妖麗譚ー妖仙魔妖語
「くっ…このままでは」
致命傷を負った妲姫は山中で危機に瀕していた
強大な妖力を持つが昼間ではその力を行使できない妲姫をはじめとした魔妖たちは日の光を消し去らんと暗躍していたが後に不知火流と呼ばれる武術を持つ武士に阻まれ、深手を負い山中に逃れた
現在は朝方であり仲間の魔妖に助けを求めることはできず、また傷も深く動けない状況だった
「……くっ!この私がここまで追い詰められるとは……!」
「んっ?お主、人ではないな?」
そこに現れたのは閻魔巴裂であった
閻魔巴裂とは山中で不慮の死を迎えた人間が生まれ変わった存在であり、人であった面影はなくまるで獣のような姿をしている
「傷を負っているな。待っておれ、すぐに手当てをしてやるぞ」
そういって閻魔巴裂は薬を取り出し、それを塗り込んだあと包帯を巻き付けた
「なぜ、こんなことを?」
「話は後にしよう、些末ではあるが小屋がある」
そういって閻魔巴裂は妲姫を抱えると小屋へと連れていき、布団を敷いてその上に寝かせた
「手当はしたがこれで万全とは言えない。しばらくここで安静にするといい」
そういう閻魔巴裂に妲姫は困惑を隠せない
「私が誰なのかわかっているのでしょう。なぜこのようなことを?」
妲姫をはじめとする魔妖はこれまで多くの戦乱を巻き起こし、人間に害を与えてきた存在である
かつて人間であった閻魔巴裂にとって自身は憎むべき敵であるはずだと
「俺は狩猟の最中に深手を負い誰も助けが来ぬまま死を迎えた。だがこの姿になってこの山に隠れ住む人ならざるものの存在を知り、彼らはそんな俺を助けてくれたのだ」
「だから私を助けたと?せいぜい寝首をかかれぬよう気をつけることですね」
「構わぬ、閻魔巴裂は八日しか生きられぬ。後四日ほどの命が縮んだところでなにも惜しくはない」
そう笑う閻魔巴裂に妲姫は戸惑っていた
その後も閻魔巴裂は己が消える日が目前に迫っていても構わず妲姫に甲斐甲斐しく治療や世話を続けていった
「その…笑わずに聞いてほしい。俺はどうやら妲姫に恋心を抱いてしまったようだ」
「はあ!?何を言って……」
妲姫は閻魔巴裂の突拍子のないことばに呆気にとられる
「共にいるうちに気づいたのだ、お主は一見冷徹に振る舞っているがその心根は優しく美しい女性なのだと…いや、その…別に助けたから恩を返せという意味ではなくて…」
気恥ずかしさからか閻魔巴裂の語気は次第に弱くなり最後は聞き取れなくなるほどだった
「構いませんよ」
「本当か?」
閻魔巴裂の顔がぱっと明るくなる
「なんだったら嫁として扱っても構いませんよ。もう貴方は残り少ないのですから」
「ありがとう、本当にありがとう」
閻魔巴裂は喜び打ち震えていたが妲姫によって押し倒される
「いや…その、まだ心の準備が」
「夫婦となったならすることは決まっています。そうでしょう『旦那様』」
そういって妲姫は着ているものを脱ぎ捨て一糸に纏わぬ姿になると艶やかな笑みを浮かべた
「うっ…美しい」
「ふふっ、そういって私と交わってきた人間はいずれもむごたらしい最期をとげましたよ。旦那様もそうならないといいですね」
「これほど幸せなことがあるのか?ここからなにが起きようと悔いは残らぬぞ」
妲姫は閻魔巴裂の装束に手をかけ脱がしていく、その手つきだけでもこれまで彼女がどれだけの男を貪り食ってきたかが伺われる
「逞しいですね旦那様」
妲姫は閻魔巴裂の獣の身体に舌を這わせていく
その感触だけで閻魔巴裂は興奮を覚えていた
「俺ばかりでは悪い、次は俺が……」
そういいながら閻魔巴裂は体勢を変えようとするが
「旦那様、これまで多くの男を誑かし破滅へと追いやった私の絶技、味わいたくないですか?」
そう妖しく微笑む妲姫に閻魔巴裂はゴクリと息をのむ
「わかった。それなら妲姫に任せよう」
閻魔巴裂の言葉を聞き満足そうに笑うと
「では始めましょう」
そういって妲姫は閻魔巴裂の肉棒に手を添えると口に含みはじめた
これまでの経験で培ったであろう舌使いは的確に閻魔巴裂を責め立てる
「なんだ…これは」
「旦那様はなにも考えなくていいのですよ。さあ私に身を委ねて」
あまりの快楽に思わず腰を引いてしまう閻魔巴裂だったが妲姫は動きを止めることはなくすぐに引き戻され逃げ場を失う
そして限界を迎えたとき閻魔巴裂は大量の精液を吐き出していく
「んぐっ!……これほどとは」
口元から白濁した液体をこぼしながら妖艶に笑うその姿は淫靡であり美しかった
「こんなにたくさん出して……いけない旦那様です」
そういって指先でこぼれ落ちた分をすくいとる
「まあ、まだこんなに…」
閻魔巴裂の肉棒は人ならざるものになったからか衰えることなく再び硬度を取り戻していた
「さすが旦那様です。では今度はこちらで」
そういうと閻魔巴裂の肉棒を自らの秘部にあてがい挿入する
「ぐっ…締まる、身体が飲み込まれるみたいだ」
「気に入っていただけたようですね」
妲姫の膣内はまるで別の生き物のように絡みついていくそれはまさに名器と呼ぶにふさわしいものであった
腰使いもすさまじく少しでも気を抜けばあっという間に果ててしまいそうになる
しかし閻魔巴裂はなんとか耐え続けた
残り少ない時間を無駄にしたくなかったからだ
「いつまで耐えられるでしょうか?」
だが妲姫はそんな閻魔巴裂を嘲笑うかのように容赦なく責め立て続けてついにその時が訪れる
「もう限界だ……出る!」
その言葉と同時に閻魔巴裂は絶頂を迎え大量に射精していった
「ああ……熱い、旦那様の子種が注がれていきます」
「はぁ……はぁ……大丈夫か、怪我の具合は?」
閻魔は心配そうに声をかけるがその口は妲姫の唇によって塞がれた
「これで終わりだとでも思ったんですか?もっと愉しみましょう。最期のときまで」
その後も何度も交わったが閻魔巴裂の体力が限界をむかえると妲姫の膝のうえで休んでいた
「短い間ではあるがとても幸せだった。俺は良き夫だったのだろうか」
「そう弱気にならないで、今日だけは私にとって貴方は旦那様なのだから」
そういって二人は笑い合う
そこから妲姫は閻魔巴裂がこの世から消えるまでの残り僅かな時間を共に過ごした
かつて人間にである閻魔巴裂との遭逢に妲姫はなにを思ったのか定かではないが
そこから数世代たったのちに敵であった不知火流の継承者と心を通わせ共に脅威に立ち向かったことだけは確かである