姉者が精神崩壊してくやつ

姉者が精神崩壊してくやつ







身体能力の制限をかける手足の枷。

魔力を吸い上げ指定範囲から出たら意識を奪う首の枷。

それなりに上等な品だが、この程度の枷ならば逃れようと思えばすぐに一瞬で外せる。

ドゥウムの身を縛るのは弟たちの待遇改善という契約だけだ。

だから、問題はなかった。




身柄を預かる家の当主やその息子に抱かれている最中に、役に立つよう言われることが多かった。

「優秀な子を孕め」「胎として」「魔法界に貢献しろ」「誠心誠意償え」「穢れた血の分際で」「生かされているのだから」


価値を見せろ、役に立て、とそんなことばかり耳元で囁かれた。


ドゥウムは実の父親に心臓の器として作られた。

従順な戦力や弟を育む母胎として利用されることもあった。


そう。

役に立たなければ処分されるなんて、いつものことだから。

かつてと変わらない扱いだったから。

全く、問題はなかった。




ドゥウムには分からないが、毎日容姿を使用人たちに丁寧に整えられているらしい。

それもあってかこの身体は、男の情欲を刺激するもののようだった。


シミ一つない肌を讃えられた。

滑らかな艶のある髪だと、口に含まれた。

穴の具合がいいと、名器だと、荒げた息で言われた。

胸。尻。背中。脚。うなじ。腰つき。指先。

身体中全て、余すところなく貪られた。

しゃぶり尽くされ、美しい、と褒めそやされた。


何の問題もなかった。

ひたすら抱かれて産んでの繰り返し。

この日々は自分が使いものにならなくなるまでずっと続くのだから。

そこにドゥウムの感情も意思も関係はないのだから。

何ひとつとして、問題はなかった。






自我がじわじわと壊死していく感覚があった。

感覚。記憶。新しいところから順に、少しずつ喪われていった。

自分の意思だけでは身体が動かせなくなった。

たまに自分が何者なのか、思い出せなくなるようになった。

自分が今認識しているのが現実なのか過去の夢なのか、だんだん混ざって区別がつかなくなった。


監獄でそれなりの扱いを得ている上の弟たち。普通に生きている下の弟たちと育ての親。名家で慈しまれて育っている子どもたち。

ドゥウムの大事な大好きな身内。

大切である、はずだ。

大切な身内の魔力と気配だけはまだ覚えている、はずだ。


だからまだ、大丈夫。

きっと大丈夫。

何も、問題はなかった。









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なんとなく懐かしい魔力を感じた気がして、夢心地でいくつかの名前を呼んだ。


そうしたら、いつも通り男の腕の中に囲われた。

なぜか肌を嬲られない。

キツくキツく縋りつかれる。


心なしかいつもより安心できるような気がした。




幼い頃の記憶。

大切な大切な何人かに抱き締められて、抱き締めたことを思い出した。

混濁した思考の中、うっとりと微笑んだ。








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