🍞×💎姐

 🍞×💎姐


【NL/事後あり】

所属してたグループが空中分解を起こし、行き場を失ったアタシ。

そんな私の身請け先は、かつての私の戦績を買ってか、これ以上とない高待遇でアタシを受け入れてくれた。

ただ一つ、ある条件を飲むことを前提にして……。



* * * * *



「ンーだよぉ! 捕まえるなり、ンな所に連れて来るなんて気性難の極みか!?」

「仕方ないでしょう! アンタが引退後もプラプラ出歩いてんのが悪いんでしょう!」


キャンキャン言い争いながら入ってきたのは……嬢ちゃんの方はダイワのところの娘だな。

嬢ちゃんの方は、ピンク色のちょっとしたよそ行きの格好――人間サマが俗な意味で使う『勝負服』ってところか。


一方で娘のほうに引っ張られてきたのは……アイツはウシュバの同期の「大逃げ野郎」だな。

あの嬢ちゃん、あの大逃げ野郎をとっ捕まえてここに連れ込んできたのか? マジかよ……。

うわ、大逃げ野郎の腕を引っ張りながらカウンターまで来やがった。


「ちょっとフロントさん! 今からお部屋を取りたいんだけど、空いてるお部屋は?」


俺は無言でパネルを指差す。

嬢ちゃんはジェスチャーで理解したのか、パネルに向かうが……。


「……ねえ。これどうやって使うの?」

「は? お前使ったこと無いのか……?」

「当たり前でしょう! アタシを誰だと思ってんの? 知ってるなら教えなさい!」

「イイよ、俺がやっから……」

「ダメよ! 今日はアタシの方が誘ったんだからアタシがやるの! ほら、教えなさい!」


大逃げ野郎が、渋々嬢ちゃんに部屋の取り方を教えている。

そういやダイワのところ、嬢ちゃんの身請け先がイイトコロになったって風の噂で聞いたな。なら、使い方も知らねえで当然か。


「えっとこの……フリータイム? ってのでいいのかしら?」

「お前そんなに付き合うつもりか? 俺のことタイプじゃねぇんだろ……? 無理すんなよ」

「なに言ってんの! アンタはアタシのイイナズケ! アタシはアンタと付き合うのが、身請けの条件なの! 好き嫌いじゃないの!」

「……ハァ、好きでもねぇ男に、身体を許すとかアホらし……」

「なによ! 元々アンタが遊びに行ったっきりなのが悪いんでしょう!」


おいおいおい……フロントで痴話喧嘩なんぞ止めてくれよ。後ろのカップルが竦んでるじゃねぇか。

ひとつ聞こえるように咳払いして、二人にはさっさと部屋に行ってもらうことにする。


「……はぁ、オヤジさんワリぃ。コイツ大人しくさせてきますんで……」

「ちょっと、話は終わってないってば! ねぇ!」


大逃げ野郎に、部屋の鍵を投げ渡すと、慣れた手つきでキャッチする。

結局嬢ちゃんの方は、エレベーターが閉まるまでずっとキャンキャン吠えてやがった。

現役の頃から元気な嬢ちゃんとは聞いてたが、引退しても気の強さは変わらずってか。やれやれ。


ほら、次の方どうぞー。



* * * * *



数時間後、ダイワの嬢ちゃんと大逃げ野郎がエレベーターで降りてきた。


「…………っ、ねぇ……(///)」

「オヤジさん、ワリぃ……タクシー呼んでくれねぇか?」


嬢ちゃんの方は……うつむいた顔を真赤にして、大逃げ野郎に両手で掴まっている。

そして脚を内股にして震えさせて……ああ、ありゃあ食われたか。


嬢ちゃんは知らねえだろうが、この大逃げ野郎、ここいら一帯では「ベッドヤクザ」で通ってんだ。

ここのホテルだって常連だよ。

コイツを許嫁に迎えるとは、運がいいのか悪いのか……。


「……今日は、ココじゃないと、マズかった、かも……」

「だから言ったろ。好きでもねえ男に身体なんて許すなって」

「それと、コレとは別だもんっ……!」

「……強がっちゃってさ。ほら、タクシー着いたぞ。運ちゃん、この子、この名刺の住所まで~」


そういってダイワの嬢ちゃんをタクシーに押し込んだ大逃げ野郎。

その顔は複雑そうだった。

俺は思わず声を掛ける。「お前、ああいうの好きじゃねえだろ」って。


「……いいや、そんなこと無ぇっスよ。あの子なんだかんだ言って、俺のこと嫌いじゃないみたいスから」


はぁ……SSが入ってないやつは違うね。

次から次にお見合いの話が来るわけだ。


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