけは、絶対に譲らない

この言葉は、自分に本当の意味での『愛』をくれた彼等にしか渡さない


(愛してる……)










アンモライト:過去を手放す

カイヤナイト:従順

トルマリン:健やかな愛

スフェーン:永久不変


チューベローズ:危険な快楽

リンドウ:悲しんでいる貴方を愛する

アイビー:死んでも離れない

黄色いスイセン:もう一度愛して

黒いバラ:貴方はあくまで私のもの

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