媚薬まみれのフェリジット
「ここまで来れば平気か?」
シュライグは部屋に鍵を掛けた。
全速力で走ったせいか少し煙を吸ってしまったようだ。壁により掛かり息を整える。口に当てた布を取りたかったが、そんなことをしたら煙を吸ってしまう。
「危なかったね、シュライグ。リズ姉はモロにガスを吸っちゃったから」
隣の元凶はガスマスクと耳栓で煙を遮断していた。シュコーシュコーと呼吸する音がする。キットはピンク色の尻尾をクルクル回した。
「多くのメンバーがアジトから出払っていてよかったね。ルガルと連絡取れたけど換気が終わるまで帰って来ないって!」
「そうか。後でお説教だ」
「そんなー!」
項垂れるキットを無視してシュライグは現状を打開する策を考えた。煙に接触しないように服の襟を立てて口と鼻と耳を布で塞いでいるが、多少影響がある。体が思うように動かなくなり始め、熱に浮かされたように思考がうまくまとまらない。
こんな状況でフェリジットを…
木が食いちぎられる音がした。シュライグにはそんな音に聞こえた。
斧が扉から顔を出す。そして再び斧が顔を出す。木製の扉を食いちぎるように斧が見えていた。
「リズ姉が斧で扉を!」
キットのくぐもった叫びは扉を破壊する音でかき消えた。
「シュライグゥ〜?ここかしら〜?シュライグの匂い分かっちゃうのよね〜」
間延びしたフェリジットの声は正気のものではない。
「気持ちよくなりましょう?なんならキットも一緒に3人でもいいわ」
扉はすでに破壊されてフェリジットの発情しきった顔がシュライグを見た。
「いたわね。シュライグ♥」
フェリジットの手が隙間から現れて鍵を開けた。