姉弟の疑問

姉弟の疑問



あ、おじいちゃんいらっしゃい!!

相変わらず忙しいの?そっか、仲間の皆さんと頑張ってるんだね。

それで自分のやる事が無くなっちゃったって?あはは、いいことじゃん!!それだけ平和ってことでしょ。海賊としてはうれしくないかもだけど。パパもママも元海兵だし、捕まっちゃうかもよ?ふふっ冗談だって!!

そうそうこないだは海王類のお肉ありがとね。おいしく頂いたよ。まあ大体はパパと弟の胃袋に消えてったんだけど……。

今日は何しに来たの?……近くに来たから顔を見に来ただけ?すぐ出てくって?そっか、まあ今ウチは私一人だし丁度よかったかも。

でもちょっと残念だなあ。聞きたいことあったのに。

……え、聞いてくれるの?「孫の頼みなら何だって聞く」?……うん、ありがと。


パパとママ、すごく仲良しでしょ?いやそれはいい事だよ、仲良くなかったら私も弟も生まれてないもの。

ちゃんと親をやっているのかって?うん、2人ともいいパパとママだと思うよ。

割と人目も憚らずイチャついてる気がするけど、それは慣れたしね。

ただ、2人っきりになるとなんかこう……お互いに対して重いなあって思うことがあって。

なんだか下手なこと言えない空気になっちゃうから、そうなった時はそのままにしてあげてるんだ。

2人でいる時のパパとママね、すっごく幸せそうで、すっごく嬉しそうで……そして、すっごく弱弱しく見えるの。

まるで絶対に離れないでってお互いに言ってるみたいで、いつもの2人とは似ても似つかない。


……ねえおじいちゃん、教えてくれる?

パパとママは何を見てきたの?何をしてきたの?

パパとママに……何があったの?

……そっか、「知る必要はない」んだ。

うん、分かってたよ。パパもママもあまり話したがらなかったし、そういう事なんだって。

でも悲しいなー、さっきなんでも頼みを聞くって言ったのは誰だったかなー?……分かってるって、言ってみただけ。

……おじいちゃん、私待つよ。パパとママとおじいちゃんが喋ってくれるのを。

言いたくないことの一つや二つ、人間ならあるしね。だからパパとママとおじいちゃんの中で整理がつく時を待つからさ。

ありがとねおじいちゃん、聞いてくれてすっきりした。

また来てくれると嬉しいな。今度は皆いるときにね。

 


 








 


 

来たぞひいじいちゃん!!今日こそはおれの頼み聞いてもらうぞ!!

なんでおれのことは鍛えてくれねェんだよ!!ひいじいちゃんすっげェ海兵なんだろ!?

父ちゃんと母ちゃん言ってたぞ!!「じいちゃんにはしこたまシゴかれた」って!!

おれだって父ちゃんや母ちゃんやひいじいちゃんみたいに強くなりてェよ!!そうすりゃ姉ちゃんも守ってやれるしよ!!

……なんで笑うんだよ!!確かに姉ちゃんはおれより5歳年上だしおれよりずっとしっかりしてるけど……だからって頼りっぱなしじゃ「おとこがすたる」んだよ!!だから頼むよ!!

「そんな強さはもう必要ない」?なんだよそれ、よくわかんねー。

そりゃだいかいぞくじだい?ってのが終わって今の海は平和だって聞くけどよ。

そんでそうなったのは父ちゃんと母ちゃんが頑張ったからなんだろ?


……分かってるよ、父ちゃんも母ちゃんも、あとじいちゃんもおれに戦ってほしくない事くらい。

でもよ、父ちゃんも母ちゃんも、強いのに死にかけたんだろ?そうなったらおれも姉ちゃんもこの世にいねェだろ?

……おれバカだけど、2人がひでェ目にあったって位はわかるぞ。

なんでって?そんなん2人っきりの父ちゃんと母ちゃんを見たからに決まってんだろ。

だって父ちゃんと母ちゃん、おれと姉ちゃんがいない時……ううん違ェな、誰もいない時すっげェ雰囲気変わるんだぞ。

いつもみたいに明るくねェし、いつもみたいにうるさくもねェし、いつもみたいに笑いもしねェ。

ただ肩くっつけ合ってるだけで……そんでそんな父ちゃんと母ちゃんが怖いって感じるんだ。今にも消えちまいそうでさ。


……なあひいじいちゃん、聞いていいか?

父ちゃんと母ちゃん、何をやったんだ?何をされたんだ?

父ちゃんと母ちゃんに……何があったんだ?

そっか、「今は知らなくていい」のか。まァそんなこったろうと思ったぞ。

つまりいつか教えてくれるってことだもんな!!その時までおれ待つぞ!!げんち取ったからな!!

父ちゃんと母ちゃんがつらいんなら、おれが支えてやんねェと。姉ちゃんだって同じ気持ちだろうしさ。

そんじゃいろんな話聞かせてくれよ!!海軍とかのさ!!それが特訓の代わりだ!!













「姉ちゃん、おれひいじいちゃんに聞いてみたんだ。父ちゃんと母ちゃんの事」


「あら、アンタも?私もおじいちゃんに聞いてみたのよ、パパとママについて」


「姉ちゃんもか。そんで、教えてくれたのか?おれはダメだった」


「同じね、必要ないって言われた。言い様から何かあったのは分かるんだけどね」


「そんなん今更じゃねェか。父ちゃんと母ちゃん見てりゃ聞かなくても分かるぞ」


「はいはい、アンタはそうよね。私はアンタと違ってその辺の勘はニブいの。……アンタ、パパとママは好き?」


「当たり前だろ?強くて優しくて明るくて……おれの自慢の父ちゃんと母ちゃんだ!!」


「ふふ、そうね。ママの歌はとても綺麗だし、パパの背中はとても頼もしいし……うん、私も大好きよ」


「……いつか、話して欲しいよな。何があったのか」


「私もよ。でもその話を聞くには、たぶん私たちは何も知らないし、弱いんだと思う。……そして、そうあって欲しいんだと思う。おじいちゃんもひいおじいちゃんも」


「父ちゃんの兄ちゃん達ともう一人のじいちゃんもそんなこと言ってたなァ。「戦わなくていい今を満喫してくれ」って」


「……苦労してきたんだよ、きっと」


「……そうだな」


「だから、私たちが今やるのは、この今を目いっぱい生きる事。強くなるのはそのあとでいいのよ、きっと」


「そうだな!!」


「さ、湿っぽい話はおしまい!!もう寝るわよ、いい時間なんだから!!」


「おう!!じゃあ寝るぜ、おやすみ、姉ちゃん」


「うん、おやすみ」



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