宝石の国パロディ
背後に足並み揃える万の海賊はロジャーを信じ付き従う者たちだ。
間違ってもエースの味方でも仲間でもなかった。
世界政府に処刑されたはずのロジャーは生きていた。そして天竜人と手を組んだ。
エースは利用されている。自覚はしている。
革命軍本拠地バルディゴ。
「フッ」
ブーツで踏みつけるのは革命家と呼ばれた者たちの亡骸。
この本拠地の最奥にて君臨するのは蘇った白ひげだとティーチに知らされている。
エースの味方なんて最初からいなかった。
皆が皆、エースを利用していたのだと知った。
一度処刑され死んだ身体を無理やり繋ぎ合わせてた。エースという名の生きている亡霊だ。
亡霊でもよかった。生きて皆で幸せになれたなら。愛してくれるならそれで良かった。
だが誰も本物の愛なんてくれなかった。
「エース」
癖の強い金の髪が立ち塞がる。
顔に広がる火傷跡こそ目新しいものの見知った顔だ。
男は構えていた鉄パイプを手放す。カランと鋭い音をたてパイプは床に転がる。
サボ、という名の兄弟であった男によく似ていた。
男はエースの前に跪く。
「おれの負け」
ずっと聞きたかった、自分の愚かさで殺したと思っていた大事な兄弟。だが彼もまた生きていた。
「聖地マリージョアに連れてって」
酷い裏切りだ。
「そしてどうかお前と、天竜人と話をさせて欲しい」
エースは確かに愛していたのに。
「時間をかければ皆が満足する答えが見つかるはずだ。おれたちの絆も出会いもきっとそのためのものだったはずだ」
杯を交わした。兄弟になった。でも大切だった弟はマリージョアでシャンクスと笑いあっている。
「頼む。取り持ってくれ。お前にしかできないことなんだ」
サボもルフィも大切な兄弟だった。
「おれが必要か」
エースは口元を緩ませる。
「ああ」
サボの答えを聞くと同時にエースは
「炎帝」
サボに火を放つ。火傷の目立つ顔を狙った。見開かれた目は愛していた者によく似ていた。
「おれは誰もいらない」
火に焼かれ倒れた男から目を背けた。もう何も見たくなかった。
「よくも」
「総長をなんで」
死体もどきから放たれる言葉の刃はもうエースを傷つけることはない。
そんなものすでに傷だらけのエースに対してなんの力も持たない。
「やっておけ」
背後の海賊たちに手を振り歩き出す。
「白ひげ」
エドワード・ニューゲート。
この本拠地奥深くに奴はいる。