妖目の雑念
フルルドリスは雑念を振り払うために剣を振る
15になった頃からこの日課は毎日続けている。この雑念の正体が何なのかを彼女は知らないでいた
「やはりこの言語化出来ないざわつきを突き止める必要があると思う」
フルルドリスは真っ直ぐな瞳でエクレシアに話した
「お姐様はどういう時に落ち着かないのですか?」
「…もう落ち着いていられる時間の方が少ない」
「もはや末期じゃないですか!? 何でもっと早く言ってくれなかったんですか!」
20になる今、騎士でいられる気持ちの時間が殆どなくなってしまっている。今も1時間剣を振って心を落ち着かせてようやく話ができる状態だった
「…それなら荒療治ですがアルバスくんに頼りますか?」
「奴に? 驚いた。医療の心得があるとは知らなかった」
「いえ、そうではなくアルバスくんの能力で…」
エクレシアの話によるとこうだ
アルバスは対象と己を融合素材に変化する能力がある
そして最近知ったことらしいが
対象に『感情』を指定することができるのだという
つまり、フルルドリスを悩ませる気持ちとアルバスを融合すれば
フルルドリスからそれが取り除かれ解決するだろうということだ
「…大丈夫なのか? お前は」
「大丈夫だと思う。ただ融合した結果何になるのかは分からない。感情と融合しても大して強いものにはならないけど念の為誰もいない所でやろう」
誰もいないところ
2人は大聖堂から大きく離れた草原地帯へ足を運んだ
ここなら龍になって暴れても被害を出さずに制圧できる
「すまない…大きな貸しを作ってしまうな」
「いいよ、それでフルルドリスが救われるんだろう」
アルバスは笑顔を見せた
その歳下の屈託のない笑みにフルルドリスは
かつてないほど心がザワつくのを感じた
「じゃあいくぞ」
「…あっ、待ってくれ今は──」
フルルドリスは咄嗟に静止しようとしたが
ザワつきが吸われていく感覚に身を任せることにした
何か失敗する気がした
が、気のせいだろうと
五分ほど吸われ続けた所でアルバスが膝をついた
「大丈夫ですか!?」
駆け寄ろうとするフルルドリスをアルバスは手で制した
「ダメだ! 近寄るな! 変なんだ…消化しきれない」
フルルドリスの目前には大きな肉棒が突き立てられていた
その持ち主は生気を失った目をしたアルバスのものである
ツンとした臭いが鼻腔を突き抜けた
その瞬間フルルドリスは初めて恋をした生娘のように
「んっ…♡」
鈴口を愛おしそうに人生初のキスをした
後でわかったことだがフルルドリスを5年間悩ませていた感情の正体は──
性欲だった
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