守護のユユツと攻撃のビーマセーナ

守護のユユツと攻撃のビーマセーナ


~スヨーダナが居なくなって数か月後~

「ビーマセーナ、聞きましたよ。ドリタラーシュトラ王に1人でもいいからスヨーダナを探させてほしいと頼み込んでいるようじゃないですか」

「・・・ユユツ・・・。お前も俺を止めるのかよ・・・。」

「いいえ。むしろもう誰もが生存を諦めている中、探そうとしてくれる貴方を嬉しく思っています」

「なら、何で声かけてくるんだ?お前はスヨーダナと一緒に帰ってこれなかった俺を良く思っていないんじゃないか?」

「それを指摘するなら、王宮であの化け物に立ち向かえなかった私も同罪ですよ。」

「でもよぉ・・・」

「でももだってもありません。人がひとりで出来る事なんてたかが知れているんですよ。あなたのそれはもはや傲慢です。」

「う・・・。」

「この際なので言ってしまいましょう。そもそも前から思っていましたが、あなたは力加減がド下手くそですし、他人への心遣いが致命的に間違っている部分があります。」

「そんなことねぇ!!」

「では聞きますが、小さな生まれたての生き物を掌の上に乗せることが出来ますか?因みに貴方の倍以上力持ちのドリタラーシュトラ王は出来ますよ?」

「・・・・できらぁ!!」

「嘘ですね。出来ないことをやれると奢ることは貴方だけでは無く周りの大切な人間への悪評へと繋がります。あなたは実の兄弟を苦しめたいのですか?」

「・・・そんな・・・ことは・・・」

「言いきられなくて良かったです。これで自分の行動で悪評に繋がるはずがないと断言されたら協力するつもりは無かったので」

「・・・協力してくれるのか・・・?」

「私もスヨーダナが帰ってくることを信じています。彼は戻ると言ったのでしょう?」

「おう・・・。」

「あの子は約束を守る子です。・・・力加減に関しては私ではどうにもできないので師事してくれる方に任せますが、他人への心遣いに関しては私が教えましょう。王宮に出入りできているとはいえ、扱いは民草と同じですし森暮らしだったあなたよりは街の事を知っています。」

「・・・分かった。宜しく頼む。」

「誰に対してもそうやって礼を言えるのは貴方の良いところです。・・・さぁ、私は厳しいですからね!ビシ!バシ!いきますよ!!」

「お・・・おう・・・。(早まったか、これ・・・?)」


~ビーマが力加減を覚えるようになって暫く経った頃~

「ユユツ!見てくれ!!花冠が折れることなく綺麗に編めるようになった!!後、アシュバッターマンていう面白い奴もいたんだ!」

「(何で花冠なんでしょう・・・?)良かったですね。だいぶ力加減が上達したじゃないですか。」

「・・・お前はまた、調べ物か・・・?」

「えぇ・・・。私は力を振るうのに向いていないと言われてしまいまして・・・。魔術や仙術と言った術を行使する方法があり、適正があれば使えるらしいので私にもできないかと文献を探しているんですが、これがまたすごい量で・・・。」

「本当に凄い量だよな。・・・手伝おうか・・・?」

「これでも大分絞り込んだんですけどねぇ・・・。その気持ちだけで十分嬉しいです。言葉掛けもだいぶ良くなりましたね・・・。(しみじみとしている)」

「お前、本当に容赦しなかったもんな・・・。いや、そうじゃなくて・・・。」

「・・・分かりました。では私が指さしている文字が載ってそうな書物がないこの机に載っている本の山から探し出してくれませんか」

「本読むの苦手だから途中で眠っちまうかもしれないけど、容赦なく叩き起こしてくれ。」

「ふふふ・・・。ありがとうございます。・・・それじゃあ、宜しくお願いしますね。」

武術の訓練で疲れてしまったのかビーマは早い段階で寝落ちしたが、ユユツは起こすことなく彼が風邪をひかないように布をかけ一人で本を読み進めていった。


~ユユツに占術の適性があることが分かり、それによる術の行使が出来るようになった頃~

「ビーマセーナ!”視”ましたよ!!人を怖がらせていたじゃないですか!!何をしているんですか!!」

「う・・・。でもよぉ・・・あいつ、スヨーダナがタヒんでよかったなんて言いやがるから、つい・・・。」

「(くそでかため息)・・・あなたの気持ちは痛いほど分かりますが、しっかり証拠隠滅しましたか?」

「おう!!!そういったことに関してはスヨーダナの弟たちに教えてもらった悪知恵がうまい具合に嵌まってな!」

「だいぶ仲がいいですね?仲がいいのは良い事ですけど・・・。」

「・・・そんなことねぇよ・・・。あいつら、ユユツは自分たちの兄貴なんだから盗るなとか言ってきてよぉ・・・。友達なんだから、別にいいじゃねぇか・・・。」

「おやおや・・・。・・・あの子たちには本来あの王宮に居るべきだったスヨーダナの記憶がありませんからね。喪失感を抱えているのかもしれません・・・。」

「あいつらはユユツの事も兄としてちゃんと慕っているぞ。」

「分かってます。分かっては、いるんです。」

「・・・あんまりため込みすぎるなよ・・・。何時でも俺が聞いてやる。」

「王宮の愚痴に関してはアルジュナに聞いてもらっているので大丈夫です。」

「ユユツ!!!!」

「あはは!冗談ですよ、冗談。聞いてもらって少しすっきりしました。」

「俺を揶揄うなよ・・・。これだから長男ってやつは・・・。」

「お兄ちゃんレベル100ですからね。ユディシュティラに負けるつもりはありません。」

「何の勝負なんだ、それ・・・?」


~ビーマが外出許可を貰えるようになり、ほんの少しだけ遠くに行くようになった頃~

「確かにあなたの兄弟と似たような気配を感じるとは言いましたが、本当に連れて来たんですか・・・?」

「・・・カルナだ。宜しく頼む。(自分たちよりも少しだけ年上に感じる見目の少年が立っている)」

「兄貴にも確認とったが俺たちの兄弟で間違いないらしい。こいつにある程度の地位を与えれば俺ももっと遠くまで出かけられるんじゃないかと思ってな。」

「はい・・・?(頭が痛いとでもいうような顔をする)・・・そのことをドリタラーシュトラ王に話してませんよね・・・?」

「お前に話は通しておこうと思ったからまだだぜ。けど、ここに来る前にたまたま会ったドゥフシャーサナはこいつと話している間に興味を擽られたのか、こいつ欲しい!って顔してたぜ?」

「それもう、ドゥフシャーサナからドリタラーシュトラ王に話が行ってるでしょう・・・。もはや誤差では?」

「・・・軟弱だな。(訳:急な出来事で私も驚いています。とは言え、知り合いだというのなら彼の行動はある程度予想は出来たのではないでしょうか。)」

「話、大分端折りすぎてませんかこの人???絶対話さなかった言葉がありますよね???」

「そうなのか!?俺は煽っているようにしか聞こえなかったが・・・。」

「・・・是非も無し。(訳:もしもそう聞こえてしまうのなら、私の言葉選びが悪かったのでしょう。喧嘩を売られたと思うのならその通りに対応します。)」

「了承しないでください・・・。これ、更に問題が増えただけでは・・・?」

「・・・その・・・。わりぃ・・・。」

「あー・・・。もう、なるようにしかならないでしょう・・・。」


~ビーマがカルデアと相対した後~

「ユユツ!!!スヨーダナの事について有力な情報源を持っていたやつらがいたんだ!!」

「本当ですか!?その人たちは、今どこに?」

「〇〇ってところだぜ。」

「・・・直接会ってみたかったのですが、ここからでは少し遠いですね・・・。」

「俺に任せてくれ。ちゃんとスヨーダナをお前に合わせてやる」

「後方支援なら任せてください。こういう細かい作業は結局あなたは未だに取得できていませんしね。」

「一言多いぞ・・・。」

「ですが、肩の力は抜けたでしょう?」

「あぁ。行ってくるぜ。」



99王子と1姫の誕生の遅れなど遅れが発生する出来事もありつつ、多くの出来事が前倒しで起こっている感じの世界線。

年齢差が分からなかったのでふわっと書いているが、原典でドゥリーヨダナが行う”よいこと”はドゥフシャーサナが行っている。

ビーマ1人で鯖化するにはスキルが行使できないし、ユユツが1人で鯖化するには力が足りない。そんな塩梅の世界線でもある。

この話書いているうちに思い浮かんだ、何かの礼装テキストもついでにペタリ。



【幸福の時間】

(頑張って目を開けているが体がゆらゆら揺れている)

「今日はここまでにするかい?ビーマ」

「いや・・・。まだ頑張る。お前と2人きりでゆっくり話せる時間なんてあんまり取れないんだし・・・」

「あー!!!!貴様、ズルいではないかー!!!ユユツ、わし様にも構え~!!!」

「あ!ビーマセーナだ!」

「またあにきとユユツのことを、ひとりじめしてやがる!」

「ものども、であえ、であえ~!!!」

「あ~~~!!!もう!!!うるせぇなぁ!!!」

「そんなこと言ってるわりに、君、笑っているじゃないか」

「わし様もわし様の弟たちも愛らしいし、ユユツは恰好いいからな!当然であろう!」

「あにき、わたしは?わたしは??」

「もちろん世界一可愛いに決まっておろ~う!!」

「きゃ~~~~~」

これはあり得なかった世界。邪神の邪魔さえなければありえたかもしれない幸福な時間。

隣には信頼できるユユツがいて、大変不本意であるが己と同じくらい力のあるビーマがいて、愛おしい幼い99の弟と1の可愛らしい末妹が笑い合っている。



けれども起きたらその夢(記憶)はどこにもない。残すことすら許されない。

夢の端すら掴めずに、彼にとっての日常になってしまった準備をいつも通り行い始めた。

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