嫉妬と和解

嫉妬と和解


「おい!こりゃァどういうことだ、ウタ!」

バン!と机に叩きつけられた新聞には、

「号外!歌姫に弟!まさかの四皇麦わらのルフィ!」という見出しが大きく掲げられていた。

「あ!それ・・・ルフィいつも新聞読まないのに・・・」

「サボが教えてくれて、ナミから借りてきた」

「おれはウタの弟だったのか?」

「ちがう」

冗談でも、ちがいまーす!とは言える雰囲気ではなかった。

「なァ、おれはプロポーズしたよな」

「うん」

「受けてくれたよな」

「うん」

「その先も、シたよな」

「・・・うん」

「あれはウソだったのか?」


違うよ!と否定したかったが、ルフィの目を見て言葉が口から出てこなかった。

どうして、そんな目でみるの?

本気じゃないっていつもなら分かってくれるじゃん

いつもの勝負でなら食ってかかるのはルフィの方で、負け惜しみ~って返すのに、今はなにもできる気はしなかった。

わたしは逃げ出した。

ーーー

直後


残されたルフィ

「前に、わざと冷たくするのも相手の気を引くテクニックだって教わったからやってみたけど、あってんのかァこれ」

ーーー

数分後


「で、なんでよりによってあんなこと言っちゃったのよ」

ナミちゃんがあきれながらきいてきた。

「結婚って言ったら絶対誇張気味に書かれて迷惑がかかると・・・」

「考えて否定したわけね。じゃあ、弟の方は?」

「弟みたいな存在って言おうとしたら、抜けちゃった」

「そこは、幼馴染でよかったでしょ!」

でも、とナミちゃんが続ける。

「ルフィはそんなことでいつまでも怒るヤツじゃないし、謝ったら許してくれるんじゃないの?」

わたしは、ルフィが見たことないもない目つきで見てきたことを話した。

「・・・なんにせよ、早めに謝っちゃうことに越したことはないし、あたしもついてってあげようか?」

そう提案してくれたが、これはあくまで、わたしの問題だ。

それを伝えて出ていこうとしたところ、

「「おい、大変だ!これを見ろ!」」

ウソップくんとチョッパーくんが何かを抱えて女子部屋に入ってきた。

「ウソップ!あんたどこに入って・・」

「それどころじゃあねぇよ!」

これを見てくれ!と抱えていたものを広げた。

「ウタへの手紙だ!大量に運ばれてきた」

それは確かに手紙、しかし求婚のラブレターであった。

「うわ、ご丁寧に写真や住所なんか書いてあるわ」

「なんでこんなに」

「こないだの新聞が原因じゃないかな」

「一部のファンが記事を真に受けたみてぇだな」

「ルフィはこれ見たの?」

「見せられるわけねぇよ!」

「時間はないみたいね、ウタ、早く謝ってきなさい!」

考えも言葉もまとまらないまま、わたしはルフィのところに急いだ。

ーーー

直後


「ルフィ!ごめんなさい!」

「なんでウタが謝んだよ、おれの方こそごめんな、ウタの気持ちに気づかなくて」

「え?」

「手紙?がたくさんきてんだろ?見たわけじゃないからよくわかんねェけど」

なんで、ルフィが手紙のことを知っているのか混乱して聞けなかった。

「いろんな奴からきてるみてェだし、ひとりぐらいウタが気に入りそうなヤツもいるだろ」

なにを言っているの?

「おれはウタが好きだったけど、幸せにできなかっ「やめて!!」」

やっとのことで、声を出すことができた。

「余計なことを言ってルフィのこと傷つけたのは謝るよ!ごめんなさい!

でも、話は聞いてくれてもいいじゃん!

手紙は誤解なの!そんなつもりで新聞に答えたわけじゃない!

わたしが好きなのはルフィだけ!弟なんかじゃない、夫!旦那さんだよ!」

わたしは一気にまくしたてた。

「・・・おれがわるかった、ごめん」

さっきとは打って変わって落ち込んだ表情をしたルフィが謝ってきた。

「ウタが本気じゃないことはなんとなく気づいてた、けど、なんでかうまく気持ちをよめなかった」

泣きそうにもみえる彼の表情に、私も自分の落ち込んだ気持ちを自覚した。

わたしはルフィに近づき、いつものようにハグをした。

「不安にさせてごめんね。言葉では不安かもしれないけど、気持ちが伝わるように、なんでもするから。」

そう言った瞬間、ルフィからの締め付けが強くなるのを感じた。

「なんでもって言ったな?」

返事をするまもなく船の奥にある部屋に連れ込まれた。

「ウタの気持ちをおれにおしえてくれよ。」

自分の言葉を若干後悔しつつ、日が沈んでは昇りまた沈むまで、さんざんに教え込まれた。


ーーー

後日


「で、本当にそういつもりはなかったのね?」

「違いまーーーす(髪ギュルギュル)」

ふざけて言ったらはたかれた。ちょっと痛い。

「人騒がせなのよ、本当に!

 ルフィは2重の意味でやりすぎだってサンジくんにも蹴り飛ばされてたし」

あの後、電伝虫を通してファンの皆に諸々の報告と謝罪をした。

いろんな人たちから連絡が来たり大変であったが、気持ちを確認するいい機会だったと今は思う。

多分、もう拗れることはないと前向きに考えつつ、お仕置きとして牢屋に入れられたルフィを開放しに向かった。


FIN



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