嬉し恥ずかし二刃(ふたり)の初夜

嬉し恥ずかし二刃(ふたり)の初夜


・ゾロの死後、あの世で鬼徹と雪走がお付き合いしてます

・イケメン化、雪走が女の子などSBSガン無視擬人化

・据え膳+朝チュン描写あり

・鬼徹は遊郭連れてかれて筆下ろし済み、雪走は誰かからのアドバイス(という名の吹き込み)

以上が大丈夫な方、このままどうぞ

















大剣豪になった後四十手前で死んだゾロを追いかけて、おれはおれをへし折った

別に仲間達やあの船の連中のことが嫌いになったわけじゃねェが、アイツ以外の誰かに拾われて使われることがどうにも我慢ならなかった

以降おれ達はゾロの親御さんの元で世話になりながら、同じく早死したらしい船長に振り回される日々を送ってる

そして、そんなあの世生活の中でおれは雪走と付き合うようになった


最初は生前とそんな変わらなくて「仲間」の延長みたいな関係だったが、段々とお互いに惹かれるようになって、今じゃすっかり公然の仲になって「美男美女カップルがまた増えた」と周囲から言われるようにもなっていた

よく一緒に手を繋いでデートにも行くし、キスもした

だけど、おれからはそれ以上の事は求めなかった

もちろんアイツのことは大好きだが、おれは主人殺しの妖刀で、あいつは家宝だった刀だ

一緒にイーストブルーに帰れなかった負い目も心の何処かにあった

今更な事ではあるけど、ちゃんとおれの方からプロポーズして「結婚」という筋をしっかり通してからその先に進みたい……なんて考えてたら、まさかまさかで据え膳された


「私(わたくし)達が男女の仲になって、間もなく三月(みつき)。近頃はそれぐらいの頃合で契りを交わすと聞きます。それなのに、貴方はいつまで経っても私と肌を重ねようとしない。貴方を信じていないわけではないのです。ですが、私は…」

「大事な話がある」と言われて連れこられた宿屋、その一室に敷かれた広い布団の上で雪走は言う

「はしたない事とは百も承知です。失望されるだろう事も覚悟の上です。それでも、それでm「雪走」

気付いた時にはもう、おれはアイツを布団に押し倒してた

「不安にさせちまって悪かった。だけどおれは、ちゃんとした形でお前との仲を進めたかったんだ。おれは妖刀で、お前は家宝だからな」

「鬼徹…今更何を言いますの。家宝の身分など、主様の手を取った時に捨てましたわ」

そう言って真っ直ぐ見つめる瞳に、胸が強く高鳴った

「そりゃ今更だけど、ちゃんと筋を通したかったんだ。それに、何も身体つなげるだけが男と女じゃねェ。おれはお前といっしょにいられるだけでも幸せなんだよ。だけど、こんな事されちまったら…もう男として退くわけにゃァいかねェよ」

「鬼徹…」

「雪走、今からお前の全部を貰う。それが、今のおれに通せる筋だ」

そう言って噛み付くように口を吸うと、彼女も吸い返してくれた

そのまま啄むように唇を合わせ、おれは着物の帯に手をかけた



*****



朝の光が窓の隙間から差し、瞼をこじ開ける

眩しさを感じながら隣を見れば、愛しい恋人の寝顔がある

静かに寝息をたてながら微かに肩を上下させる姿に、自然と胸の内が暖かくなる

「いっしょに、なれたんだな…」

無意識に零れた言葉と共に、おれは彼女の頬を撫でた 


「んん…」

新雪のように真っ白な髪に触れたその時、雪走が小さく身動ぎして目を開ける

「おはよう、ございます」

「おう、おはよう」

サラサラと指通りのいい髪を梳いてやりながら軽く笑うと、アイツもこちらに笑い返す

「もうちょい寝てろ。優しくはしたつもりだけど、それでも身体重いだろうし」

そう言って起き上がろうとした直後、「鬼徹!」と雪走の叫ぶ声がした

「?」

「わ、私…私…」

「どうした?深呼吸しろ。ちゃんと落ち着いてから言え」

言われるままに深呼吸した雪走は、「私は…」と声を絞った

「私…貴方の背に…傷を…」

今にも泣きそうな彼女の言葉におれは一瞬呆気にとられたが、すぐに安心で肩の力が抜けた


「なんだ、そんな事かよ。こんなんどうって事ねェよ」

そう言って笑うと雪走はますます泣きそうになる

「何を笑っていますの!こんなの主様だって…!」

「そりゃ確かに背中の傷は恥だってゾロは言ってたし、おれだってそう思ってる。でもな、それはあくまで剣士としての話だ。お前のつけた傷なら、いくらだって構わねェ」

おれの言葉に納得したのか、雪走は「そう。恥では、ありませんのね」と言って一筋涙を流して微笑んだ

そう、好いた女のつけた傷は恥なんかじゃない

コイツは立派な、男の誉だ


「雪走」

「はい」

「近い内に、ちゃんとおれの方からプロポーズする。そしたら、結婚しよう」

布団の上で水晶のような瞳を真っ直ぐ見つめる

「ええ、お待ちしていますわ」

雪走の目が細められ、淡雪のような笑みを浮かべる


差し込む朝の光の中で、指と指が絡み合う

おれ達は小さく笑い合い、どちらからともなく唇を重ねた

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